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2009年6月

ポイント・マイレージの会計処理

少し前の新聞記事になりますが、6月12日日本経済新聞朝刊の記事からです。企業が販売促進に使っているポイントやマイレージの会計処理が国際会計基準の影響から厳格になっていると記事は指摘しています。

既に国際会計基準の適用を受けている欧州やオーストラリアの航空会社の事例では、いずれも多額のマイレージ関連負債を計上したことにより、大幅な業績悪化につながったと指摘されています。これまでは、ポイント使用にかかる費用を見積もって引当処理する方法が一般的だったものが、新しいルールの適用により、ポイント発行時にポイント分は売上から控除し、ポイント分は企業が将来実行すべき義務(負債)として計上するルールに改められたとされています。つまり、ポイントやマイレージはその発行額の100%が負債として計上されるようになったというイメージでしょうか。

一方、日本国内ではマイレージに関する明確な会計基準がないため、処理方法にはバラつきがあるとされています。航空会社でも、JALはマイル発行時に発行分を費用計上(販管費)を計上するとともに履行義務分を債務で計上していますが、ANAはマイル発行時には処理を行わず、期末時点の未使用マイルのうち将来使用されると認められる部分を引当処理(費用処理)されているようです。

このような制度は航空業界が有名ですが、それ以外にも、家電量販店をはじめとする小売店や携帯電話会社なども同様の制度を持っており、名称の如何を問わず、将来の販売促進のための値引制度を設定しているような場合には影響を受ける可能性があると考えられます。また、この問題では売上の取扱い(売上の計上金額そのもの)が変わってしまうことになるため、営業部門への説明やシステムの対応等の影響も考えておく必要があると思われます。

国際会計基準では、IAS第18号「収益」という基準書がありますので、いずれこのブログでも取り上げていくことにしたいと思います。

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資産除去債務に関する会計基準

少し前の話になるのですが、6月10日の日本経済新聞朝刊に資産除去債務の会計処理に関する記事が掲載されていました。

資産除去債務とは、固定資産等の撤去が法律・契約等で義務付けられている場合に発生するコストのことであり、これを固定資産の取得時に会計処理しようというのが今回新たに設けられた基準の趣旨になります。また、最近話題になっているPCBやアスベスト等の有害物質の除去コストも対象に含まれることとなっています。

会計基準の強制適用は2011年3月期からですが、2009年3月期で早期適用を実施された事例もあるようです。ある企業では、鉱山の閉山費用等を見積もった結果、約30憶円の資産除去債務が発生したとされています。特殊なケースかもしれませんが、これだけの影響を与える可能性がある会計基準であるということも言えそうです。

資産除去債務の会計基準を適用するにあたっては、

・資産除去債務が発生している範囲(資産)の特定

・資産が除去(除却)される時期の見積り

・除去に際して発生するコストの見積り

・固定資産台帳や除去債務に関する台帳の整備

など準備に時間を要すると思われるものが多い一方、2011年3月期の期首時点(つまり2010年3月時点)において保有している資産について資産除去債務の有無を検討し、資産除去債務を有しているものについては取得時点まで遡って影響額を算定する必要がある(新規取得資産のみが対象になるのではない点に注意が必要です。)ため、来年3月あたりを目処にした準備が必要と考えられます。

このブログでも、少し昔になりますが、資産除去債務の会計基準を解説した記事を書かせていただいていますので、是非参考にしていただければと思います。また、この夏新しい会計基準に関するセミナーが各所で企画され、私も講師を担当させていただくことになっています。その中でも、この資産除去債務の会計基準はウェイトの高い項目となっていますので、是非ご参加いただき情報収集に努めていただきたいと思います。

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連結納税制度が変わる?(その2)

