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2009年4月

IAS第1号「財務諸表の表示」(その18)

第117項から第124項では、会計方針の開示について述べられています。

第117項では、企業は重要な会計方針の要約の中で、財務諸表を作成する際に用いられた測定の基礎及び使用された他の会計方針で財務諸表の理解に関連のあるものを開示することが求められています。

第118項では、財務諸表を作成する上で企業がその基礎としたものは財務諸表利用者の分析に大きく影響を与えるという理由から、企業が財務諸表に用いられている測定の基礎(例えば、取得原価、時価、正味実現価値、公正価値、回収可能金額など)を財務諸表の利用者に伝えることは重要なことであるとしています。企業が財務諸表において2つ以上の測定の基礎を用いるとき(例えば、特定の分類の資産を再評価するとき)、それぞれの測定基礎が適用された資産や負債の範囲(category)を表示するものが提供されることが、十分な情報を提供することになるとしています。

第119項では、特定の会計方針を開示すべきかどうかを決定する際には、経営者は、報告された企業業績や財政状態の中に取引・その他の事象・状態がどのように反映されているのかということについて財務諸表利用者が理解することを助けるのかどうかということを考慮しなければならないとされています。特に、その会計方針がIFRSの中で許容された選択肢の中から選ばれたものである場合には、特定の会計方針の開示は有益であるとされています。例として、投資者が共同支配企業の自己の持分を認識する際に、比例連結を用いているのか持分法を用いているのかの開示(IAS第31号「ジョイントベンチャーの持分」の開示)が挙げられます。いくつかのIFRSでは、認められた異なる会計方針の間で経営者によって行われた選択を含め、特定の会計方針の開示を特に要求している場合があります。

第120項では、企業は自社の事業活動の性質や財務諸表の利用者が企業の種類に合わせて開示されると期待している方針について考慮しなければならないとしています。例として、繰延税金資産・負債の適用を含む法人税に関する会計方針の開示や企業が重要な外国通貨による海外の事業活動や取引を行っている場合の為替差損益の認識に対する会計方針の開示が挙げられています。

第121項では、ある会計方針が、たとえ当年度や過年度の金額に重要性がないときでさえ、企業の事業活動の性質のために重要となることもあるかもしれないとしています。IFRSでは特に要求されていないものの、企業が選択しIAS第8号(「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」)に従って適用した個々の重要な会計方針を開示することも適切であるとされています。

第122項では、企業は重要な会計方針の要約・その他の注記・判断の中において、経営者が企業の会計方針を適用する過程で行ったことや財務諸表において認識された金額に最も重要な影響を持つものについて開示することが求められると記載されています。

第123項では、企業が会計方針を適用する過程において、経営者はそれが財務諸表の中で認識される金額に重要な影響を与えるような様々な判断を行うとし、例として、以下の事項を決定するための判断を挙げています。

・金融資産が満期保有目的投資であるかどうか。

・実質的に金融資産やリース資産のすべてのリスクと対価(rewards)が第三者に移転するときはいつか。

・実質的に特定の商品売上が金融的な取り決めであり、その結果、収益をもたらさないものであるかどうか。

・企業と特別目的事業体(SPE)の実質的な関係が企業がそのSPEを支配しているということを指し示しているかどうか。

第124項では、第122項に従って行われる開示の中には、他のIFRSで要求されているものもあるとされています。

IAS第27号「連結及び個別財務諸表」
直接的にまたは子会社を通じて間接的にその議決権または潜在的議決権の過半数を所有していても、その被投資会社が子会社ではないということについて、企業の所有権が支配権を構成しない理由の開示が求められています。

IAS第40号「投資不動産」
企業が不動産の分類が困難である場合に、投資不動産・所有者占有不動産・販売用不動産を区分するために定められた判断基準の開示が求められています。

(次回に続く)

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IAS第1号「財務諸表の表示」(その17)

IAS第1号「財務諸表の表示」の記事も、今回で17回目を数えてしまいました。1回目を書いたのが昨年の11月だというのに、まだ最後にたどり着けない有様です。仕事の合間を縫って書いていることや原文(英文)を読みながら記事を起こしていることなど、時間がかかっている要因はいくつかあるのですが、IFRSのアドプションということが現実となると、IFRS対策にどれだけ時間が取れるのか、また、スムーズに対策プロジェクトを進めることができるのかといった問題が起こるのではないかということを実感する次第です。

