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2008年3月

IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その9)

少しお休みしておりましたが、今回からIFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワークの話題に戻りたいと思います。今回は資産について、より深く探っていきたいと思います。

前回も触れましたが、フレームワークでは資産は以下のように定義されています。

「資産とは、過去の事象の結果として当該企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待される資源をいう。」(第49項)

第53項では、「資産が有する将来の経済的便益とは、企業への現金及び現金同等物の流入に直接的に又は間接的に貢献する潜在能力をいう。」と定義しています。これまでの議論でおわかりのように、財務諸表はその利用者が行う経済的意思決定に役立つ情報を提供するものであり、その経済的意思決定とは、企業がキャッシュを生み出す能力、その発生時期及び確実性を評価することとされていました。

よって、資産とは将来企業へキャッシュを流入(あるいは、キャッシュの流出を減少)させる能力を持っているものと定義されることになります。この定義をより掘り下げて考えてみると、以下のことがわかります。

・資産の多くは物的形態をとる(有形である)と考えられるが、物的形態が資産の要件に不可欠なものではない(無形のものも存在し得る。)。(第56項)

・資産の多くは法律上の権利(所有権)を有していると考えられるが、所有権が資産の要件に不可欠なものではない。例えば、リース資産は企業が所有権を有していない資産であるが、リース資産を所有することで企業にキャッシュの発生がもたらされるのであれば、資産として認識する必要がある。(第57項)

・資産の取得は支出の発生と密接な関係を有するが、これらは必ずしも一致するとは限らない。関連する支出がなかったとしても、資産の定義を満たすのであれば、貸借対照表に認識することを妨げない。(第59項)

この資産の定義を読み返してみると、近年公表されている会計基準の多くが理解できるのではないでしょうか? また、無形資産を積極的に認識しようという動きとも密接な関係があるように思われます。私のように商法時代の資産の定義に縛られていては、資産の認識を誤ってしまうかもしれませんね。

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四半期報告制度が始まります(その3)

四半期報告制度の記事も今回で最終回にしたいと思います。最終回は四半期レビューが始まるという点です。

・四半期財務諸表は年度の監査人が行うレビューを受けなければならない。

レビューという制度そのものについては、諸外国では既に導入されている制度でしたが、日本では制度そのものは確立していませんでした。(東京証券取引所のマザーズ上場企業を対象にレビュー制度と似たような制度が導入されてはいましたが)

今回、四半期制度開示制度の導入にあたり、金融商品取引法の規定に基づき(法律上は監査証明として扱われるようですが)、四半期レビュー基準が企業会計審議会から公表され、四半期レビューに関する実務指針が日本公認会計士協会から公表されています。

監査とレビューはどこがどう違うのかという点について関心が高いように思われますが、誤解を恐れずに簡単に言い切ってしまえば、レビューは監査に比べて実施する手続が限定される(簡便になる)が、その分監査よりも財務情報の信頼性に対する保証の水準が低いものであるということになろうかと思います。ただ、四半期レビューの解説文等を読んでいると、実務的にはいくつか留意すべき点もあるように感じられますので、その点に触れてみたいと思います。

①レビューといえども、法律上の扱いは監査証明である。

これは、四半期レビューの根拠条文となる金融商品取引法第193条の2第1項の規定によるものですが、先にも述べた通り、本来監査とレビューは似て非なるものであるということができます。それでもなお、このような条文が残っているのは、「レビューだからといって、虚偽記載のある財務情報に監査人が意見表明をする責任が軽減されるわけではない。」という金融庁の意思の表れであると読みとることもできるのではないでしょうか?

