企業業績の動向

2010年9月23日 (木)

海外での稼ぎ日本潤さず

9月20日の日本経済新聞に「海外での稼ぎ日本潤さず」というタイトルの記事が掲載されていました。

内容は、2010年4~7月に日本企業が海外子会社から受け取った配当金の金額が前年同期に比べて減少傾向にあるとのことで、日本企業が海外での業績を伸ばす一方で、その利益が日本に戻ってこないという悲しい現実を浮き彫りにしています。

平成21年度の税制改正で、日本企業が海外子会社から受け取る配当金については、実質非課税(5%だけ課税される)ように制度が改められ、海外での稼いだ資金が日本に戻ってくることが期待されていることは、このブログでも取り上げましたが、期待通りの効果が得られてないということが言えそうです。

もっとも、昨年は制度改正の初年度でもあり、それまで海外に留保されていた利益が一度に日本に還流されたという側面もあるため、一概に日本の資金需要が冷え込んだと結論付けるのは早いかもしれません。

しかし、日本企業の海外中心の設備投資計画には歯止めがかからず、日本市場への期待感のなさは深刻です。日本企業の資金還流の動向は、日本の経済動向を表すバロメーターの1つと位置付けることができそうです。

2010年8月 2日 (月)

週末の新聞記事より

週末の日本経済新聞を読んでいると、3月決算会社の第1四半期決算発表に関連する記事が多く目につきました。少し前までは、中間決算(10月~11月)まで企業業績に触れる機会は無かった訳ですから、四半期決算制度によって、企業の経営状態がよりタイムリーに把握できるようになったことは、非常に意義の大きいことだと今更ながらに感じます。

その記事の中心は、新興国における業績が企業全体の業績改善に大きく寄与しているという点です。このことについては、以前からこのブログでも取り上げていましたが、先日仕事でタイを訪問した際にも、ASEAN地域の生産拠点としてばかりでなく、日本向け製品の生産が行われるということで、非常に盛り上がっているように感じました。

また、パナソニック㈱が子会社であるパナソニック電工㈱と三洋電機㈱を完全子会社化するというニュースも注目の記事であったように思います。完全子会社の狙いを質問された大坪社長が「今の状況では100メートル走のペースでマラソンを走るライバル企業には勝てない」と話されたのは、新興国市場における他国のグローバル企業との厳しい競争を物語っているように思います。

このような記事を読んでいると、企業の皆さんがグローバルな環境で熾烈な競争を戦いながら活躍されていることに敬意を表するとともに、日本という国はいったいどこに向かっていくのかと政治の空白を嘆かずにはいられないのです。

2010年6月 1日 (火)

日本企業の税負担率が突出

5月29日(土曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。同社が日経株価指数300の構成企業の連結決算を対象に調査したところ、日本企業の税負担率(法人税、住民税及び事業税÷税金等調整前当期純利益)は49.1%と国際的に突出していることが分かったと伝えられています。

同様の調査を欧米企業についても行ったところ、米国が29.9%、ドイツが34.4%、イギリス率が36.0%となっており、日本の負担率がかなり高くなっていることが分かります。また、韓国企業(サムスン電子やポスコ)は10%台となっています。また、同じ日の新聞記事では、台湾が法人税率を25%から17%に引き下げる方針のようです。

税負担率が高ければ高いほど、企業が利益を設備投資や研究投資などの再投資に回せなくなることとなり、不利な条件での競争を強いられることになります。そういった点では、日本企業は、先進国企業だけでなく、新興国企業との間においても、かなり不利な条件での競争を強いられていると言えるのではないでしょうか。

記事では、もともとの法人税率が日本の方が高いことに加えて、欧米企業などではシンガポール等の優遇税制を活用して税金の負担率を低く抑える戦略が進んでいること等も挙げられています。さらに、固定資産税の負担などにおいても、日本企業は韓国企業などと比べるとかなり高い負担を強いられているとも言われており、産業界からも競争条件を平等にするような政策の必要性が指摘されているようです。

