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2016年9月 5日 (月)

租税回避策に開示義務?

8月22日の日本経済新聞朝刊の1面の記事からです。読まれた方も多いと思いますが、記事の内容を振り返ってみます。

・財務省と国税庁は企業や富裕層に租税回避策を指南する税理士・会計事務所・コンサルティング会社に仕組みの開示を義務付ける方針

・租税回避地(タックスヘイブン)に資産を移すなど悪質な税逃れを把握する狙い。

・適切な助言も開示対象に含む一方、拒んだ場合の罰則も設ける。

・類似の開示制度は、アメリカ、イギリス、カナダ、韓国等でも導入済。

租税回避(課税逃れ)の問題については、このブログでも取り上げたOECDのBEPSプロジェクトが契機となり、その対応が進んでいます。(余談ですが、このプロジェクトの議長は日本人の方が担当されているため、制度の導入が非常に早く進んでいるものと思われます。)

このプロジェクトの中の行動計画の1つとして、「タックス・プランニングの開示義務」というものがあります。今回取り上げられた話題は、この行動計画の内容に基づいた制度の検討が進んでいることを示唆するものと思われます。では、このプロジェクトでは、どういうことが検討されたのか少しご紹介したいと思います。

1.タックス・プランニングの開示義務制度の目的

・潜在的な租税回避スキームに関する情報を早期に入手すること
・租税回避スキームに関わる関係者(利用者及びプロモーターなど)を認識すること
・租税回避スキームの利用に対して抑止力として働くこと

2.タックス・プランニングの開示義務制度に係る基礎的要素のオプション(選択肢)

(1)開示義務者は誰か?
 ①プロモーターと納税者の双方に開示義務を課す方法
 ②プロモーターまたは納税者のいずれかに開示義務を課す方法

 ※プロモーターの定義
  報告すべき税務スキームに関する設計、販売、企画または管理について責任を有する者または関与する者(上記の活動について、重要な援助、支援または助言を行う者を含むことも可能とする)

(2)開示の対象範囲
 ・閾値(いきち:重要性基準値のようなもの)を設定するかどうか?
  以下の2つのオプションが示されています。
  ①閾値を設定せず、個別的にホールマーク(開示すべき税務スキームの特質)を定義して対象範囲を決定する方法
  ②包括的なホールマークに加え、閾値を設定して対象範囲を決定する方法

 ・ホールマークをどのように定義するか?
  包括的ホールマークと個別的ホールマークの両方を用いることが提案されています。
  ①包括的ホールマーク…新しく革新的な税務スキームを把握することが可能
  ②個別的ホールマーク…既知の税務スキームを対象とすることが可能

(3)その他
 ・開示のタイミング
  以下の2つのオプションが示されています。
  ①税務スキームの利用可能となるタイミング…プロモーターに報告義務を課す場合
  ②税務スキームを実行するタイミング…納税者に報告義務を課す場合

 ・利用者の特定方法
  以下の2つのオプションが示されています。
  ①照会番号とクライアントリストを用いる方法
  ②クライアントリストのみ用いる方法

 ※プロモーターに一義的に報告義務を課す場合は、①の方法の具体的な運用方法として、

・開示された税務スキームに対して税務当局が照会番号を発行する
・当該税務スキームを利用した納税者は税務申告書にその照会番号を記載する義務を課す
・プロモーターはその税務スキームに係る顧客リストを税務当局に報告する義務を課す

(4)開示義務制度の位置づけ・罰則
以下の点について、国内法上明記することを推奨しています。

・開示義務制度に基づく税務スキームの開示は、税務当局の承認を得たことを意味するものではない。
・開示された税務スキームの全てが租税回避を意図した取引であることを意味するものではない。
・開示義務制度の実効性を確保するため罰則規定を設けるべきである。

日本の制度についても、上記のオプション(選択肢)を基本線として議論が進められるものと思われますが、あすか税理士法人・高田和俊税理士のブログでも指摘されているように、具体的にどのような線引きが行われるのか、その動向を見守る必要があるように思われます。

(参考資料)
PwC BEPS News
OECD・BEPS 最終パッケージの公表 行動12-タックス・プランニングの開示義務
(2015年10月30日)

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