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2009年7月

J-SOX 初年度の結果は?(その3)

今回は、重大な欠陥が報告されている内部統制報告書を読んで感じたことを私なりにまとめてみようと思います。

①決算・財務報告プロセスの内部統制整備

決算・財務報告プロセスに関する重大な欠陥が全体の約60%を占めており、この領域の内部統制整備の難しさがあらためて浮き彫りになったのではないかと感じました。特に、新しく導入された会計基準の対応では、経営者の見積りと深く結びついたものが多いため、この見積りをいかに内部統制に落とし込むかという点で苦慮された方も多かったのではないかと思います。やはり、会社ごとの会計処理ルールと経営者の見積り数値の算定過程の明確化が今後の大きな課題になってくるものと思われますし、これらのことは、企業を取り巻く環境の変化に対応しなければならないため、今年が大丈夫だったからといって油断は禁物だと思われます。また、これまでは決算・財務報告プロセスについては会計監査があるので、内部監査等のモニタリングの対象からも除外されているケースが多かったのではないかと思われますが、今後は決算・財務報告プロセスのモニタリングを強化する必要があるのではないかと感じました。具体的には、内部監査メンバーに決算業
務に精通したメンバーを投入して会計監査前の内部監査を実施したり、モニタリング機能を外部の専門家(公認会計士等)にアウトソーシングする等の対応が考えられます。

②連結ベースの内部統制整備

子会社の決算に関する内部統制に重大な欠陥が見つかったり、急激な事業の拡大に内部統制整備が追いつかないなど、連結ベースの内部統制整備に関する問題が浮き彫りになったようにも思われます。グループ経営あるいは連結経営という言葉が使われるようになって随分と時間が経ったようにも思いますが、グループ経営(連結経営)の展開は、事業の拡大と適切な管理体制(内部統制)の構築がセットでなければならないということを経営者の方々に再度認識していただく必要があると感じました。

③内部統制にかけるべき適切なコストは?

経営環境が極めて厳しく、経費削減を余儀なくされる企業様も多いと思われますが、今回読んだ内部統制報告書の中には、合理化を進めすぎた結果、適切な決算業務の遂行に支障をきたしてしまったと書かれているものもありました。内部統制導入費用のことはかなり話題になりましたが、今後は内部統制運用コストをどのくらいかけていくのか、コスト・ベネフィットの着地点をどこに求めるのかということがポイントになるのではないかと感じました。景気の後退局面では、管理部門のコストはリストラの対象になりやすいところですが、行き過ぎたコスト削減は内部統制の重大な欠陥を招くことにもなりかねません。内部統制の重大な欠陥が企業の信用力や財務行為にどの程度の影響を与えるのかは未知数ですが、これら失うものの大きさと投入するコストとの比較が大変重要になってくるような気がします。

以上、3回に分けてJ-SOXの初年度を振り返ってみました。皆さんもお時間があれば、一度重大な欠陥が報告されている内部統制報告書を読まれてはいかがでしょうか? ことわざにもあるように、他の会社の様々な事例からご自身の会社が気をつけなければならない点を発見する1つのいい機会なのではないかと感じました。

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J-SOX 初年度の結果は?(その2)

少し更新が遅くなってしまいましたが、3月決算で内部統制に重大な欠陥があると報告された56社の内部統制報告書を読んでみました。今日はその分析をしてみようと思います。なお、この分析については、あくまで私の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。

重大な欠陥が発見された内部統制の領域

1つの会社において、いくつもの欠陥が発見されたケースもあるため、全体では86の重大な欠陥が報告されています。これを大きな領域で区分してみると、決算・財務報告プロセスに係るものが約60%を占め、全般的統制と業務プロセスに係るものが約20%ずつという内訳でした。

決算・財務報告プロセスに関する欠陥の内訳については、個別の会計基準の適用に重大な欠陥があると指摘された事例が約半数を占める一方、決算全般に係る内部統制や子会社の決算体制に係る内部統制に重大な欠陥があると報告されたケースも比較的多かったようです。個別の会計基準の適用については、税効果会計・減損会計・引当金など、経営者の見積りを要求されるものについて、適切に会計基準の適用が行われていないと指摘されたケースが大半でした。

全般的統制については、会社において重大な事件が発生したために全般的統制(統制環境)に重大な欠陥があると指摘されたケースが圧倒的に多かったです。IT関連では、データの紛失ということで1件が報告されているに留まっていました。業務プロセスに関するものでは、売上に関するものが比較的多かったように思われます。