企業の国際的な競争が激しくなる中で、企業の競争力を取り戻しつつ、税収を確保するという税制の構築ができるのかどうか、日本の政治が問われているといっても過言ではないでしょう。

2010年4月19日 (月)

新興国市場の重要性 鮮明に

先週の金曜日・土曜日と、日本経済新聞に電機メーカーが新興国市場の重要性を認識しているという内容の記事が掲載されました。

金曜日は、パナソニックの大坪社長が、新興国市場を中心とした海外市場を開拓し、売上高の海外比率を60%にまで引き上げることを表明したとのことです。(5月に発表される同社の中期経営計画の中に正式に織り込まれるようです。)

新興国市場の開拓には、普及価格帯の製品開発が不可欠とされますが、同社はインド市場を新興国開拓のモデルケースとし、テレビやエアコンなどの開発に力を入れるとのことです。

土曜日は、新興国での業績向上が日立製作所や東芝の業績改善をもたらしているという内容でした。日立製作所は、中国やインドにおいて発電所や鉄道などの社会インフラ設備の受注を伸ばしており、東芝は新興国のデジタル家電の需要増加に伴って、フラッシュメモリーやシステムLSI(大規模集積回路)の受注が回復してきているようです。

このブログでも、新興国市場が企業の業績に与える影響が大きくなりつつあることをお伝えしていましたが、それを裏付ける形となっています。一方で、政治の混迷などで日本の消費市場の回復は遅れ気味であり、今後更なる日本企業の海外進出が高まっていくのではないかと考えられます。

今後、企業のグループ経営(グローバル経営)の重要性が、ますます高まっていくのは間違いないところでしょう。

2010年4月10日 (土)

企業年金の利回りが3年ぶりのプラスに

4月7日(水曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。格付投資情報センター(R&I)が約130の企業年金の調査を行った結果、2009年度の年金資産の運用利回りがプラス14%と3年ぶりにプラス水準となったと伝えられています。前年度の調査結果がマイナス17%であったことからすると、大幅な改善が見込まれるようです。

2009年度においては、株価の水準が回復傾向にあったため、年金資産の運用配分における株式の比率を下げなかった企業年金では、利回りが大幅に改善したようです。

現行の退職給付会計基準では、期待運用収益(期待利回り)と実際の運用利回りとの差異は数理計算上の差異として取り扱われ、従業員の方々の平均残余勤務年数以内の一定年数で会計処理(費用計上または費用のマイナス計上)を行うことが求められています。このため、2010年度においては、大幅に運用利回りが期待水準を上回った部分が費用のマイナス計上されるため、増益要因となることが考えられます。

一方、先日公表された退職給付会計基準の改正案では、いったん企業年金制度の積立不足額をすべてオンバランスさせ(その他包括利益で処理)、その後は現行基準と同様に一定期間内での償却を行う(つまり、リサイクリングの会計処理)が提案されています。このため、貸借対照表における純資産残高や包括利益の合計金額には、毎期生じる期待利回りと実際利回りとの差額がすべて計上されていまうということになります。

年金資産の運用利回りについては、ここ数年ブレが大きく、期待利回りとの乖離も大きかったですが、このような影響を直ちに取り込んでしまう基準の改訂が検討されていることについては、十分留意しておく必要があると考えられます。

2010年4月 9日 (金)

資本市場のグローバル化の中で

今日は、4月6日の日本経済新聞朝刊の一目均衡という記事を見ながら、感じたことを書いてみます。

記事の中では、様々な事例を挙げながら、マネーが国境を越えて動きグローバルに投資機会を選別している様子を伝えています。

とりわけ強調されているのが、「アジアの存在感」です。金融危機以降、先進国経済がなかなか回復できない中で、アジアを含む新興国にマネーがシフトしつつあります。しかし、マネーは、手元にある資本を成長のためにうまく使える市場にしか集まらないのであって、記事はマネーを集めることができない先進国経済に対して警鐘を鳴らしているようにも感じます。