先週の木曜日は、更新をお休みしてしまいましたが、1週間で非常に多くの方がブログを閲覧してくださったようです。まだ、どのような改正が行われるのか定かではありませんが、非常に関心の高いテーマだったのかなと思いました。今回は、前回の続きということで、連結納税制度における連結(課税)所得の計算方法についておさらいしておきたいと思います。こちらも、現行制度のお話ですので、取扱いには十分ご注意ください。

・受取配当等の益金不算入

ほとんど単体申告と異なる点はありませんが、1点だけ相違するのは連結法人株式等に係る配当等の額については、その100%が益金不算入となります。(負債利子の控除もなし) これは、連結決算(会計)と同じで連結会社(法人)間の配当金はそもそも収益(益金)として認識しないということでしょうね。

・寄附金の損金不算入

連結納税制度における寄附金の損金算入限度額の計算は、連結親法人の資本金等の額及び連結所得金額に基づいて計算されることになります。寄附金の多い企業では、連結納税と単体納税のどちらが有利になるのか検討しておく必要があるのかもしれませんね。

・交際費の損金不算入

連結納税制度における交際費の損金算入限度額の計算は、連結親法人の資本金等の額を基準に判定されます。すなわち、連結親法人の期末資本金の額が1億円以下である場合には、400万円の定額控除限度額が認められます。しかし、交際費の損金不算入額は連結ベースで計算するため、資本金が1億円以下である企業が連結グループに多い場合は、各企業ごとに定額控除限度額が認められることとなるため、これもどちらが有利か慎重に検討する必要がありそうです。

・欠損金の繰越控除

まず、連結納税制度適用前の欠損金については、原則として連結親法人の最初の連結事業年度の前7年以内に発生した欠損金額が控除の対象となります。前回のブログでも触れたように、現行制度では連結子法人の連結納税制度適用前の欠損金については、繰越控除の対象とすることができませせん。このことは、連結納税制度を適用する上で、大きなメリットを享受できないことを意味しており、改正を行うかどうかは非常に重要な検討課題と言えそうです。なお、連結納税制度適用後に発生した欠損金については、単体決算と同じで7年間の繰越控除が認められています。

・連結法人間取引の損益の調整

固定資産(土地を含む)や有価証券を連結法人間で譲渡したことにより発生した譲渡損益については、連結所得の計算上、取り消されることになります。また、これらの繰り延べられた譲渡損益については、譲渡を受けた法人が第三者への譲渡や償却等を行うことによって、実現する(課税所得の計算に算入される)ことになります。これは、連結決算でいうところの未実現利益の調整に相当する処理ですが、連結納税においては棚卸資産の譲渡損益は調整の対象にはならないという点と、譲渡損失が発生した場合、連結決算(会計)では調整を行わないことがしばしば見受けられますが、連結納税においては譲渡損失も取り消す(益金算入する)ことになります。

平成21年度税制改正において、在外子会社からの配当金の益金不算入制度が創設されたことにより、在外子会社の余剰資金を日本に集める際の税金コストの負担が大幅に軽減されました。今回の新聞報道にもあったように、連結納税制度のあり方が見直され、利用しやすい制度となることで、より一層、企業の税金コストの軽減が図られると期待されます。ただ、このような政策によって、企業の競争力は強化される一方、税収減の問題も浮上してくるため、結論を得るまでには、なお一層の検討が必要になりそうです。

(以上)

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連結納税制度が変わる?(その1)

1週間ほど前の話になるのですが、日本経済新聞朝刊に連結納税制度の制度改正を行い利用しやすくするための検討が行われているという記事が載りました。1面の記事だったので、ご記憶に残っていらっしゃる方も多いのではないかと思います。まだ、経済産業省と財務省が協議を始めたところであり、正式な決定ではないものの、早ければ2010年度税制改正に盛り込まれる可能性があるとのことです。そこで、今回は現行の連結納税制度について少し振り返ってみることにしたいと思います。