②レビューで行われる質問や分析的手続はきめ細かく実施する必要がある。

①にも記載した通り、レビューといえども法律上の位置づけは監査と全く変わらないことから、実務指針ではレビューの代表的な手続とされる質問や分析的手続を「きめ細かく」実施する必要があると述べています。監査の場合は、実証的手続(監査人が自ら財務数値の妥当性を立証するために実施する手続)が実施されますが、レビューにおいては、実証的手続は原則として実施されません。その分、質問や分析的手続をより慎重に実施し、異常性や矛盾点を発見する必要があるという意味で「きめ細かく」という文言が用いられているようです。この辺りは、実際のレビュー手続にどのように反映されてくるのかはわかりませんが、レビューは監査よりも簡単ですぐ終わるというものでもなさそうです。

③内部統制の整備・評価と絡んで、企業の財務分析能力が問われる。

質問や分析的手続が詳細に行われたとしても、質問への回答や分析的手続が判明した異常点や矛盾点への回答は企業の経理部門の方に行っていただく必要があります。実務上は、納得のいく回答が得られないような場合には、監査人自らが納得のいく結論が得られるまで追加的な手続を実施することになります。すなわち、レビューが監査に比べて負担感が軽減されるものとなるためには、企業の分析能力が充実していなければならないということになります。特に、決算財務報告プロセスの整備の中でも、決算数値を分析する業務が盛り込まれることが多いように感じますが、運用面も問われていくことになりそうです。

以上、3回に分けて四半期開示制度についての私見を述べてきました。間もなく、3月も終わり、いよいよ多くの企業の方々や監査法人の方々は決算・監査業務に突入されるかと思います。くれげれも体調管理には気をつけられ、無事に決算を終えられることをお祈りしております。

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四半期報告制度が始まります(その2)

前回も述べたように、既に取引所の開示ルールによって実施されている四半期開示制度ですが、法律に基づく制度として導入されることにより、いくつかの変更点(改正点)が出てきています。今日は、会計基準について述べてみたいと思います。

・四半期財務諸表に関する会計基準を適用する必要がある。

少し前の話なので、ご存知の方も多いかと思いますが、2007年(平成19年)3月14日に企業会計基準委員会より、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、両者を合わせて四半期会計基準と呼びます)が公表されています。

この四半期会計基準は、適用が平成20年4月1日以降開始する年度、すなわち、四半期開示制度の導入に合わせて設定されたものとなっています。これまでは、四半期会計基準の拠り所が多少あいまいだった部分もありましたが、今後は四半期会計基準に一本化されることとなります。

四半期会計基準では、四半期特有の会計処理の除いて、原則として年度と同様の会計処理を行わなければならないとする一方で、簡便な会計処理が認められています。これは、前回述べたように、四半期報告がその迅速性を重要視していることに起因していると考えられます。

四半期特有の会計処理とは、原価差異の繰延処理、後入先出法における売上原価修正、税金費用の計算(いわゆる税効果会計の簡便法のこと)を指します。一方、適用可能な簡便な会計処理は適用指針にその多くが記載されています。一度、四半期会計基準をお読みになられて、スピードと正確性の両立が図られるように、自社の四半期会計基準を整備されてはいかがでしょうか。

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四半期報告制度が始まります(その1)

早いもので、今年も3月が終わろうとしています。いよいよ、3月決算突入ということで、会計・監査の世界はいわゆる多忙を極める時期になります。一方で、2008年4月1日以降開始する事業年度からは、内部統制監査(いわゆるJ-SOX)と四半期報告制度がスタートします。J-SOXについては触れられる機会も多いかと思いますので、今回は四半期報告制度について少し触れてみたいと思います。

今回の四半期報告制度については、主に上場会社を対象として四半期決算日から45日以内に四半期報告書を提出することが金融商品取引法において義務付けられています。一方で、上場会社については、既に取引所のルールによって、四半期開示が求められており、その意味においては、全くの新しい制度が導入されるわけではないということが言えるかと思います。しかし、今までにはなかった制度の導入もあることから、十分な準備が必要ではないかと考えます。ここでは、その制度の導入と対応策について簡単ではありますが、考えてみたいと思います。