第112項から第138項までは、注記に関する規定となっており、以下のような構成となっています。

第112項~第116項 構造(Structure)
第117項~第124項 会計方針の開示(Disclosure of accounting policies)
第125項~第133項 見積りの不確実性に関する情報源(Sources of estimation uncertainty)
第134項~第136項 資本(Capital)
第137項~第138項 その他の開示(other disclosures)

まず、構造(Structure)についてですが、第112項において、注記に関する一般原則のようなものが示されています。

・注記は、財務諸表作成の基礎や第117項から第124項の規定に従い用いられた特定の会計方針を表示しなければならない。

・注記は、財務諸表の他の場所では表示されていないIFRSによって要求されている情報を開示しなければならない。

・注記は、財務諸表の他の場所では表示されていないが、財務諸表の理解につながる情報を開示しなければならない。

3つ目は、例え基準が要求していなくても、その情報開示が財務諸表のよりよい理解につながる情報は開示することを要求するものであると解釈しました。現行の日本の規則においても、このような情報は開示することが「望ましい」とされていますが、ルールで強制されていないものを積極的に開示する慣行はあまり日本には存在しないのではないかと感じられます。IFRSでは、このような情報開示を求めることが「原則」とされるわけですから、注記の量は必然的に増えるのではないかと予想されます。(先日私が参加したIFRS関連のセミナーでもIFRSが導入された場合の影響の1つに、注記の量が多くなることが挙げられていました。)

第113項では、企業は実行可能な限り、体系的な方法によって注記を表示することが要求されています。また、基本財務諸表(期末財政状態計算書、包括利益計算書、所有者持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書の各要素と関連する注記の情報と間にクロスリファレンスを付す(相互参照可能な状態にしておく)ことが要求されます。クロスリファレンスについては、有価証券報告書においては要求されている事項ですので、イメージしていただけるかと思います。

第114項では、企業は通常以下の順序で注記を表示するとされています。これは、利用者が財務諸表を理解し、他の企業の財務諸表と比較することを助けるためであるとされています。

・IFRSに従っていることの記述(第16項参照)

・採用された重要な会計方針の要約(第117項参照)

・基本財務諸表に表示されている項目に対する追加的な情報(計算書及び項目が表示されている順に)

・偶発債務(IAS第37号参照)、未認識の契約上の義務、企業の財務リスクマネジメントの目的や方針(IFRS第7号参照)といったような非財務的な項目の開示を含むその他の開示事項

第115項では、注記の中の特定の項目の順序を変えることが必要であったり、好ましい場合があるかもしれないと述べられています。例として、企業は損益の中で認識された公正価値の変動に関する情報(包括利益計算書に関する情報)と金融商品の期日(満期)に関する情報(期末財政状態計算書に関する情報)を統合する場合が挙げられています。しかし、その場合であっても、実行可能な限り、注記に対する体系的な構造は維持しなければならないとされています。

第116項では、財務諸表作成の基礎や特定の会計方針に関する情報を提供する注記を、財務諸表の中の独立した項目として表示する場合があるかもしれないと述べられています。現在よく見かける英文財務諸表は、このスタイルのものが多いのではないかと考えられます。

(次回に続く)

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上場有価証券の評価損に関するQ&A

早いもので4月も20日を過ぎようとしています。会計監査も始まり、決算も中盤に差し掛かっている会社さんも多くなってきているのではないでしょうか?

少し古い話になるのですが、去る4月3日に国税庁から「上場有価証券の評価損に関するQ&A」が公表され、企業が保有する上場有価証券のうち、時価が帳簿価額に比べて著しく(50%以上)下落し会計上減損処理が行われている場合における税務上の損金算入に関する取扱いについて、明確化が図られています。これは、政府が進める経済危機対策の一環として行われたもので、これにより企業の税負担が軽くなることが期待されているものと考えられます。

原文はQ&A形式で記載されているのですが、要点をまとめると以下の通りになろうかと思います。

・上場株式の評価損の損金算入にあたっては、株価の回復可能性についての検証を行う必要があるが、回復可能性がないことについて法人が用いた合理的な判断基準は尊重されるという立場が明確にされた。

⇒上場株式の評価損の損金算入については、株価の回復可能性がないことについての立証が困難であるとの理由から見送られるケースも多かったようですが、今回のQ&Aでは、企業が合理的な回復可能性の判断基準を設けたり、専門性を有する客観的な第三者の見解に従って判断している限りにおいては、損金算入が認められるようです。

