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2017年11月24日 (金)

法人税における研究開発税制について

企業の継続的な発展を考えるにあたって、絶えずイノベーションを起こしていくことが重要な時代となってきています。そのような観点から、企業の研究開発(R&D)活動は重要な役割を果たすこととなる訳でですが、法人税法も、企業の研究開発活動を促進し競争力を強化する目的で研究開発税制を整備しています。

法人税法における研究開発税制は、次の4つの制度に区分されます。

1.試験研究費の総額に係る税額控除制度
2.中小企業技術基盤強化税制
3.特別試験研究に係る税額控除制度
4.その他の試験研究費に係る税額控除制度

※ただし、1と2は同時に選択することができず、中小企業者等は2、その他の法人は1を選択することとなります。

1.試験研究費の総額に係る税額控除制度

まず、法人税法における試験研究費の定義を確認しておく必要がありますね。

製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費及び経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額(租税特別措置法42の4⑧Ⅰ、租税特別措置法施行令27の4②)

試験研究費の総額に係る税額控除制度とは、青色申告書を提出する法人の各事業年度において、試験研究費の額に所定の税額控除割合を乗じた金額の法人税額の特別控除ができる制度をいいます。この所定の割合の計算が平成29年度の税制改正で見直されていますので、注意が必要です。

この所定の割合を計算する前に、以下の3つの数値を把握する必要があります。

増減試験研究費=当事業年度において損金算入された試験研究費-比較試験研究費

比較試験研究費=前3事業年度(当事業年度を含まない)において損金算入された試験研究費÷3(1年決算の場合)

増減試験研究費割合=増減試験研究費÷比較試験研究費

その上で、所定の税額控除割合の計算は以下のようになります。

(1)増減試験研究費割合が5%を超える場合
 9%+((増減試験研究費割合-5%)×0.3) → 10%を上限(※)
 ※平成29年4月1日から平成31年3月31日までに開始する事業年度においては、14%が上限となります。

(2)増減試験研究費割合が5%以下である場合
 9%-((5%-増減試験研究費割合)×0.1) → 6%を下限

(3)税額控除限度額
 =調整前法人税額(別表一(一)「2」欄の額)×25%

 なお、平成29年4月1日から平成31年3月31日までに開始する事業年度において試験研究費割合が10%を超える場合、税額控除限度額は以下の算式により計算します。

 試験研究費割合=当事業年度において損金算入された試験研究費÷当事業年度を含む4事業年度の平均売上金額

 税額控除限度額=調整前法人税額×25%+調整前法人税額×((試験研究費割合-10%)×2) (注)下線部分は10%を上限

試験研究費が増加傾向にある企業ほど、より大きなメリットとなる税額控除の制度となるように見直されていますね。

2.中小企業技術基盤強化税制

中小企業技術基盤強化税制は、試験研究費の総額に係る税額控除制度の中小企業版とお考え頂ければいいのではないかと思います。

平成29年4月1日から平成31年3月31日までに開始する事業年度における税額控除割合は12%、税額控除上限額は調整前法人税額の25%相当額となりますが、増減試験研究費割合が5%を超える場合には、以下の算式により求めることとなります。

税額控除割合
 12%+((増減試験研究費割合-5%)×0.3))

税額控除上限額
 調整前法人税額の35%相当額

 ※試験研究費割合が10%を超える場合
  調整前法人税額の25%相当額+調整前法人税額×((試験研究費割合-10%)×2)

3.特別試験研究に係る税額控除制度

特別試験研究費とは、租税特別措置法42の4⑧Ⅸにおいて、以下のように定義されています。

試験研究費の額のうち
 ・国の試験研究機関
 ・大学その他の者と共同して行う試験研究
 ・国の試験研究機関、大学又は中小企業者に委託する試験研究
 ・中小企業者からその有する知的財産権の設定又は許諾を受けて行う試験研究
 ・その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究
 ・その他の政令で定める試験研究

青色申告書を提出する法人の各事業年度において、特別試験研究費の額がある場合には、前述の1及び2の制度とは別に、法人税額の特別控除が認められています。

税額控除割合
 (1) 国の試験研究機関・大学その他これらに準ずる者と共同して行う試験研究や特別研究機関等に委託する試験研究…30%
 (2) (1)以外のもの…20%

税額控除限度額
 調整前法人税額×5%

4.その他の試験研究費に係る税額控除制度

その他の試験研究費に係る税額控除制度として、(1) 試験研究費の増加額に係る税額控除の制度 や (2) 平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る税額控除の制度 がありました。

(1) 試験研究費の増加額に係る税額控除
平成29年税制改正によって、試験研究費の増加額に係る税額控除の制度は廃止となりました。(代わりに、試験研究費の総額に係る税額控除制度の中で試験研究費が5%以上増加した場合は税額控除割合が増加するインセンティブが用意されました。)

(2) 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る税額控除
平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度まで制度が延長されることとなりました。制度の概要は以下の通りです。

平均売上金額…当事業年度を含む4事業年度の平均売上金額

試験研究費の額>平均売上金額×10% となる場合
 税額控除額=(試験研究費の額-平均売上金額×10%)×超過税額控除割合
 超過税額控除割合=(試験研究費割合-10%)×0.2
                   ↓
当事業年度において損金算入された試験研究費÷当事業年度を含む4事業年度の平均売上金額

 税額控除限度額=調整前法人税額×10%相当額

5.試験研究費の範囲の見直し

平成29年度税制改正において、税額控除の対象となる試験研究費に、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る以下の試験研究のために要する一定の費用が追加されています。

・大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部もしくは主要な部分が自動化されている機器または技術を用いる方法によって行われる情報の収集

・上記の収集された情報について、一定の法則を発見するために、情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識ならびに情報処理に関して必要な知識を有すると認められる者により専用のソフトウェアを用いて行われる分析

・上記の分析により発見された法則を利用した役務の設計

・上記の設計に係る一定の法則が、予測と結果とが一致することの蓋然性が高いものであること(妥当であると認められること)及びその法則を利用した役務がその目的に照らして適当であると認められることの確認

これは、従来の「モノ」「技術」に加え、「サービス」の開発も支援対象とするという視点から追加されたものだということです。

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