・四半期報告書の提出期限が45日と明確にさだめられていること

これまでの制度では、①中間決算を実施し中間決算日から3ヶ月以内に半期報告書を提出することが義務付けられており、②取引所のルールにおける四半期開示については四半期決算日から45日以内での開示が推奨されているという状況でした。

しかし、今回の制度では、①四半期決算を実施し四半期決算日から45日以内に四半期報告書を提出することが義務付けられており、②取引所のルールにおける四半期開示については四半期決算日から30日以内での開示を企業に要請する方向(3月20日日本経済新聞より)とのことです。

つまり、全体的に決算スピードの早期化がより一層求められることになります。その一方で、ある程度の正確性も要求される訳ですから、企業の経理部門の皆様に求められる決算のレベルというのは相当高いものになってくるということになります。

少し前の日本経済新聞で、四半期対応は経理部門の方々の残業で対応しようと考えている企業様が比較的多いというような調査結果が出ているとの記事を読みました。しかし、四半期開示制度の導入はすでに諸外国において導入されていた制度であり、広い意味での会計の国際化ということができます。また、企業の決算体制は、これだけ決算開示情報に対する注目度が上がっている状況においては、企業が存在するために必要不可欠なインフラとして取り扱うべきでしょう。

そうであるならば、企業はコストを払って(投資をして)でも、この問題に取り組む必要があるのではないかと感じているのですが、これって会計士のエゴでしょうか?

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その8)

今日は、財務諸表の作成及び表示に関するフレームワークの第8回「財務諸表の構成要素」です。財務諸表の構成要素とは、その名の通り「財務諸表を構成するもの」であり、資産・負債・持分・収益・費用についての定義があります。

資産…過去の事象の結果として当該企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待される資源

負債…過去の事象から発生した当該企業の現在の債務であり、これを決済することにより経済的便益を包含する資源が当該企業から流出する結果になると予想されるもの

持分…特定の企業のすべての負債を控除した残余の資産に対する請求権

収益…当該会計期間中の資産の流入もしくは増価又は負債の減少の形をとる経済的便益の増加であり、持分参加者からの拠出に関連するもの以外の持分の増加を生じさせるもの

費用…当該会計期間中の資産の流出もしくは減価又は負債の発生の形をとる経済的便益の減少であり、持分参加者への分配に関連するもの以外の持分の減少を生じさせるもの

これらの定義を読んでお気づきになられた点はないでしょうか? まず、資産・負債の定義がなされ、その他の要素の定義は資産・負債の定義から従属的に定義されているということがわかります。

すなわち、持分は資産から負債を控除したものであり、収益は資産の増加または負債の減少を発生させるとともに持分の増加を伴うもの、費用は資産の減少または負債の増加を発生させるとともに持分の減少を伴うものという具合になっています。

このような考え方を資産負債アプローチといいます。資産負債アプローチは財務諸表のうち貸借対照表を重視した考え方です。これに対し、収益費用アプローチと呼ばれる損益計算書を重視した考え方があります。私が会計学を勉強していた頃(約15年位昔のことですが)は、収益費用アプローチが主流であったと記憶していますが、今では資産負債アプローチが主流になっているようです。

次回は、資産及び負債の定義と資産負債アプローチが主流となっている背景を探っていきたいと思います。

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その7)

いつまでフレームワークの話が続くのかとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、このフレームワークの考え方は会計の様々な分野に影響を与えています。従って、一度じっくり読み込んでみることが重要だと考えています。もうしばらくお付き合いください。

今日は、「目的適合性と信頼性を有する情報に対する制約」です。財務諸表の質的特性(財務諸表の利用者にとって有用であるための性質)として、理解可能性、目的適合性、信頼性、比較可能性の4つの要素があるとされていましたが、このうち、目的適合性と信頼性については一定の制約があるとフレームワークでは述べられています。その制約について、まとめてみたいと思います。