・監査法人による監査を受けている法人において、株価の回復可能性の判断基準として一定の形式基準を策定し、その合理性について監査法人からチェックを受け、これを継続的に使用している場合においては、損金算入の判断は合理的なものと認められる。

回復可能性の判断を行うにあたって、一定の形式基準を設けるような場合、それが監査法人のチェックを受けた判断基準は客観性が確保されている(恣意性が排除されている)との見解から、税務上の損金算入の判断としても合理的なものと認められるとの見解が示されています。私が監査を担当していた頃は、監査上減損が必要なものでも、税務上損金算入が認められないということで、会社と何度も議論を交わした記憶がありますが、時代の変化を感じずにはいられません。なお、コンサルタント、会計参与、顧問税理士のように会社と利害関係のある者が関与した形式基準については該当しない旨も明示されていますので、ご注意ください。

・翌事業年度以降に株価の上昇などの状況変化があったとしても、そのような事後的な事情は株価の回復可能性の判断に影響を及ぼすものではなく、当該事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はない。

⇒これも、税務上の損金算入の取扱いをめぐっては、よく議論されていたテーマであったと思います。この点についても、株価の回復可能性の判断は、あくまでも各事業年度末時点において合理的な判断基準に基づいて行われるべきであることが明確にされています。ただし、申告書の提出日までに時価が回復していたような場合にまで、このような取扱いでいいのかどうか、私個人としては疑問が残っています。

・過年度において否認処理していた評価損についても、その後の事業年度において損金算入できる状況になった場合には、否認処理分も含めて損金算入が認められる。ただし、税務上評価損として損金算入するためには、損金経理が要件となる点に留意が必要である。

⇒これについては、Q&Aに記載の事例を見るのがよいと思われます。

取得価額100の株式について、過年度において60を減損処理し否認していた。(会計上の帳簿価額は40となっている。)

<パターン1>
当事業年度末の株価が45となり、損金算入できる状況となった場合には、損金算入対象額は60ではなく、100-45=55となる。よって、5の部分については以前として否認し続けなければならない。

<パターン2>
当事業年度末の株価が35となり、損金算入できる状況となった場合には、会計上は追加の減損処理は行われない(帳簿価額40と時価35との比較になる)ため、損金算入対象額は減損処理された60のみとなる。

具体的にどのような判断基準が税務上も認められるのかが明確になっていないというお話も聞こえてきますが、少なくとも、税務上の損金算入の判断基準として会計上の判断基準がある程度尊重されるという方針が示されたとは理解できると思います。一方で、損金算入を行えば、繰延税金資産の計上額にも影響を与え、会計上の業績にも影響を与えることとなるため、3月決算会社の場合は、どのような対応を図っていくのか急いで検討する必要があるのではないかと考えられます。

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ゴーイングコンサーン注記の規定改正(その3)

ゴーイングコンサーン注記の要否を判断する基準が改訂されたことで、これまでゴーイングコンサーン注記を記載していた企業が注記を行う必要がなくなるケースも相当発生するのではないかと考えられます。このようなケースでは、これまで開示されていたものが開示されなくなることになり、しかも、内容がゴーイングコンサーンに重要な疑義を与える事象・状況に関するものですから、相当な情報開示の後退となる危険性があります。

そこで、企業内容等の開示に関する内閣府令(有価証券報告書の記載要領)も合わせて改正がなされ、ゴーイングコンサーン注記としての開示対象にならなかったものでも、ゴーイングコンサーンに重要な疑義を与える事象・状況については、「事業等のリスク」として記載することが求められるようになり、また、これらの対応策について、「財政状態及び経営成績に関する分析・検討」のところで記載することが求められるようになりました。

これが、いわゆる経営リスクの2段階開示と呼ばれる仕組みです。簡単にまとめてみると、

ゴーイングコンサーンに重要な疑義を与える事象・状況

 ・重要な不確実性あり → ゴーイングコンサーン注記として記載(監査対象)

 ・重要な不確実性なし → 事業等のリスク等として記載(監査対象外)

有価証券報告書の仕組みから言えば、これまでと同じレベルの情報開示を求めている訳ですから、その点については特に問題はないのではないかということになります。やはり、今回の改正で最も重要なのは、監査対象となるゴーイングコンサーン注記としての記載を求めるか否かの判断であろうというのが私の率直な感想です。