そして、日本企業がアジアで見劣りしない収益力のある企業に変貌を遂げ、世界中のマネーを集められるかどうかが問われているという問題提起で締めくくられています。また、マネーの流れを変えたり、市場の活性化や規制緩和など、政府の役割の大きさについても指摘しています。

今、新聞の株価欄を見ると、年初来最高値を更新する企業が増えており、経済的にもいい傾向が見えつつあるということが言えると思います。しかし、このマネーの出し手は必ずしも日本人とは限らず、世界中のマネーが日本企業に注目している結果とも言える訳です。先日のブログでも取り上げましたが、今後M&A市場がグローバル化していく中で、日本企業を買収のターゲットに考えているマネーも少なくないのではないか?ということも感じるのです。

今日は、会計とは異なる話を書いてみましたが、資本市場のグローバル化に対応し、比較可能性のある投資家に有用な情報を提供するというIFRSのコンセプトをおさらいしつつ、資本市場のグローバル化を身近な問題として捉える必要があるのではないかと感じました。

2010年4月 5日 (月)

企業買収 中国が日本抜く

4月3日(土曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。2009年の世界のM&A市場において、中国による買収額が日本を初めて抜いたことが判明したとのことです。高い経済成長をバックに中国の企業買収が加速する一方で、日米欧は金融危機の影響がなお残っており、M&A市場での中国の存在感が一段と増していく勢いだと記事は伝えています。

調査会社の調べによると、2009年度(2009年4月~2010年3月)の世界のM&A市場は、2兆4,503億ドルで、前年に比べて16%の減少となっていますが、中国の買収額は、2,092億ドルで、前年に比べて37%の増加となっています。M&A市場全体に占める中国のシェアは10%を超えており、中国の存在感がかなり高くなっていることが分かります。

買収対象が欧米企業に広がってきているのも特徴で、特に資源・エネルギー分野での大型買収が目立ちます。その一方で、最近では、浙江吉利控股集団がフォードからボルボブランドを買収するというニュースが伝わってきましたが、今後欧米系の高級ブランドへの進出が加速するかもしれません。

少子高齢化で国内市場に過度な期待を持つことができない日本企業にとっては、成長するアジア市場の開拓は共通の課題となっており、その中で、M&Aを経営戦略にどのように取り入れていけるかということは、競争を勝ち抜くカギであると記事は指摘しています。

その一方で、中国だけでなくインドなど今後高い経済成長を背景にM&A市場でその存在感を伸ばしてくる国は多くなると予想され、日本企業が直面する大きな課題の1つであるということが言えそうです。

2010年3月29日 (月)

厚生年金基金の運営厳しさ増す

3月28日(日曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。企業年金制度の1つである厚生年金基金の年金を受け取る人が増える一方で、保険料を支払う加入者数は減少傾向に歯止めがかからず、年金給付額が保険料収入を超える基金も多数出てきていると記事では指摘しています。

このような現象が起きている背景には、いわゆる「団塊の世代」の方々の年金受給が本格的に始まっているためで、2009年度は厚生年金全体で保険料収入に対する年金給付額の割合が100%を超える(保険料収入<年金給付額の状態になる)公算が高まっており、厚生年金基金の運営はますます厳しさを増していると言えそうです。

以前、このブログでも取り上げたように、厚生年金基金制度は将来の年金額があらかじめ確定している「確定給付型」の年金制度であるため、退職給付会計基準の改正に伴い、将来的には年金制度の積立不足額をすべて負債計上する(引当金計上する)ことが要求される方向となっています。よって、このような年金制度の財政悪化は、企業の財務諸表に大きな影響を与える可能性があるというわけです。