適時性

タイムリーでない情報は目的適合性を失う可能性があります。しかし、あまりにタイムリーな情報開示をしようとし過ぎると、その情報が信頼性を失うこともあり得るとしています。従って、経営者は目的適合性と信頼性の均衡を図る、すなわち、利用者の経済的意思決定のための要求をいかに満足させるかを考えなければならないとしています。不確実性の高い事象ほど、開示のタイミングが難しいというのは経験的に理解していただける方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ベネフィットとコストとの均衡

利用者が情報から得るベネフィットは、作成者が情報を作成するのに要するコストを上回るものでなければならないというのは、イメージとして理解される方も多いのではないかと思います。しかし、実際にこのベネフィットとコストを比較することは困難であるため、会計基準が作成を要求する情報を作成するコストをベネフィットが上回っているかどうかは判然としないのではないでしょうか。作成者の立場では、コストの方が上回っていると感じられる会計基準もあるかもしれませんね…。

質的特性間の均衡

コスト・ベネフィットの話もそうですが、質的特性の間にトレード・オフの関係がある場合は、それを考慮する必要があるとされています。興味深いのは、質的特性の相対的重要性は職業専門家の判断事項であると書かれている点です。最近の職業専門家に求められる判断は、会計処理の会計基準への準拠性の部分(会計処理が会計基準の文言とてらし合わせて妥当かどうかという点)が非常に厳しく問われているように感じられます。しかし、本来的には、ここにも書かれているように情報の相対的な重要性を勘案しつつ、判断を下せるのが、職業専門家(公認会計士)に求められる能力であり、そうあって欲しいと思っているのは私だけでしょうか?

いよいよ、次回からは「財務諸表の構成要素」をテーマとして取り上げてみたいと思います。資産とは、負債とは、持分とは、収益とは、費用とは、一体何なのでしょうか?

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その6)

今日は、財務諸表の質的特性(財務諸表が利用者にとって有用なものとなるための属性)の最終回、「比較可能性」です。これは、IFRSへのコンバージェンスが語られる時、必ずと言っていいほど登場するキーワードですので、なんとなく意味合いは理解されている方も多いかと思いますが、あらためてフレームワークではどのように定義されているかを読んでみたいと思います。

比較可能性

フレームワークでは、2つの観点から比較可能性の重要性を説明しています。

①1つの企業の趨勢分析を可能にすること

②他の企業との比較分析を可能にすること

コンバージェンスが語られる場合、「比較可能性」は②の意味で使われることがほとんどですが、財務諸表の情報が有用であるためには①も確保されなければならないということです。当たり前といえば当たり前の話ですが、ちょっと新鮮です。

一方で、フレームワークはこのようなことも述べています。

比較可能性は、単なる統一性と混同すべきではない。つまり、採用しようとする会計方針が目的適合性や信頼性の観点から問題がある場合に、より適切な代替的手法の適用を妨げるものではないとしています。(第41項より)

ただ、具体的にどのような場合が想定されるのかは、筆者本人にもよくわかりません。また、恣意的な代替的手法の適用を防止するために、より幅広い分野で会計基準の統一化は進んでいると考えるべきではないかとも思われます。

ここまで、財務諸表の質的特性について触れてきました。言葉としては目新しいものはなかったかもしれませんが、目的適合性の視点が極めて重要ではないでしょうか?