ただ、今回のルール改正は2009年3月期決算から適用となる上、企業会計審議会の監査基準の改訂に関する意見書も4月10日付で正式に公表される等、作業は急ピッチで進められています。しかし、このデュープロセスの短さがかえって企業への政策的な配慮として受け止められている側面もあるようです。(参考:4月7日付の日本経済新聞朝刊記事)

確かに、今回の改訂は、IFRSとの整合性を図るという点や本来あるべきゴーイングコンサーン注記のあり方を示しているという側面があることは私も理解できる部分です。しかし、あまりに唐突な見直しであるがために(本当はそうではないのかもしれませんが)、監査人の対応にかなりのバラツキが出てきそうな懸念もありますし、今回の改訂自体が経営リスクの情報を隠そうとするものという印象を与えかねないということには留意しておく必要があるかと思われます。

いずれにしましても、2009年3月期決算にどのような影響を与えるのか、また、これらの情報開示の動向が株価や信用リスク等の財務活動にどのような影響を与えるのか注目しておく必要がありそうです。

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ゴーイングコンサーン注記の規定改正(その2)

前回のブログでは、ゴーイングコンサーン(継続の企業の前提)注記の要否を判断するルールが変更になったことについて触れました。これまでは、ゴーイングコンサーンに重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在した場合には注記が求められていましたが、改正後のルールにおいては、そのような事象又は状況が存在し、かつ、これらに対して経営者が対応を行ってもなお重要な不確実性が存在し、さらに、貸借対照表日以後もその不確実性が引き続き存在している場合に、注記が求められることになります。では、ゴーイングコンサーンに関する重要な不確実性とは一体何なのでしょうか?

日本公認会計士協会の監査基準委員会報告書第22号「継続企業の前提に関する監査人の検討」の公開草案によれば、以下のような記述が存在します。

「継続企業の前提に関する適切な注記が、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を財務諸表の利用者が適切に理解するために必要であると監査人が判断した場合には、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していることになる。継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在しているかどうかにつては、当該不確実性がもたらす影響の大きさ及びその発生可能性に基づき、実態に即して判断する。」

この指針の解釈については、様々な意見が出てきそうな感じがしますが、「その財務諸表にゴーイングコンサーン注記が記載されていなければ、監査人として意見表明ができないと判断するほどゴーイングコンサーンに対して不確実性がある(リスクが高い)と判断されるような場合には、ゴーイングコンサーン注記が求められる」と私は解釈しました。

研修会の後、何人かの同業者(公認会計士)の方とこの点についてお話をしたのですが、今後以下のような問題点が出てくるのではないかとのご意見を伺いました。

① 結局ゴーイングコンサーン注記の要否の判断が監査人に委ねられる形となってしまっている。基準等の改訂の趣旨は、ゴーイングコンサーンに対して重要な不確実性が存在する場合にのみ注記を求めることで、ゴーイングコンサーン注記を減らそうとするものと考えられるが、監査人もリスクに対して保守的に考える傾向が強い中で、適切な判断が行えるのか?

② 重要な不確実性が存在する場合にのみゴーイングコンサーン注記が付されることになると、ますます、この注記が倒産予測情報として受け止められる可能性が高まるということはないのか?(改訂後もゴーイングコンサーン注記は倒産予測情報としての位置付けではないということに変わりはありませんが。) とすれば、企業側はゴーイングコンサーン注記を回避するための主張を強めてくる可能性があり、①の問題とも相まって監査人側の判断が非常に難しくなるのではないか?

この②についてですが、これまでの監査基準では、ゴーイングコンサーンに重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在した場合には、経営者の評価に加え経営計画等の合理性についても監査人は検討することが求められていましたが、改訂後の基準では経営者の対応策について検討することになっています。一見単なる言葉の違いに思えそうですが、これもそうではないようです。

これまでは、一般的にゴーイングコンサーン注記に関する監査を行う場合には取締役会の承認を受けた合理的な計画が必要とされていたために、監査人が最終的な結論を下せる(監査意見を表明できる)状況に至らなかった事例も散見されたように思われます。今回の基準の改訂により、監査人は経営者の対応策について検討を行うこととされており、恐らくこれまでよりも監査証拠として認められるものの範囲が広がるのではないかと考えられます。このように考えていくと、「監査証拠は広く採用しなさい。注記の要否は重要な不確実性が認められる場合に限定しなさい」ということになって、リスクに対して保守的になりつつある監査人側のスタンスとは大きくかけ離れる面があるのではないかと危惧するのです。この点については、私自身が監査の現場を離れていることもあり、正しく理解できているか自信がない部分もあります。実際に監査に携わっていらっしゃる方々のご意見を伺いたいところです。