・適用範囲
親会社(連結親法人)と基本的には国内の100%子会社(連結子法人)が対象となります。連結親法人と連結子法人を合わせて連結法人といいます。この場合、一部の国内100%子会社を選択して連結子法人とすることはできない、すなわち、すべての国内100%子会社を連結子法人としなければならないとされています。記事によれば、今回の見直しの動きの中では、100%子会社に限定されている要件を緩和することや複数ある子会社の中からどの会社を連結子法人とするかを選択できる制度の導入が検討されるようです。なお、海外子会社については、たとえ100%子会社であっても連結納税の対象に含めることはできません。

・連結納税制度適用の承認申請
すべての連結法人の連名で、適用しようとする事業年度開始の日の6か月前の日までに、所轄税務署長を経由して国税庁長官に承認申請書を提出し、承認を受ける必要があります。3月決算会社であれば、前年の9月30日までに承認を受ける必要ということになりますが、早めの準備が必要ですね。

・連結グループへの加入時の取扱い
連結子法人が連結グループに加入する場合には、連結加入直前事業年度の単体申告において一定の資産について時価評価を行い評価損益を計上する必要があります。ここで、一定の資産とは、固定資産・固定資産以外の土地等・金銭債権・売買目的有価証券以外の有価証券などが挙げられます。新聞記事ではこのルールの見直しが検討項目の1つとなっていると触れられていましたが、評価益については課税されてしまうため、連結納税制度を活用する上での1つの阻害要因と考えられているためでしょう。

・連結所得の計算
個別益金額から個別損金額を差し引いた後に、いくつかの連結納税のための調整計算が必要となります。なお、個別益金額と個別損金額については、ほぼ単体申告の際の金額と同一になります。連結納税のための調整計算として必要になるのは、①受取配当金の益金不算入 ②寄附金の損金不算入 ③交際費の損金不算入 ④控除する外国税額・所得税額 ⑤連結欠損金の繰越控除 ⑥連結法人間取引の損益 が挙げられます。

細かい内容については、次回のブログで触れることにしたいと思いますが、連結欠損金の繰越控除について、現行ルールでは連結納税制度適用前に生じた欠損金については、原則として連結親法人の分しか連結納税制度に持ち込めないことになっていますが、これを改正して子会社の欠損金も持ちこめるようにするかどうかの検討も行われるようです。子会社の繰越欠損金が持ち込めれば、さらに税務面でのメリットが享受できるので、連結納税制度の活用が進むかもしれませんね。

・連結法人税額の計算
連結所得金額に連結法人税率(普通法人(会社)の場合は単体法人税率と同じ)を乗じた金額を求め、これに試験研究費や設備投資に係る税額控除・留保金課税・使途秘匿金課税・所得税額控除・外国税額控除を行った結果、最終的な連結法人税額が計算されることになります。

・連結法人税の個別帰属額の計算
連結法人税額は連結親法人が納付しますが、その納付税額を各連結法人に配分した金額(連結法人税額の個別帰属額といいます)を、連結法人間で収受する必要があります。個別帰属額は個別所得(欠損)金額(個別帰属益金額から個別帰属損金額を控除したもの)に連結法人税率を乗じて求められます。

・連結確定申告と納付
連結確定申告書の提出義務と連結法人税の納付義務は連結親法人にありますが、連結子法人は、連結法人税額の個別帰属額等を記載した書類を税務署に提出するとともに、連結法人税について連帯納付責任を負います。また、納付期限について、申告期限の延長の承認を受けた場合には、連結事業年度終了の日の翌日から4か月以内に申告・納付を行うことが必要となります。

(次回に続く)

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我が国の国際会計基準の取扱いについて

今日の日本経済新聞朝刊の記事にもありましたように、昨日企業会計審議会が開催され、「我が国の国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」の修正が行われ、ほぼその内容が固まったようです。今後は、今月中にも企業会計審議会の総会が開催され、金融庁長官に答申される(正式な中間報告となる)ようです。

当初案からの変更点について確認してみました。(⇒より後の部分は私の意見・感想です。)