財務諸表の利用者(=投資家)の経済的意思決定(=キャッシュ・フロー生成能力の評価)に役立つ情報を財務諸表は提供できなければならないとしている点は、この後触れることになる財務諸表の構成要素の定義にも大きな影響を与えていると考えられます。

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その5)

今日は、財務諸表の質的特性(財務諸表が利用者にとって有用なものとなるための属性)の3回目、「信頼性」です。これは読んで字の如く、財務諸表が利用者にとって信頼できるものであることですが、フレームワークでは非常に多くのコメントが記されています。

信頼性

フレームワークは、財務諸表が信頼性の特性を有するために必要な要件をいくつか示しています。

①事実を忠実に表現していること

事実を忠実に表現するためには、取引その他の事象を「単に法的形式に従うのではなく、その実質と経済的実態に即して会計処理され表示されること」(第35項)が必要であるとされています。

一方で、「ほとんどの財務情報は、それが意図したような忠実な表現にまで至らないという何らかのリスクを有している」(第34項)という記載も見受けられます。これは、取引その他の事象を識別することが困難さや測定及び表示上の技法を考案し適用することの困難さに起因するとされています。

②情報が中立であること(不偏性を有すること)

情報が中立であるために、フレームワークは1つの示唆を与えています。財務諸表を作成する際に、不確実性を伴うことが少なくありません。このような不確実性を伴う事象を財務情報として開示する場合、慎重性(ある程度の用心深さ)を行使することが必要になると書いています。不確実性を伴う事象であっても、会計数値が過大あるいは過小なものとなってはならないというわけです。

③情報が完全なものであること

情報が信頼性を有するために、情報の脱漏があってはならないとされています。すなわち、必要な情報が「完全に」含まれていなければならないということです。

私も、監査の仕事をしてきましたが、監査の仕事はまさに「会計情報の信頼性」を保証することだったわけで、会社の財務諸表がこの3つの要件を備えているかをチェックする仕事だったと思います。

フレームワークを読んで感じたのは、ついつい物事の形式的な側面を捉えて会計処理の判断をしてしまいがちだったなあということです。しかし、物事の実質を捉えるということは、ある意味主観的な判断に頼らざるを得ない部分があり、そういうことを考えると、事実を忠実に表現するということは非常に難しい問題があると感じています。

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その4)

今日は財務諸表の質的特性(財務諸表が利用者にとって有用なものとなるための属性)の2回目、「目的適合性」です。

目的適合性

目的適合性とは、財務諸表が利用者の経済的意思決定に影響を及ぼすことをいいます。ここで、財務諸表の利用者が行う経済的意思決定とは「企業が現金及び現金同等物を生み出す能力を評価し、それらの発生時期及び確実性を評価すること」(第15項)でしたので、財務諸表はこの評価に影響を及ぼす情報を提供するものでなければなりません。

情報の目的適合性は、その性質と重要性によって影響を受けるとされています。情報の性質とは、情報の内容そのものであり、当然に影響を受けると考えられます。

一方、重要性については、「情報は、その脱漏又は虚偽表示が、財務諸表に基づいて行われる利用者の意思決定に影響を及ぼす場合には重要性を有する」(第30項)とされています。つまり、財務諸表の利用者に影響を与えるほどの脱漏や虚偽表示が含まれていない情報でなければ、財務諸表は目的適合性を有しないと言っているわけで、ある意味当たり前の話ですね。(フレームワークでは、重要性は情報が有用であるための入口又は境界線を示すものと述べています。)

フレームワークの記載自体にそれほど重要な意味があるとは思えませんが、財務諸表が利用者の経済的意思決定、すなわち、キャッシュ・フロー生成能力の評価に役立つ情報を提供するものでなければならないという思想に基づいて、財務諸表の構成要素の定義や具体的な会計基準ができていることには留意する必要があると考えられます。

次回は、3つ目の特性である「信頼性」について書いてみたいと思います。

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その3)

少しお休みしておりましたが、IFRSの財務諸表の作成及び表示に関するフレームワークについて書いてみたいと思います。

今日のテーマは、財務諸表の質的特性です。質的特性とは、財務諸表が提供する情報がその利用者にとって有用となるための属性(性質)をいい、理解可能性、目的適合性、信頼性及び比較可能性の4つから成るとされています。