期末日までに重大な欠陥が改善されなかった理由

内部統制報告制度においては、例え内部統制に重大な欠陥が発見されても、期末日までにそれが改善されていれば、報告の必要はないことになっています。ということは、逆に言えば、上記の56社は期末日までに何らかの理由で改善が果たされなかったということになるため、その理由を内部統制報告書から探ってみました。

最も多かった理由は、十分な人材の確保・育成ができなかったというものでした。また、2番目は期末日直前または期末日以後に重大な欠陥が発見されたため、改善のための時間を確保することができなかったとするものでした。この2つの理由を合わせて約70%に及んでいます。急激な事業の拡大に管理部門が対応しきれなかったことを挙げている例や新規連結子会社において重大な欠陥が発見された例など事業の拡大に内部統制がキャッチアップできていない事例も少なからず見受けられました。

また、運用状況に関する不備に会社が気づいておらず、財務諸表監査において監査法人から修正の指摘を受けた結果、内部統制の重大な欠陥が認められたために改善できなかったというものもありました。これは会社のモニタリング活動の機能強化が求められれる事例だと思われます。

次回は、この内部統制報告書を読んでの私の感想と取りまとめてみたいと思います。

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J-SOX 初年度の結果は?(その1)

今朝(7月2日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。2009年3月期から始まった内部統制報告制度で、経営者自らが「重要な欠陥がある」と開示した上場企業は56社となったことが明らかになりました。これは、これまでに内部統制報告を行った会社(2672社)の2%であり、初年度に16%の企業が重要なな欠陥があると記載した米国に比べると非常に少ない結果となったようです。

記載理由で多かったのは、会計監査人による会計処理の誤りの指摘がそのまま内部統制の重要な欠陥につながった事例のようです。これは、会計処理の誤りの事実が内部統制の重要な欠陥を意味するのではなく、その誤りが起こった原因を突き詰めた時に内部統制の重要な欠陥が原因であると認められた場合を指します。このケースでは、内部統制の評価そのものからは欠陥は発見されなかったものの、決算を行った結果として内部統制の欠陥が明らかになったと考えられるため、内部統制担当者の方にとっては、非常に対処が難しいと考えられます。また、循環取引等の不適切な取引や従業員の不正が発覚したことにより、重要な欠陥の存在を記載したケースもあったようです。

リスクコンサルティングで有名なプロティビティジャパン社長の神林比洋雄氏によれば、日本企業の重要な欠陥が全体の2%にとどまったのは、日本の各企業が米国の先行事例を参考に入念な準備をし、また、金融庁や監査法人も制度の周知徹底を推進した結果であると高く評価されているようです。一方で、内部統制報告書を読んだだけでは、「有効」や「重要な欠陥」の程度が分かりにくい面があったり、内部統制報告書が開示されるまで、投資家が重要な欠陥の存在を知ることができないため、適時開示の観点から改善が必要である旨の指摘をされています。

皆さんは、この結果をどのように受け止められましたか? 神林先生のおっしゃるように日本の取り組みが優れていた結果として総括することができるのでしょうか? 確かに、日本の内部統制担当者の皆さんの取組姿勢は素晴らしいものがあったと思いますし、そのこと自体を否定つもりはありません。また、日本企業の場合は、従業員の会社に対する帰属意識も高く、高いモラルを持って内部統制が運用されたということも想像されるところです。しかし、それでもなお、率直な感想として、米国と日本でそれほどに会社の内部統制の整備状況に差異があったのだろうか? その差異はどのような点において顕著に認められるのかということを知りたいなと思ったのです。この辺りは、今後調査研究が進められることを期待したいところです。

また、重要な欠陥のある会社があまり多くない、しかも、重要な欠陥の多くが会計監査人が会計処理の誤りを指摘した結果から導き出されているということを考えると、この内部統制報告制度の意義そのものを考える必要はないでしょうか? 結局、内部統制を通じて作成される財務諸表の品質(信頼性)に対して、監査法人が一定の保証をしているのであれば、それ以上のことを開示する必要性があるのかという気もするのです。もちろん、この制度の導入を通じて内部統制に対する社会の関心が飛躍的に高まり、また、経営者の方に対して内部統制を継続して良好に運用する責任があることを認識させる効果があることは否定できないのですが。

皆さんはどう思われますか? 次回は重要な欠陥があると報告された56社の内部統制報告書を読んでみて、もう少し私なりの分析を加えてみたいと思います。

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