・当初案では、2010年3月期から任意適用を認めるかどうか国際的な動向や諸問題の改善状況を勘案しながら判断するとなっていましたが、明確に2010年3月期から任意適用を認める方針が打ち出されました。

・任意適用を認める企業及び監査人の範囲(要件)について、当初案よりも具体的な要件の記述がなされています。

・強制適用の時期が明記されました。すなわち、2012年に強制適用の要否を判断したならば、2015年または2016年に適用を開始すると明記されました。⇒当初案では、2012年を目処に強制適用の要否を判断し、そこから3年程度の準備期間が必要という表現になっており、必ずしも適用開始時期が明確になっていないとの指摘がありました。

・当初案では、一斉に強制適用に移行する考え方が示されていましたが、段階適用(移行)も検討するという内容が追加されました。⇒米国も段階移行が検討されているようであり、検討に値するものと思われます。ただ、あまりに移行期間が長いとその間の財務諸表の比較可能性が阻害される可能性もあり、慎重な検討が必要と考えられます。

・別記事業については、規制や当局の監督との関係を慎重に判断する必要がある旨の記載が追加されました。

・IFRSの採用を機会として、個別財務諸表の開示のあり方についても幅広い見地から検討を行う必要がある旨の記載が追加されました。⇒個人的には非常に意義深いことであると思います。

・IASBに対する意見発信を早期の段階から、積極的に行っていく必要がある旨の記載が追加されました。⇒IFRSの基準の内容に日本の考え方も取り入れられるようにする必要がありますね。

・引き続きコンバージェンスを継続されることが必要である旨の表現が強調されました。

記事によれば、金融庁は、10社程度が早期の基準導入を検討(具体的な導入時期は不明)しており、初期段階を含めると60~70社程度が導入に向けての準備に着手しているとの見方を示しているとされています。まったくの個人的な感想なのですが、意外に多くの会社さんが取り組みを始めていらっしゃるのだなという印象を受けました。これらの早期適用の会社さんの取り組み方は、一種のお手本のようなものとなるため、後から続く会社さんにも大きな影響を与えると考えられます。

我々は、その取組状況に関心を持つ必要があるとともに、早期適用された会社さんの事例を通じて、導入のために必要な作業の明確化や克服すべき課題の認識といった問題を共有化できるような動きが必要になってくるのではないかと感じます。

詳しくは金融庁のHPをご覧ください。 http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kikaku/20090611.html

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苦戦する会計大学院?

6月5日の日本経済新聞朝刊の記事からです。会計専門家の育成を目的にスタートした会計大学院がその学生の確保に苦戦しているという内容でした。記事では、学生が集まらない理由をいくつか挙げています。

まず、公認会計士試験との連動性の低さです。修了者には一部科目の試験免除等の措置はあるものの絶対的な受験要件となっているわけでもないということが挙げられています。また、会計大学院そのもの運営に対する考え方が、公認会計士試験の合格を第一に考えるということではなく、会計試験に合格した後のことまで考えて教育するというところが多く、結局学生さんにとっては、試験に受かるということから考えるとむしろ負担になる場合もあるようです。

金融庁は、アメリカのエンロン事件を契機として、資本市場の信認回復のためには、会計専門家(公認会計士)を増やし、監査法人だけでなく企業等にも幅広く会計専門家を配置する方向性を打ち出しており、会計大学院もこの一環として設置されています。このような方針の下で、近年、公認会計士試験の合格者は格段に増加していますが、合格者の多くが最初の就職先として監査法人を目指していることや企業側も会計士資格保有者というだけではそれほど採用面で優遇できないこともあり、思ったような状況には至っていないようです。