理解可能性

財務諸表が提供する情報は、利用者にとって理解しやすいものでなければならないとされています。この場合、利用者は「事業、経済活動及び会計に関して合理的な知識を有し、また合理的に勤勉な態度をもって情報を研究する意志を有すると仮定」(第25項)されます。ゆえに、複雑な問題であっても、それが難解だからという理由だけで会計情報から除外することはすべきではないとされています。

現行の会計基準を見たとき、事業、経済活動及び会計に関して合理的な知識を有し、また合理的に勤勉な態度をもって情報を研究する意志を有する利用者であれば、その内容を理解することが可能でしょうか? 私も会計に関する職業専門家のはしくれですが、理解できない会計基準はたくさんあります。これって、私の勤勉さが足りないのでしょうか…。

次回は目的適合性について触れてみたいと思います。

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J-SOXの現場から(その3)

内部統制の整備においては、リスクの評価と対応を明確にしておくのが重要ではないかという話を書きました。今日はリスクの評価について、私が感じたことを書いてみたいと思います。

実は、現行の財務諸表監査においても、監査人は担当する会社の財務諸表の虚偽表示リスクを評価し、その対処を検討し、監査の実施計画を立てなければなりません。私も監査法人在職時には、よくこの作業を担当していました。しかし、この作業は1人で考えていてもなかなかいいアイデアは思い浮かばないもので、結局は過去に問題となった事案をリスクとして取り上げる場合が多く、本当にリスク評価になっているのかと悩むことも多い作業でした。

先日、ある会社のリスク評価資料を拝見したところ、非常にたくさんのリスクを取り上げられていて驚いたことがありました。どのようにされたのかを聞いたところ、社内の各部署にリスク評価の担当者を選出してもらい、担当者が集まった会議の中でとにかく思いついたリスクを挙げていったのだそうです。

J-SOXとは直接関係がないかもしれませんが、最近の企業の不祥事案件を見ていると、「リスクとして認識していなかったのでは?」と感じるようなものも含まれているように思います。それだけに、まずは考えられるリスクをすべて出してしまうという作業は非常にいいことではないかと考えます。

もう3月になり、3月決算会社の皆さんにとっては、いよいよ来月からJ-SOX適用という時期を迎え、少々ピントがはずれた話に感じられるかもしれません。しかし、まだまだ準備作業が続いている会社も多いと聞きます。なかなか作業が進まないと感じられている方は、「急がば回れ」で、もう一度ご自身の会社のリスク評価と対応方針を整理されてはいかがでしょうか?

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J-SOXの現場から(その2)

J-SOXのお仕事の現場でよくいただく質問に「この作業はどれだけやればいいのですか?」というのがあるというのが前回のお話でした。今回はこのご質問に対する私の意見を少し書いてみたいと思います。

どれだけやればいいのか?ということは、何か基準があって、その基準をクリアしているかどうかによって、判断が下せるということになるのではないかと思います。J-SOXの基準といえば、実施基準や監査に関する実務指針が公表されていますが、これを読んでみても必ずしもクリアすべき基準というのは明確になっていないのではないかと感じます。

私は、この「どれだけやればいいのか?」を決定するにあたって、リスクの評価と対応を決定しておくことがとても重要なのではないかと考えています。

つまり、会社にどれだけのリスク(J-SOXであれば財務諸表の虚偽表示が発生する可能性のこと)があり、それぞれの発生可能性がどれだけあって、発生した場合の影響がどれくらい大きいものなのかをきちんと整理しておくことだと思います。

リスクの発生可能性は低くても発生した場合の影響がとてつもなく大きいものもありますし、リスクの発生可能性が高くても発生した場合の影響が限定的である場合もあります。この場合、それぞれのリスクへの対応の仕方というのも当然変わってくるでしょう。

つまり、リスク評価の整理ができていると、それぞれのリスクにどのような対応をしていくのかを決定することができます。専門書等では、リスクへの対応の例示として、回避・移転・低減・受容等が挙げられているかと思います。ここで、低減の対応を取るべきものが、言い換えれば、内部統制を整備すべきものと考えてはどうでしょうか。

