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2009年11月11日 (水)

中小企業向けIFRS(その1)

少し前の話になるのですが、2009年7月国際会計基準審議会(IASB)が中小企業向けIFRS(IFRS for SMEs)を公表しました。先日、日本公認会計士協会が発行する監査・会計ジャーナルの11月号に目を通していたところ、この概要に関する解説記事が掲載されていることに気がつきました。以前から、この中小企業向けIFRSについてはその動向に関心を持っていたのですが、最終基準が公表されたということで、その内容について少し取りまとめてみたいと思います。

①中小企業向けIFRS設定の必要性

完全版IFRSについては財務情報の比較可能性を高める等の便益をもたらすことが指摘されていますが、これらは中小企業の財務諸表利用者にとっても同じである(同じような便益がもたらされる)ということが考えられます。例えば、銀行等の金融機関が国境を越えて多国籍に中小企業に対する融資等の活動を行っているケースもありますし、取引先がその財務諸表を利用して企業の財務内容を評価することを望む場合もあるでしょう。このため、完全版IFRSの簡素化を図り、中小企業版IFRSが採用されることで、これらの便益がもたらされることが期待されていると考えられます。

②中小企業向けIFRSの概要

中小企業向けIFRSは、基準本体・用語集・結論の根拠・財務諸表の開示例・開示のチェックリストを合わせて約350ページから構成されています。350ページの会計基準(もちろん英語)というとかなりハードルの高いもののように感じられますが、完全版IFRSが英文で約2,500ページとなっていることを考えますと、かなりの簡素化が図られているということが言えるかと思います。また、用語集や開示のチェックリストが用意されているのは、中小企業においてその適用が可能となるための配慮であるとのことです。

中小企業向けIFRSでは概念フレームワークを抜粋する形での記述があり(基本的な考え方は完全版と同じであると考えられます)、その上で、中小企業向けIFRSは、利用者のニーズとコスト・ベネフィットを考慮する形で設定されているようです。また、完全版IFRSでは様々な解釈指針が公表されていますが、中小企業向けIFRSでは必要な解釈指針が本体に組み込まれており、今後も本体を直接改訂する対応をとることで、個別の解釈指針が公表されることはない見通しのようです。さらに、基準の改訂については、3年ごとの見直しが予定されており、適用時期についても改訂から1年の猶予を設けることが明示されているようです。この辺りも中小企業で適用が可能となるための配慮が垣間見える感じがします。

③中小企業(SME)とは?

SMEはSmall and Midium-sized Entitiesの略ですが、一体どのような企業を中小企業(SME)と想定しているのでしょうか?

公開草案では、収益、資産、従業員等の数値基準を設けることも検討されていたようですが、最終的には、「一般への説明責任(パブリック・アカウンタビリティ)がない事業体という形で整理が図られています。一般企業の場合、公開市場において負債または持分金融商品が取引されていない会社ということになろうかと思います。逆に規模的にSMEであったとしても、上場会社の場合は、パブリック・アカウンタビリティを有している企業に該当するため、中小企業向けIFRSの適用は妥当ではないと考えられているようです。

また、micro(零細)企業の取り扱いについても検討がなされたようですが、これらの企業はいわゆる課税所得計算のために税法に従った申告書を作成し税務申告を行うだけであり、一般目的財務諸表(広範な利用者が必要とする共通の情報)を作成する必要性がない場合もあると考えられることなどから、零細企業向けIFRSについては設定されなかったとのことです。もちろん、これらの零細企業が中小企業向けIFRSを適用して(一般目的)財務諸表を作成することを妨げるものではないと考えられます。

次回は、会計基準の概要について、取りまとめてみたいと思います。

(次回に続く)

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