最近、IFRSにおける持ち合い株式の会計処理が新聞を賑わしています。新聞以外の情報も含め、その内容を整理してみたいと思います。
金融商品会計基準の見直しについては、IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)との共同プロジェクト(MOU)において取り上げられている1つの項目となっています。取り上げられているテーマは、金融商品の分類及び測定、減損処理、ヘッジ会計などがあるようですが、金融商品の分類と測定については、昨年のリーマンショック以来の混乱を踏まえて、金融商品の分類(測定区分)の簡素化の要請があり、他のテーマよりも前倒しで検討が進められたようです。分類と測定については、2009年7月に公開草案が公表され(新聞紙上ではこの頃から頻繁に取り上げらるようになったと考えられます。)、2009年中に最終基準として取りまとめられることが予定されています。
7月に公表された公開草案の概要
債券(負債金融商品)については公正価値評価するものと償却原価評価するものの2区分が提案されています。ただし、償却原価評価できるものは、①基本的な貸付金の特徴を持っている、②契約金利に基づいて管理されている、の要件を満たすものでなければならないとされています。また、公正価値区分と償却原価区分との振替を禁止するなどの取扱いが提案されています。
一方、株式(持分金融商品)については公正価値測定(時価評価)のみとされています。このうち、売買目的で保有されているものについては、その公正価値の変動はすべて当期純利益に含められますが、それ以外のもの(いわゆる持ち合い株式)については、当初において経営者がその公正価値の変動を当期純利益に含めて計上するのかその他包括利益(OCI)として計上するのかを選択することができるとされています。また、公正価値の変動をOCIとして計上する場合には、その株式を売却した時の損益を当期純利益に含める(リサイクル)の処理が認められず、さらに、受取配当金もOCIで計上することが求められています。一方で、減損処理(評価損を当期純利益に含めて処理する)必要もなくなるということになり、結局、公正価値の変動をOCIとして処理する株式については、その株式に関連する一切の損益をOCIで計上することが求められている訳です。
企業が売買目的以外の目的で保有する株式が多い日本にとっては、この公開草案のインパクトは相当大きく、公正価値の変動(すなわち評価損益)を当期純利益に含めるという選択をしなければ、配当金や有価証券売却益も当期純利益に含めることができないというルール変更を強いられることになる訳です。当然、日本はこの公開草案に反対の立場を表明していました。
10月15日・16日の日本経済新聞の記事によれば、IASBの臨時会合において、公正価値の変動をOCIで処理する株式の配当金を当期純利益に含めることも認める決定がなされたようです。一方で、株式の処分損益のリサイクルは認めない方針が維持されているようです。10月15日の日本経済新聞に掲載された、IASBのトウィーディー議長のインタビューの中に「30年間保有していた持ち合い株式をある日突然売却したとして、それが純利益に計上されるとすれば、当期の本業で稼いだ利益が見えなくなる。」とのコメントがあります。確かに、この持ち合い株式の売却損益に関して言えば、トウィーディー議長の指摘は的を得ていると思いますが、当期純利益は本業で稼いだ利益だけが計上されているものなのでしょうか?(そもそもIAS第1号では、包括利益計算書においていかなる収益・費用も異常項目として表示することは認められていませんが。)
結局、この問題は「当期純利益が何を表現するのか?」という問題、言い換えれば「何が損益で、何がその他の包括利益になるのか?」という問題につながってくるように思えるのです。新聞記事には、配当金の会計処理の変更は日本への配慮の結果だという風に書かれていましたが、そんな政治的配慮で会計基準が決まってしまっていいのでしょうか? その辺りのことについて、少し私見を次回のブログで書いてみたいと思います。
(※)今回のテーマからは外れますが、公開草案では非上場株式についても一律に公正価値評価が提案されており、これが基準化されると経理実務には相当大きな影響を与える可能性があると考えられます。
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