(次回につづく)

 

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ゴーイングコンサーン注記の規定改正(その1)

先日、日本公認会計士協会主催の監査事例研修会に参加してきました。そこで、継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記の取扱いに関する改正内容についての解説があったのですが、非常に興味深い内容でしたので、まとめてみたいと思います。

これまでのルールでは、ゴーイングコンサーンに重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在すれば、直ちに企業は財務諸表において「継続企業の前提に関する注記」(以下、ゴーイングコンサーン注記と呼ぶ)、すなわち、重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する旨及び内容、ゴーイングコンサーンに関する重要な疑義の存在、重要な疑義の影響を財務諸表に反映しているか否かを記載することが求められていました。つまり、ゴーイングコンサーンに重要な疑義を抱かせる事象や状況が存在するだけで、ゴーイングコンサーン注記の記載が求められていたということになります。この事象又は状況については、日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」の中で例示的に示されていますが、広い領域にわたって検討が行われることとなっています。

このため、最近の企業業績の急激な悪化に伴って、財務諸表にゴーイングコンサーン注記を記載する企業が増えてきているという状況が起こっていたようです。一方で、このルールは平成14年の監査基準の改訂によって導入されましたが、以下のような問題点も指摘されていたようです。

・これまでのゴーイングコンサーン注記は、ゴーイングコンサーンに重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在すれば、画一的に財務諸表の注記を求めていたため、適切な対応策が講じられた結果、倒産のような最悪の事態に至ったケースは決して多くはない。その一方で、最近の厳しい経済情勢の中では、注記が破綻予測情報として受け取られ、円滑な企業活動の阻害要因となっているという指摘がある。

・平成14年の監査基準の改訂においては主に米国基準を参考にして基準開発が行われていたが、IFRSにおいては「継続企業としての存続能力に重大な疑問を生じさせるような事象又は状態に関する重要な不確定事項を発見したときには、その不確定事項を開示しなければならない」とされており、これまでのルールとの間には差異がある。また、近年のIFRSとのコンバージェンスの動きの中で米国基準にも改訂の動き(昨年に改訂基準の公開草案を公表)があるため、これらと整合的でないとの指摘がある。

これを受けて、今回の監査基準の改訂においては、以下のようなステップを踏んでゴーイングコンサーン注記の要否を検討することとしています。

① 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象・状況が存在するかどうか?

② ①のような事象・状況が存在する場合に、これらを解消・改善するための対応してもなお重要な不確実性が存在するかどうか?

③ 貸借対照表日後も継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するかどうか?

これら3つのステップを踏んだ結果、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が解消されていないと判断された場合は、ゴーイングコンサーン注記の記載が求められることになります。注記の記載内容としては、重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する旨及び内容、経営者の対応策、重要な不確実性が認められる旨及び理由、重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かを記載することとなります。

これまでのように継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象・状況が存在するかどうか?ではなく、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するかどうか?がポイントになるわけです。これまでの基準は、かなり幅広く網にかけて注記を促すことによって、いわゆるゴーイングコンサーンの問題を回避していたように思いますが、改訂基準では、本当にゴーイングコンサーンに対する確証が得られない場合にのみ注記が求められるという点で、ある意味では、ゴーイングコンサーン注記の「あるべき姿」になってという印象もあります。しかし、実務上は、この不確実性の有無を判断することが相当難しくなるのではないかという印象を受けました。次回は、その辺りのことについて述べてみたいと思います。

(次回につづく)

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IAS第1号「財務諸表の表示」(その16)

第106項から第110項では、持分変動計算書(日本では株主資本等変動計算書と呼ばれている決算書が対応)について述べられています。

まず、企業は持分変動計算書の中において、以下の項目を表示することが求められます。(第106項)