(文中の意見は筆者個人の意見であり、筆者が所属するあすかコンサルティング㈱の公式見解ではありませんので、ご了承ください。)

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J-SOXの現場から(その1)

ブログのタイトルにもあるように、IFRSへのコンバージェンスと並んで、会計・監査の世界に大きな影響を与えるのではないかと考えているものに、J-SOX(内部統制評価・監査)があります。

最近、J-SOXに関連したアドバイザリー等のお仕事の機会をいただくのですが、その現場を通じて感じたことを書いてみたいと思います。

J-SOXのアドバイザリーで一番よくいただく質問は、「この作業はどのくらいやればいいのですか?」という質問です。この質問、実は非常にお答えするのが難しい質問です。なぜなら、会社がJ-SOXを通じて目指す内部統制の整備・評価のレベルによって、答えが変わるからです。

監査をクリアできればいいのだということであれば、お答は「監査法人さんに確認されるのが一番です。」ということになります。ですが、そういうレベルで我々にご質問いただくケースは少ないと感じます。

やはり、内部統制は会社の仕組みそのものであり、それ故にできるだけ十分な整備と評価が行いたいというご希望があると感じることが多いです。しかし、資源(時間、労力、金銭面など)は無尽蔵にあるわけではないため、コスト・ベネフィットを考慮しなければなりません。そのことが、「この作業はどのくらいやればいいのですか?」という質問につながっているように思います。

次回のブログでは、この「どれくらいやればいいのか?」に対する私見を述べてみたいと考えています。

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IFRS/財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク(その2)

今日は財務諸表の作成及び表示に関するフレームワークの2回目です。

財務諸表の目的

財務諸表の目的は、「広範な利用者が経済的意思決定を行うに当たり、企業の財政状態、業績及び財政状態の変動に関する有用な情報を提供することにある。」とされています(第12項)。一見すると、よく耳にする文言のようですが、以下の2点に注意する必要があると思われます。

経済的意思決定とは?

「財務諸表の利用者が行う経済的意思決定には、企業が現金及び現金同等物を生み出す能力を評価し、それらの発生時期及び確実性を評価することが必要となる。」という記述があります(第15項)。 私が財務諸表論を学習した頃も財務諸表の利用者が行う経済的意思決定という言葉は使われていたように思いますが、現金及び現金同等物を生み出す能力、すなわち、キャッシュ・フロー生成能力を評価するというのは初耳です。国際会計の方向性は、このキャッシュ・フロー生成能力に着眼されている点に留意する必要があると考えます。

財政状態の変動に関する有用な情報

いわゆるキャッシュ・フロー情報のことと考えられます。フレームワークでは、「資金の定義を特定する試みは行っていない」とのことですので、キャッシュ・フロー情報と言い換えることはできませんが、「報告期間中の企業の投資活動、財務活動及び営業活動を評価するのに有用である」とされています(第18項)。 私が学習した財務諸表論では、財政状態及び経営成績に関する有用な情報を提供するというのはあったように思いますが、キャッシュ・フローというのは含まれていなかったように思います。今、財務諸表論を勉強されている皆さんにとっては、当たり前の話なんでしょうか?

これらのことからもわかるように、国際会計はこれまでの財政状態(貸借対照表)及び業績(損益計算書)に加えて、キャッシュ・フロー生成能力(キャッシュ・フロー計算書?)も重視しています。実は、このことが財務諸表の構成要素の定義にも重要な影響を与えているということができます。

個人的な意見ですが、これまでキャッシュ・フロー計算書というと、貸借対照表と損益計算書が確定して、その後に作成される従属的な計算書というイメージがありました。しかし、IFRSでは前者2つの計算書と同等かそれ以上の重要性をもって位置付けられているように思われますね。

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