J-SOX 初年度の結果は?(その1)
今朝(7月2日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。2009年3月期から始まった内部統制報告制度で、経営者自らが「重要な欠陥がある」と開示した上場企業は56社となったことが明らかになりました。これは、これまでに内部統制報告を行った会社(2672社)の2%であり、初年度に16%の企業が重要なな欠陥があると記載した米国に比べると非常に少ない結果となったようです。
記載理由で多かったのは、会計監査人による会計処理の誤りの指摘がそのまま内部統制の重要な欠陥につながった事例のようです。これは、会計処理の誤りの事実が内部統制の重要な欠陥を意味するのではなく、その誤りが起こった原因を突き詰めた時に内部統制の重要な欠陥が原因であると認められた場合を指します。このケースでは、内部統制の評価そのものからは欠陥は発見されなかったものの、決算を行った結果として内部統制の欠陥が明らかになったと考えられるため、内部統制担当者の方にとっては、非常に対処が難しいと考えられます。また、循環取引等の不適切な取引や従業員の不正が発覚したことにより、重要な欠陥の存在を記載したケースもあったようです。
リスクコンサルティングで有名なプロティビティジャパン社長の神林比洋雄氏によれば、日本企業の重要な欠陥が全体の2%にとどまったのは、日本の各企業が米国の先行事例を参考に入念な準備をし、また、金融庁や監査法人も制度の周知徹底を推進した結果であると高く評価されているようです。一方で、内部統制報告書を読んだだけでは、「有効」や「重要な欠陥」の程度が分かりにくい面があったり、内部統制報告書が開示されるまで、投資家が重要な欠陥の存在を知ることができないため、適時開示の観点から改善が必要である旨の指摘をされています。
皆さんは、この結果をどのように受け止められましたか? 神林先生のおっしゃるように日本の取り組みが優れていた結果として総括することができるのでしょうか? 確かに、日本の内部統制担当者の皆さんの取組姿勢は素晴らしいものがあったと思いますし、そのこと自体を否定つもりはありません。また、日本企業の場合は、従業員の会社に対する帰属意識も高く、高いモラルを持って内部統制が運用されたということも想像されるところです。しかし、それでもなお、率直な感想として、米国と日本でそれほどに会社の内部統制の整備状況に差異があったのだろうか? その差異はどのような点において顕著に認められるのかということを知りたいなと思ったのです。この辺りは、今後調査研究が進められることを期待したいところです。
また、重要な欠陥のある会社があまり多くない、しかも、重要な欠陥の多くが会計監査人が会計処理の誤りを指摘した結果から導き出されているということを考えると、この内部統制報告制度の意義そのものを考える必要はないでしょうか? 結局、内部統制を通じて作成される財務諸表の品質(信頼性)に対して、監査法人が一定の保証をしているのであれば、それ以上のことを開示する必要性があるのかという気もするのです。もちろん、この制度の導入を通じて内部統制に対する社会の関心が飛躍的に高まり、また、経営者の方に対して内部統制を継続して良好に運用する責任があることを認識させる効果があることは否定できないのですが。
皆さんはどう思われますか? 次回は重要な欠陥があると報告された56社の内部統制報告書を読んでみて、もう少し私なりの分析を加えてみたいと思います。
| 固定リンク
「J-SOX関連」カテゴリの記事
- J-SOX 初年度の結果は?(その3)(2009.07.10)
- J-SOX 初年度の結果は?(その2)(2009.07.08)
- J-SOX 初年度の結果は?(その1)(2009.07.02)
- 内部統制報告制度(J-SOX)の効用?(2009.01.28)
- 内部統制の思わぬ副作用?(2008.09.18)
「新聞記事より」カテゴリの記事
- IFRS欧州で不協和音?(2009.11.17)
- 資産除去債務に関する会計基準(2009.06.26)
- 新興国市場の重要性(2009.11.06)
- 国際会計への挑戦(2009.11.04)
- 上場企業の業績改善(2009.11.02)


コメント
こんにちは。
会計処理の誤り云々の報告に留まったということは、今回はとにかくルール通りに進めることだけに必死で、本当の意味での「統制」は機能していなかったように思います。(現場サイドとしては、初めから機能するなんて誰も思っていなかったのかもしれないですが…)
今後も機能しうるものなのかどうかは、疑問が残ります。
現場の一意見としては、会計監査において、もっと強い権力を持ってして踏み込んでいただきたい。内部統制や以前記事にもされていた、経営者が選ぶ社外取締役や監査役では力及びません。
少しテーマがずれてしまいましたね。ひねくれたコメントで失礼いたしました。
先生の分析、また楽しみにしております。
投稿: るち。 | 2009年7月 3日 (金) 01時21分
るち。さん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。
なかなか辛口のコメントですね。ですが、重要な欠陥の多くが会社で生じた事実(会計処理の誤りや不正事件)に基づいて発見されたということは重要な意味を持つと思います。
本当に内部統制の評価作業からは問題は見つからなかったのか? という点において、監査法人が果たす役割は大きいというるち。さんの意見には私も同感です。
また、内部統制の件について、これからも情報交換させていただければと思います。どうぞよろしくお願い致します。
投稿: 作者です | 2009年7月 3日 (金) 17時07分