時価会計と政治~アメリカの金融安定化法案より~
10月2日の日本経済新聞朝刊の記事からです。
その行方が注目されていたアメリカの金融安定化法案ですが、その中に「SECが必要もしくは適当と判断した場合、時価会計を停止する権限を与える」という条項が盛り込まれ、にわかに時価会計を巡る議論が活発になっていると記事は伝えています。
日本でも金融機関の経営不安が表面化した際に、同じような議論が巻き起こったように記憶していますが、一体なぜなのでしょうか? また時価会計を中断することで問題は解決に向かうのでしょうか?
この問題には、いわゆるサブプライムローンを組み込んだ証券化商品の価値下落が続き、金融機関が多額の評価損を計上する事態に追い込まれているという背景があります。金融機関にしてみれば、「実際に損失が出たわけではない。おかしいのは会計基準だ。」(記事より)というわけです。しかし、この指摘は的を得ていないのは明確です。そうであれば、含み益が発生した場合にも、「実際に利益が出たわけではない。おかしいのは会計基準だ。」という議論になるのでしょうか? そんな話は聞いたことがありません。
考えるに、この問題は金融商品の価値下落という実態を会計基準(時価評価というルール)があまりに赤裸々に世に知らしめてしまうので、これを抑えることによって、世の中の不安を抑え込みたいという「政治的な意図」が働いているわけです(言葉は悪いですが、「臭い物にはふたをしてしまおう」的な発想です)。ですから、投資家サイドからは「時価会計の停止は投資家の信頼感を不安定にし、新たな信用危機を招くだけだ」(記事より)という別の主張が巻き起こっています。
会計基準という“ものさし”をあれこれといじるよりも、サブプライムローンの価値下落をどのように食い止めるかという本質的な対策が求められているというのは言うまでもありません。ただ、時価会計はいったい我々に何を伝えようとしているのか? 我々に真実の姿を示してくれているのか? 単に我々の不安を煽っているだけなのか? ということをもう少しよく考えてみる必要があると感じた今回の一件でした。
蛇足ですが、このブログでも触れたように、麻生首相が企業の海外利益を日本に還流できるように税制改正を検討すると衆議院本会議で表明したそうです。実現すれば、影響を受ける企業は多いと考えられます。景気への効果はよくわかりませんが、企業側にとっては、非常に大きなメリットを享受できるのではないでしょうか。
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