このように、会計専門家や会計教育のあり方が問われつつある昨今ですが、記事を読んで、私はいくつかのことを思いました。

・私の学生時代の頃を考えると、このような環境がなかったため、試験には合格したものの業界の知識はほとんどない状態で会計士業界に飛び込みました。そのため、最初は随分と苦労したことを思い出します。私の知っている公認会計士の方もたくさん会計大学院で教鞭をとられていますが、もし、私の学生時代にこのような環境があったらと考えると、会計士の世界に飛び込む前に、こうした実務の世界で活躍されている先生方のお話(授業)をお聞きできる会計大学院の環境というのは非常に羨ましい環境だと思います。

・会計に関する専門性を示す資格としては、やはり「公認会計士」ということになるのでしょうが、私が知る限り、「公認会計士」の資格はお持ちでなくても、企業会計に精通していらっしゃる企業の経理担当者の方はたくさんいらっしゃいます。私も、そういった方々に勉強させていただくことがしばしばです。そう考えると、単純に「公認会計士」というタイトルホルダーを増やすという発想ではなく、企業の経理担当者の方が、会計大学院を通じてより高度な(専門化された)教育を受け、会計専門家になっていく(公認会計士の資格を取るかどうかは別として)というような発想があってもいいのではないでしょうか。実際、企業の経理担当者の方も監査する公認会計士も経験がものをいう場面というのは多いように思います。

・私も大学の非常勤講師をさせていただいているのですが、そこで感じるのは、熱心に勉強をしている学生さんがいらっしゃる一方で、まだまだ、会計に関心を示してくれる学生さんが少ないということです。会計専門家を増やすのであれば、会計に関心を示してくれる方々を増やす努力というのも必要ではないかと感じます。今の会計教育は、多くの場合、簿記から始まると思うのですが、そこで挫折する学生さんは意外と多いように感じます。(私の学生時代もそうだったような) 確かに、会計を扱う上で簿記は必須のものですが、最初は別の観点(会計の社会における役割とか会計専門家の魅力など)を知るようなところから会計教育を始めてはどうか? と感じたりする今日この頃です。

是非、この問題に関する皆様のご意見をお聞かせいただきたいと思います。

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企業収益のアジアシフト

毎朝、日本経済新聞を読んでいるのですが、ここ2、3日の間に会計や税務に関する記事がたくさん掲載されていました。いくつか興味深いものもありましたので、少し取り上げてみたいと思います。

6月4日(木曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。

上場企業が2009年3月期に計上した営業利益のうち、アジア地区の依存度が過去最高(36.1%)となったと伝えています。特に、下半期については、日米欧がそろって赤字となる中、アジアだけが黒字を確保した模様です。このことは、世界同時不況の中でもアジアの需要が底堅かったことを物語っており、アジアでの収益力が日本企業の中長期的な成長を左右すると見られています。

記事では、インドでの販売が好調であった軽自動車でおなじみのスズキさん(この話は比較的有名ですよね)、子供用の紙おむつ等の拡販で業績を伸ばしたユニ・チャームさん(偶然なのですが、以前あるテレビ番組でこの話題に触れられているのを見ていて、ちょっと驚いていました。なんとなく、紙おむつは日本のものというイメージがあったので)、中国での活況は背景にオーストラリアからの鉄鉱石輸送が増えた日本郵船さんの事例が紹介されています。

また、今後もこのような傾向が続くとみて、積極的にアジア地区での事業を展開する企業の事例も紹介されていました。このような情勢については、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しにも表されており、09年の世界経済は実質成長率がマイナスになる中、中国を含むアジア振興国は4.8%成長を維持する見通しとなっているようです。

以前にこのブログでも触れましたが、私もこれまでに、シンガポール、クアラルンプール(マレーシア)、バンコク(タイ)、上海(中国)などの都市を訪れる機会をいただきましたが、いずれの都市も発展がめざましかったことに驚きました。その時、直感的ですが、日本もこのアジアの中でどのような存在感を出していくのかということをもっと真剣に考えるべき時に来ているのではないかと思いましたが、まさにそういう時代が訪れつつあるようです。

