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2018年3月 5日 (月)

「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正

1月25日、日本監査役協会と日本公認会計士協会は、「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」(以下、研究報告)の改正を公表しました。

1.改正の背景

今回の改正の背景として、以下の点が挙げられています。

(1) 平成27年5月施行の改正会社法において、会計監査人の独立性確保の観点から以下の改正が行われたこと。
 会計監査人の選解任等に関する議案の内容は監査役等が決定
 公開会社において、監査役等が会計監査人の報酬等について同意した理由を事業報告に記載

(2) コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)において、適正な監査の確保に向け、監査人の監査環境の整備に対する取締役会及び監査役等の以下の責務が原則に明記されたこと。
 監査役等による監査人の選定・評価基準の策定
 監査人の十分な監査時間の確保
 監査人の経営幹部へのアクセスの確保
 監査人による監査役等、内部監査部門、社外取締役との十分な連携の確保
 監査人の指摘等に対する会社側の対応体制の確立
※この点について、日本監査役協会は「監査役監査基準」等を改正し、日本公認会計士協会は監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」の改正を行っています。

(3) 組織としての監査の品質確保に向けた「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)が公表され、監査法人が被監査会社の経営幹部及び監査役等と監査上のリスクの認識や理解の共有等を通じて率直かつ深度ある意見交換を尽くし、会計監査の品質の持続的な向上に向けた取り組みについて、関係者への分かりやすい説明と積極的な意見交換を行うことが規定されたこと。

2.研究報告の位置付け

今回の改正により、研究報告の位置付けが大きく変わるものではありませんが、以下の点が明記されており、改めて監査の重要性が指摘されています。

監査役等と監査人は、それぞれ監査をその職務とし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担い、その職務を通じて企業不祥事の発生防止をはじめとした企業活動の健全化を図り、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に貢献している。

なお、近年では子会社等における不祥事が目立ってきており、企業集団の観点からのコーポレート・ガバナンスの考え方が重要となってきている。監査役等と監査人の連携を考える上においても、企業集団の観点は重要であり、本研究報告記載の連携を行うに際しても同様である。また、本研究報告は監査役等と監査人との連携についてまとめているが、監査全般の実効性向上に向けて、内部監査部門等監査に携わる他の関係者も含めた連携が重要である。

3.主な改正点

以下、今回の改正内容の中で、特に重要と思われる点を列挙します。

(1) 監査役等と監査人との連携と効果

以下の点が、追記されています。

会社法において、監査役等には会計監査人の選解任に関する議案内容の決定権や監査報酬の同意権が付与されており、また、CGコードにおいて会計監査人の適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うことが求められているが、これらは監査役等と監査人の連携が前提となること。

双方の監査において得られた情報は、相手の監査においても有用であり、監査の実効性・有効性・効率性を高めるためにも相互の連携を強化することが求められること。

監査役等と監査人との適切な連携には相互の信頼関係を基礎としながら、相互の改善点などについて随時意見交換を行うなど、緊張感のある協力関係の下でコミュニケーションを図ることが不可欠であること。

企業活動が大規模かつ複雑になっていることから、リスク・アプローチによる監査を適切に行うために、双方が保有するリスク情報を共有し、適切なリスクの把握に繋げることが期待されること。

(2) 情報・意見交換事項

以下の点が、追記されています。

情報提供(監査人から監査役への報告事項を含む)の範囲を協議・決定するにあたって、直近の課題のみならず、将来への影響を勘案するとともに会計上の課題やコーポレート・ガバナンス、内部統制または業務プロセスにおける課題等も含め、幅広いコミュニケーションとなるよう検討すべきである。

また、その例示として、以下の項目が追加されています。

①監査契約の新規締結時
・監査人の状況及び品質管理体制
  監査チーム組成に際しての考え方(グループ監査の体制を含む)
  監査品質に関わる事項(例.透明性報告書等に記載のある事項)

②監査契約の更新時
・監査人の再任に際しての監査役等の評価結果の概要と要望事項

③監査計画の策定時
・監査人による監査計画
  特別な検討を必要とするリスクの状況とその対応
  親会社監査人から子会社監査人に対する指示の状況を含む、グループ内の監査人間の情報提供の頻度や方法
  内部統制の評価の方法及び実施時期(グループを含む)
  監査スケジュール(特に期末監査期間)

・監査役等による監査方針及び監査計画
  企業集団としての監査体制(企業集団の構成会社のリスク評価、内部統制の整備・運用状況、企業集団内の情報共有などの連携体制等)

④四半期レビュー時
・四半期レビューの実施状況について、当初の四半期レビュー計画と相違する場合は、相違点と監査(レビュー)時間に与える影響等
・特別な検討を必要とするリスクの状況と四半期レビュー計画に与える影響

⑤期末監査時
・監査人の監査の実施状況について、当初の監査計画と相違する場合は、相違点と監査時間に与える影響等
・特別な検討を必要とするリスクの状況とその対応

⑥随時
・事業所及び子会社への監査人の往査結果等
・監査人の監査計画の重要な修正について、相違点と監査時間に与える影響等

既に、実務において情報・意見交換されている内容も多いと思われますが、あらためてご確認ください。
公認会計士である社外監査役等は、監査人の皆さんとのコミュニケーションが円滑なものとなるように努力しないといけないと再認識しました。

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