« 社外取締役の設置を強制? | トップページ | 資本市場の活性化とコーポレートガバナンス »

IAS第1号「財務諸表の表示」(最終回)

結局、20回以上にわたってIAS第1号「財務諸表の表示」に関する記事を書いてきました。実は、結論の背景など、まだまだ読み切れていない部分もあるのですが、そろそろ別の基準書を読んでみたいという作者の個人的希望もあり、IAS第1号については、ひとまず今回で終了ということにさせていただきたいと思います。今回は、IAS第1号を読んだ感想を色々書かせていただこうと思います。これが、財務諸表の表示に固有の問題なのか、IFRS全体に関する問題なのかは分かりませんが、何か感じ取っていただけるものがあればと思います。

①基準書の内容を理解すること

これは、いくつかの意味で「大変だなあ」と感じました。まず、今回は英文の基準書しか用意できなかったこともあり、大胆にも日本語に訳しながら読み進めたのですが、やはり何箇所が翻訳することが難しい箇所が出てきました。もちろん、私の英語力の問題もあるのは間違いないのですが、日本語に直したとして、すべての内容を理解することは可能なんだろうかということは切実に感じました。

もう1つは、いわゆる原則主義の問題です。このIAS第1号でも、「最低限これだけはやってください」というものは用意されていましたが、それ以外のことについては、「財務諸表の利用者が…を理解できるかどうか」で判断することになっていました。この考え方自体は決して目新しいものではないですが、これまでどちらかというと、定量的な基準で表示の詳細さを判断してきた我々にとって、財務諸表の利用者の利便性に配慮しながら、財務諸表の表示の詳細さを決定していくというのは、なかなか難しいことではないかと感じました。

②他社例(ベスト・プラクティス)の重要性

基準書だけ読んでいても、なかなかどのように動けばいいのかがはっきりしないものであるだけに、他社事例の重要性というものは増していくのではないかと思いました。しかし、単なる模倣ではだめで、その背景を考慮しながらあてはめていく必要があるというところがなかなか大変だなと感じました。

③自社基準の重要性

他の基準についてはよくわかりませんが、IAS第1号を読んだ限りでは、自社のルール(基準)をしっかり持っておくことが重要だなと感じました。②の他社例(ベスト・プラクティス)の重要性と一見矛盾するかもしれませんが、他社例も十分活用しながら、会社がどのような財務諸表を作ろうとしているのかということについて、方針なり基準(ルール)を確立させておくことが重要なのではないかと感じました。

④日本の法令との調整

現在、日本のIFRSの適用に関しては、上場企業の連結財務諸表について先行して実施するということが検討されているようです。しかし、日本の上場企業の開示書類である有価証券報告書を作成する場合には、連結財務諸表規則に従って作成することになっており、当然、IAS第1号との調整が必要となります。この調整が可能なのか、どのように調整していくのかということは当然検討されなければいけないテーマであると考えます。

と、とりとめなくいくつか課題(となりそうなもの)を書かせていただきましたが、IFRSの究極の目的は、世界中の会社が1つの会計基準を適用することによって、財務諸表の利用者の利便性(財務諸表の他社比較や期間比較を容易にすること)が確保されることですので、他国のIFRS財務諸表と比べても遜色のないものを作っていくかという点において、どのように取り組んでいくのかが今後重要になるだろうと思われます。

(終わり)

|

« 社外取締役の設置を強制? | トップページ | 資本市場の活性化とコーポレートガバナンス »

IFRS関連」カテゴリの記事

コメント

ベスト・プラクティスは他社例だけでなく、現実の生きた事業・企業をIFRSで財務諸表に企業実態を表現する現場・実務が重要ということです。海外は既に実務が醸成されているということです。
日本は企業側に実務を行える会計士が少なすぎるのです。それ以前に、IFRS導入の権限をもった金融庁にIFRS実務を含めて理解する人材がいないということが問題なのです。

投稿: AY | 2009年6月 1日 (月) 10時08分

AYさんコメントありがとうございます。

AYさんのおっしゃるように、ベスト・プラクティスは他社例を単にどう取り扱うかという問題ではなく、各企業がIFRSを適用して自社の決算書をどのように作りこんでいくかということが非常に重要だと感じました。少なくとも、IAS第1号を読んだだけでも、そう感じた部分はいくつもあったように思います。

確かに、ヨーロッパやアジアを中心とした国々は既にIFRSの実務に触れる機会が増えてきており、その中からベスト・プラクティスと呼べる実務が誕生してきていると聞きます。こうした取組を日本を行っていく必要があると思うのですが、その際に、AYさんがおっしゃるようにIFRSを理解している人材の不足が問題になってくるように思います。

私もこうやって勉強し続けることで、何らかのお役に立ちたいと考えているところです。

投稿: 作者です | 2009年6月 1日 (月) 21時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/504488/29889280

この記事へのトラックバック一覧です: IAS第1号「財務諸表の表示」(最終回):

« 社外取締役の設置を強制? | トップページ | 資本市場の活性化とコーポレートガバナンス »