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資本市場の活性化とコーポレートガバナンス

少し前の話になるのですが、5月14日の日本経済新聞朝刊の経済教室に、弁護士であり現在早稲田大学客員教授でいらっしゃる武井一浩先生の論考が掲載されました。

テーマとしては、金融危機下の資本市場の活性化という観点から、経営陣と株主の対話促進の重要性を述べられていました。経営陣と株主との対話ということからすれば、会計も無縁の話ではないだろうということで、この論考を読んでみることにしました。

今回の金融危機では、グローバル資本主義や市場原理主義という名の下に短期的な自己利益追求という空気が蔓延したことに対する批判が多く寄せられれている。

しかし、今日の資本主義経済において、株主や資本市場からの信頼を得てリスクマネーが供給される環境が整備されることは必要不可欠であると考えられる。武井先生の言葉を借りるまでもなく、いくら間接金融の進んだ日本といえども、株主や資本市場から信任されない企業に対してまで資金供給が行われることはないであろう。武井先生は明言されていないが、短期的な自己利益の追求の是非はともかく、株主や資本市場からの信頼を得るということは会社運営にとっては極めて重要なことであると考えられる。

この株主あるいは資本市場の信任という観点からすると、所有と経営が分離している上場企業においては、経営現場と株主の意見の相違が見受けられることがある。この意見の相違(対立)が一定の水準を超えると株主総会における株主提案や委任状合戦、あるいは敵対的買収といった動きが起こることとなる。武井先生によれば、このような対立はどのような資本主義国においても頻繁に繰り返されており、このこと自体は資本主義社会の中では不可避であり、また否定すべきことでもないとなる。

しかし、その一方で、このような対立を不可避なものとして放置するのではなく、両者の相互不信を深刻化させないための工夫が必要だと武井先生は述べられている。当たり前の話ではあるが、ステークホルダー間の相互信頼は資本主義社会や市場メカニズムを支える重要な前提条件ということにもなる。

武井先生は、このような相互不信の広まりを抑えるためには、会社の構造がステークホルダー間の利害や論理をバランスよく調整することのできる「柔らかい」構造であるべきだと指摘する。この「柔らかい」構造を実現するためには、様々な利害が吸収されるような「クッション」が随所に盛り込んでおくことが1つの工夫になると述べられている。そして、この「クッション」の1つの例として挙げられるのが、株主と経営現場の間に生じる利益相反の現場に対応する会社の機関を挟み込むという手法であり、一般にスーパーバイザリーボードと呼ばれている。スーパーバイザリーボードという横文字を用いるとイメージしづらいかと思われるが、現行の会社法における監査役あるいは社外取締役が該当するとされる。

このスーパーバイザリーボードの重要な機能として、経営判断において適正にリスクが取れる体制を現場で支えることを武井先生は挙げられている。人間を「性悪説」的にとらえたリスク管理体制は日本企業になじみにくいが、組織の論理等に影響され、結果として企業価値を高める業務執行が行われない組織人としての「性弱説」に対しても一定の自浄機能が期待される。

5月28日付のブログで、上場企業に社外取締役の設置を義務付けようとする動きがあり、その背景に、買収防衛策などを巡って株主と経営陣の利害が対立する事例も多くなり、投資家の間から、「監査役制度では経営の監視が不十分である」との声が出ていることが挙げられていました。その時のブログには、なぜこのような議論が起こるのか私には理解できないとコメントしたのですが、武井先生の論考は、私の疑問に対して1つの回答を与えてくれているように感じました。

つまり、経営現場と株主との相互不信を広げないための「クッション」の役割を果たすべき会社の機関として、日本企業の大多数は、監査役制度を導入しています。しかし、この「クッション」の役割を果たす監査役には、人間を性悪説的に捉えたリスク管理(監視)という観点よりも、企業価値を高めるような業務執行の管理(監視)という観点からの経営の監視が期待されているという風に考えることはできないでしょうか。