(a)当期の包括利益合計:親会社の株主に分配される金額と非支配持分に分配される金額とを独立して開示する。
(b)持分の各構成要素について、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更および誤謬」に従って認識された過年度遡及適用や過年度遡及修正の影響を開示する。
(c)持分の各構成要素について、以下の項目による変動額を独立表示しながら期首残高と期末残高との間の調整表を開示する。
 ・当期損益
 ・その他の包括利益の各項目
 ・所有者としての立場での所有者との取引:所有者への出資及び分配と支配不能となっていない子会社の所有者持分とを独立して表示

ここで、持分の各構成要素とは、例えば、出資された持分の各項目やその他包括利益や利益剰余金の各項目の累積残高などが含まれることになります。(第108項)

また、報告期間の期首と期末の間の持分の変動とは、当期中の純資産の増減を反映したものとなります。当期の全体的な持分変動とは、所有者としての立場での所有者との取引(例えば、持分の出資、企業自身の出資契約の買い戻し(つまり、自己株式の取得?)、配当など)から生じる変動を除くと、その期間中の企業活動によって集められた収益及び費用の総額を表すことになると述べられています。(第109項)

第108項や第109項は、おそらく当たり前のことが述べられているだけだと筆者は思っているのですが、どなたか深い意味をご存知の方がいらっしゃっいましたら、ご一報ください。

IAS第8号は、他のIFRSにおいて移行時の影響額を他の方法で処理することを要求されている場合を除いて、適用可能な範囲まで遡及的調整に会計方針の変更による変動額を影響させることを要求しており、また、適用可能な範囲まで誤りを正すための修正を要求しています。遡及的調整や遡及的修正は持分の変動ではありませんが、IFRSが持分の他の構成要素の遡及的調整を要求しる場合を除いて、利益剰余金の期首残高に対する調整となります。第106項は、持分の各構成要素の調整総額を、会計方針の変更によって生じたものと誤りを修正することによって生じたものとに区分して、持分変動計算書において開示することを要求しています。(第110項)

日本基準においても、このIAS第8号に対応するいわゆる過年度遡及修正に関する会計基準の論点整理が既に終了しています。2009年中には公開草案が公表予定となっていますので、いずれこのブログでも取り上げてみたいと思います。

また、企業は、持分変動計算書または注記において、当期において所有者への分配として認識された配当金の金額及び1株当たりの(配当)金額を開示することが求められます。(第107項)

第111項では、キャッシュ・フロー計算書について述べられていますが、IFRSではIAS第7号が別途設けられているため、IAS第1号では、特段の記載はなされていないようです。IAS第7号については、またこのブログでも取り上げたいと思います。

(次回に続く)

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外国子会社配当金の益金不算入制度(その2)

平成21年度税制改正によって導入された「外国子会社配当益金不算入制度」ですが、これが会計の取扱いにも微妙(ではないかもしれませんが)な影響を及ぼしています。それが、税効果会計に関する取扱いです。

日本公認会計士協会は、2009年3月19日に税効果会計に関する実務指針及びQ&Aの改正に関する公開草案を公表しています。

①連結財務諸表における税効果会計

留保利益に係る一時差異に対して繰延税金負債を認識しなければならないケースを示している第34項(留保利益に係る一時差異)の記述が一部変わっています。これまでは、「親会社と当該子会社の所在する国又は地域における税率の差により追加納付税金が発生する場合」とされていましたが、今回の改正により「配当等のうち税務上益金不算入として取り扱われない部分(配当等の5%)及び当該該当等に対する外国源泉所得税が損金不算入となることにより追加納付税金が発生する場合」となっています。つまり、今回の税制改正によっても、留保利益に係る一時差異に対する税効果は認識しなければならないことになります。

留保利益に係る一時差異に対して認識しなければならない繰延税金負債の額は、在外子会社の留保利益のうち配当されないことが確実な部分を除いた部分がすべて配当された場合に発生する追加納付税金ということになります。よって、改正後の税法に従えば、将来配当が予定される留保利益(子会社決算日の為替相場で換算)×(5%×実効税率+外国源泉税率)ということになります。

②個別財務諸表における税効果会計

今回の税制改正により、配当等に係る外国源泉所得税の外国税額控除(直接税額控除)ができなくなり、また間接税額控除も廃止されるため、繰越外国税額控除に対する繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたっての判断基準が大幅に変わることとなります。(基本的には、在外支店の所得のような国外源泉所得がなければ、回収可能性はなくなってしまうのではないでしょうか?)

