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2018年1月19日 (金)

ASBJ 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱いを公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、1月12日、実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」を公表しました。

1.公表の背景

最近、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する際に、一定の額の金銭を企業に払い込むタイプのものが見受けられるようになりました。
このようなケースは、ストック・オプション会計基準(企業会計基準第8号)の公表時には想定されておらず、ストック・オプションに該当するのか、複合金融商品に該当するのかが明確でなかったため、今回実務対応報告が公表されることとなりました。

2.対象となる範囲

この実務対応報告の対象となる取引は、以下のような新株予約権が想定されています。

a.企業が従業員等を引受先として新株予約権の募集要項を決議し、新株予約権には市場価格がない。

b.権利確定条件として、勤務条件及び業績条件が付されているか、勤務条件は付されていないが業績条件が付されている。

c.引き受ける従業員等は、申込期日までに申し込む。

d.企業は、申込者の中から新株予約権を割り当てる者及び数を決定し、割当を受けた従業員等は、割当日に新株予約権者となる。

e.新株予約権者となった従業員等は、払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込む。

f.権利確定条件が満たされた場合は権利行使可能となり、満たされなかった場合は失効する。

g.新株予約権者となった従業員等は、権利が確定した新株予約権を行使する場合、行使価格に基づく金額を企業に払い込む。

h.企業は、新株予約権が行使された場合、行使した従業員等に対して新株を発行するか自己株式を処分する。

i.新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了した場合、新株予約権は失効する。

3.会計処理

権利確定条件付き有償新株予約権は、従業員等が金銭を企業に払い込むことから、資金調達や投資の機会の提供という性格を有すると考えられる一方で、その他の点については、ストック・オプション会計基準が想定する報酬としての性格を併せ持つものと考えられます。
そこで、前述のような権利確定条件付き有償新株予約権は基本的にストック・オプションに該当するとした一方で、従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として用いられていないことを立証できる場合には、ストック・オプションに該当しないものとし、この場合には、複合金融商品適用指針(企業会計基準適用指針第17号)に従うこととされています。
ストック・オプションに該当する権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理は以下の通りとなります。

(1)権利確定日以前の会計処理

①当該新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額(対象となる範囲のe参照)を、純資産の部に新株予約権として計上する。

②当該新株予約権の付与に伴い企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、純資産の部に新株予約権として計上する。

※各会計期間に費用として計上する額は、当該新株予約権の公正な評価額-払込金額(①参照)を、対象勤務期間を基礎とする方法等の合理的な方法に基づき計算する。

※当該新株予約権の公正な評価額=新株予約権の公正な評価単価×新株予約権の数

③新株予約権の公正な評価単価は、付与日において算定することとし、条件変更の場合を除いて見直しは行わない。また、算定技法については、ストック・オプション会計基準に従うが、失効の見込みについては当該新株予約権数に反映させる(④参照)ため、評価額の算定上は考慮しない。

④新株予約権の数=付与された新株予約権の数-権利不確定による失効の見積数 によって算出する。

※権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合は、新株予約権の数を見直すこととなり、見直しを行った結果、企業が従業員等から取得するサービスに対する費用の計上額が(過年度分も含めて)変動するが、この変動額は見直しを行った期の損益として計上する。

※権利確定日には、権利の確定した新株予約権数に修正し、企業が従業員等から取得するサービスに対する費用の計上額が(過年度分も含めて)変動するが、この変動額は権利確定日の属する期の損益とする。

⑤新株予約権として計上した払込金額(①参照)のうち、権利不確定により失効(対象となる範囲のb及びf参照)した部分に対応する金額は利益として計上する。

(2)権利確定日以後の会計処理

①新株予約権として計上した額のうち、権利行使に対応する部分は資本に振り替える。

②権利不行使による失効(対象となる範囲のi参照)した部分に対応する部分は、失効が確定した期に利益として計上する。

(3)権利確定日の決定方法

①権利確定条件として勤務条件及び業績条件が付されている場合

 いずれかの条件を満たした時に権利確定する場合は、その条件を満たした日を権利確定日とする。

 両方の条件を満たした時に権利確定する場合は、両方の条件を満たした日を権利確定日とする。

②権利確定条件として勤務条件は付されていないが、業績条件のみが付されている場合

 業績が達成する(または達成しない)ことが確定する日を権利確定日とする。

4.開示

注記については、ストック・オプション会計基準第16項及び第24項から第35項に従って行うこととされています。

5.適用時期

①平成30年4月1日以後適用となりますが、実務対応報告公表日以後は適用することも認められています。また、実務対応報告公表日以前に発行された権利確定条件付き新株予約権についても遡及適用することを原則としています。

②なお、遡及適用を行うにあたって、実務対応報告公表日より前に新株予約権が権利行使され新株発行されている場合は、この実務対応報告の適用により新株予約権として計上される額のうち、権利行使に対応する部分を払込資本として計上することになります。

この点、本来は会社法の規定に従って科目(資本金、資本準備金、その他の資本剰余金)を決定することになりますが、この実務対応報告を適用しても新株予約権の行使があった場合の「資本金等増加限度額」(会社計算規則第13条①)を修正するものではないことから、その他資本剰余金として計上することとされています。

③さらに、実務対応報告公表日より前に新株予約権を付与している場合でも、実務上の困難さを考慮して、一定の注記を行うことを条件に従来採用していた会計処理を継続することも認められています。

④この実務対応報告の適用初年度において、従来の会計処理と異なることなる場合や、③を適用して従来適用していた会計処理を継続する場合は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われます。

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