経営の監視を企業価値を高めるような業務執行の管理(監視)という側面で捉えた場合に、最も適切な機関設計とは何かというのが先程の議論の本質のような気がしてきました。適法な企業運営(コンプライアンス)も重要ではあると思うのですが、資本市場の活性化という観点からは適正な経営判断を監視する役割の方がより期待されている、これが、社外取締役制度への期待となって表れていると考えることはできないでしょうか。

武井先生は、経営者と株主の相互不信の解消には、もう1つ双方の対話が欠かせないとして、IRの重要性を指摘されています。この点についても、またいつかこのブログで取り上げてみたいと思います。

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IAS第1号「財務諸表の表示」(最終回)

結局、20回以上にわたってIAS第1号「財務諸表の表示」に関する記事を書いてきました。実は、結論の背景など、まだまだ読み切れていない部分もあるのですが、そろそろ別の基準書を読んでみたいという作者の個人的希望もあり、IAS第1号については、ひとまず今回で終了ということにさせていただきたいと思います。今回は、IAS第1号を読んだ感想を色々書かせていただこうと思います。これが、財務諸表の表示に固有の問題なのか、IFRS全体に関する問題なのかは分かりませんが、何か感じ取っていただけるものがあればと思います。

①基準書の内容を理解すること

これは、いくつかの意味で「大変だなあ」と感じました。まず、今回は英文の基準書しか用意できなかったこともあり、大胆にも日本語に訳しながら読み進めたのですが、やはり何箇所が翻訳することが難しい箇所が出てきました。もちろん、私の英語力の問題もあるのは間違いないのですが、日本語に直したとして、すべての内容を理解することは可能なんだろうかということは切実に感じました。

もう1つは、いわゆる原則主義の問題です。このIAS第1号でも、「最低限これだけはやってください」というものは用意されていましたが、それ以外のことについては、「財務諸表の利用者が…を理解できるかどうか」で判断することになっていました。この考え方自体は決して目新しいものではないですが、これまでどちらかというと、定量的な基準で表示の詳細さを判断してきた我々にとって、財務諸表の利用者の利便性に配慮しながら、財務諸表の表示の詳細さを決定していくというのは、なかなか難しいことではないかと感じました。

②他社例(ベスト・プラクティス)の重要性

基準書だけ読んでいても、なかなかどのように動けばいいのかがはっきりしないものであるだけに、他社事例の重要性というものは増していくのではないかと思いました。しかし、単なる模倣ではだめで、その背景を考慮しながらあてはめていく必要があるというところがなかなか大変だなと感じました。

③自社基準の重要性

他の基準についてはよくわかりませんが、IAS第1号を読んだ限りでは、自社のルール(基準)をしっかり持っておくことが重要だなと感じました。②の他社例(ベスト・プラクティス)の重要性と一見矛盾するかもしれませんが、他社例も十分活用しながら、会社がどのような財務諸表を作ろうとしているのかということについて、方針なり基準(ルール)を確立させておくことが重要なのではないかと感じました。

④日本の法令との調整

現在、日本のIFRSの適用に関しては、上場企業の連結財務諸表について先行して実施するということが検討されているようです。しかし、日本の上場企業の開示書類である有価証券報告書を作成する場合には、連結財務諸表規則に従って作成することになっており、当然、IAS第1号との調整が必要となります。この調整が可能なのか、どのように調整していくのかということは当然検討されなければいけないテーマであると考えます。

と、とりとめなくいくつか課題(となりそうなもの)を書かせていただきましたが、IFRSの究極の目的は、世界中の会社が1つの会計基準を適用することによって、財務諸表の利用者の利便性(財務諸表の他社比較や期間比較を容易にすること)が確保されることですので、他国のIFRS財務諸表と比べても遜色のないものを作っていくかという点において、どのように取り組んでいくのかが今後重要になるだろうと思われます。

(終わり)

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