この改正の適用事業年度ですが、平成21年度の税制改正法案の公布日が平成21年3月31日となったため、3月決算会社においては、平成21年3月期(つまりこれから行われる決算)から適用になります。4月2日付の日本経済新聞朝刊によれば、海外子会社の配当によって生じる課税に備えて多額の引当(繰延税金負債)を計上している企業では、これらの取崩が検討されており、最終利益を一時的に押し上げる効果があるとされています。

一方で、これまでは在外子会社の留保利益は配当しない方針として、繰延税金負債を認識していないかったような企業が、今回の税制改正を機会として、在外子会社の留保金の親会社への配当を行う方針に転換するようなケースでは、平成21年3月期決算において繰延税金負債(言い換えれば、法人税等調整額の借方)を認識することとなるため、最終利益を押し下げる影響を与えますので、十分注意が必要です。

また、少し別の観点ですが、繰延税金資産の回収可能性の判断するにあたって将来の課税所得の発生額を見込む場合には、この外国子会社配当が益金不算入になる影響(すなわち、課税所得が押し下げられる影響)も加味することが必要になります。(税効果会計に関するQ&A Q.12参照) これによって、繰延税金資産の計上が認められなくなるケースもあるかもしれません。

このように、今回の制度改正は平成21年3月期の決算数値に色々な影響を与えることも予想されますので、早急に会計・税務へのインパクトを検討し、在外子会社の配当方針をどのように考えるのか(これまで通りか、変更するのか)を経営上意思決定する必要がありそうです。

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外国子会社配当金の益金不算入制度(その1)

去る3月27日、「所得税法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立し、いわゆる平成21年度税制改正の内容が確定しました。以前、このブログでも触れましたが、外国子会社配当益金不算入制度が導入されることとなり、海外に子会社の保有していらっしゃる企業の方の中には、外国子会社から配当を受け取るのかどうかについて検討する中で、会計や税務のインパクトを調べられている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

外国子会社配当益金不算入制度の内容について、簡単にまとめてみたいと思います。(この内容は、1月23日に閣議決定された平成21年度税制改正の要綱に基づいて記載しています。必ず、最終の法律改正の内容をお確かめいただくようお願い致します。)

・間接外国税額控除制度を廃止し、内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について、その内国法人の所得金額の計算上、益金の額に算入しない(益金不算入とする)制度を導入する。 ⇒なお、外国子会社とは、その内国法人が外国法人の発行済株式等の25%以上の株式等を、配当等の支払義務が確定する日よりも6ヶ月以上前から引き続き直接に有している場合を指します。(一部、租税条約の規定により異なる割合が定められている場合があります。) 

・上記の益金不算入制度を適用する場合、その配当等の額の5%に相当する金額は配当等の額から控除する。 ⇒すなわち、配当全体のうち、5%は課税の対象になるということです。

・配当等の額に対して課される外国源泉税等の額は、その内国法人の各事業年度の所得金額の計算上、損金の額にも算入されず、また、外国税額控除の対象ともならない。 ⇒後述しますが、ここも大きく変わるポイントと思われますのでご注意ください。

・これらの制度の適用は、内国法人の平成21年4月1日以後開始する事業年度(平成22年3月期)以降に受け取る配当金及び外国源泉税等の額について適用する。

以下の設例で、課税関係を確認してみてください。

A社は、外国に所在する子会社から配当金を受け取った。配当金を受け取った日の為替レートによる配当金の円換算額は10,000であったとする。この配当金に対しては10%の源泉税が課されるものとし、日本での実効税率は40%とする。

<日本法人が負担することとなる税金金額>
外国源泉税   10,000×10%=1,000(※1)
日本での納税額 10,000×5%×40%=200(※2)

(※1)日本では損金算入及び外国税額控除が認められなくなるため、外国子会社で源泉された税額は、最終的に日本法人がそのまま負担することになる。

(※2)配当金の金額のうち5%部分は益金不算入が認められないので法人税の課税対象となり、その結果、住民税及び事業税も課税される結果となる。ここでは、計算の便宜上、実効税率を乗じて日本での納税額を計算している。

上記の設例では、10,000の配当金に対して1,200(12%)の税負担が発生することになりますが、この税負担の割合は源泉税率の高低によって大きく左右されるのではないかと思われます。2国間の配当金に関する源泉税率は租税条約で定められている場合が多く、国によって取扱いがまちまちですので、今回の税制改正のメリットを享受できるのかどうかについて、少し慎重に検討する必要があるのではないかと思いました。

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