また、厚生年金基金の中には、連合型といわれる年金制度があります。この制度は、特定の業界に属する企業を対象にするケースなど、加入者数が多いことが特徴です。

連合型の厚生年金基金については、加入者が多いため、年金財政に占める自社の持分を計算することが困難であるとして、退職給付会計の適用が除外されている(例外的に、掛金を費用処理し、年金資産額等の注記を行う)ケースが少なくありませんが、この場合においても、将来的に年金財政の悪化が、自社に与える影響を把握しておく必要があると言えそうです。

2010年3月27日 (土)

企業年金の減額検討へ

少し前の新聞記事ですが、3月22日(月曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。ある大手製造業の会社が企業年金の給付額を減らすことで、労働組合側の月内にも合意する見通しになったと記事は伝えています。

具体的には、年金額算定の差異に用いられる給付利率(年金上の利回り)を下げることが検討されているようです。また、現役の従業員の方々の分のみならず、一部のOBの方々も対象になっているとのことで、「経営が比較的健全な大企業が、すでに年金を受け取り始めた退職者も減額の対象に含めるのは珍しい」と記事では指摘されています。

このような取り組みは、年金の給付額を引き下げ財政を安定させることが狙いとなっています。以前、このブログでも書いたように、現在は低金利に加え株価も低迷していることから、年金資産の運用環境が厳しくなっていることに加え、2012年3月期から年金財政の積立不足をすべて貸借対照表に計上する会計基準が導入されることが予定されているためで、今後このような取り組みを行う企業は多くなってくるのではないかと思われます。

実際、この会社のケースにおいても、2009年3月期現在の連結ベースの積立不足額は2000億円近くとなっており(2009年3月期有価証券報告書より)、会計基準が変更されると、これをすべて引当金として計上する必要があるわけですから、財務諸表に与えるインパクトはかなり大きいと考えられます。また、積立不足については、今後の年金資産の運用で取り戻すか追加の掛金によって穴埋めする必要があり、資金的な負担も極めて大きいというわけです。

皆さんの企業の財務諸表に与えるインパクトについても、積立不足額と財務諸表上の引当金(または前払年金費用)の計上額を比較して確認されてはいかがでしょうか。

2010年3月20日 (土)

税制適格退職年金制度の廃止

3月17日(水曜日)の日本経済新聞朝刊の記事からです。多くの企業が加入する税制適格年金が2012年に廃止されることを受けて、企業がその対応に苦慮していると伝えられています。

2009年3月末時点で、適格退職年金に加入している企業は、まだ25,000社も残っているそうです。これらの企業は廃止の時までに次のような制度への変更が必要となっています。

・厚生年金基金…従業員の退職金(年金)に加え、厚生年金の給付の一部を代行する制度も持つ。あらかじめ給付額が約束される確定給付型の制度である。

・確定給付年金…基本的に従業員の退職金(年金)を支給するための制度。これもあらかじめ給付額が約束される確定給付型の制度である。

・確定拠出年金…こちらも基本的に従業員の退職金(年金)を支給するための制度だが、その名の通り、企業は一定の掛金を拠出する責任を負い、拠出された掛金で従業員自らが運用を行わなければならない。

・中小企業退職金共済…こちらも基本的に従業員の退職金を支給するための制度。企業は当初の掛金のみを負担すれば、従業員はあらかじめ約束された給付額を受け取ることができる。ただし、名前の通り、加入できる企業には制限がある。

厚生年金基金や確定給付年金では、資産の運用成果がおもわしくなく、積立不足(年金資産の準備不足)が生じた場合には、企業が追加負担を行う必要があります。この企業の資金負担に加え、2012年3月期からは退職給付会計の改正によって、積立不足の一括処理が求められるようになるため、決算書における財務内容の悪化が懸念されるところです。

その点、確定拠出年金や中小企業退職金共済では、企業の追加負担が発生しないため、資金負担や財務内容の維持という観点からもメリットがあるとされています。

しかし、厚生労働省のアンケート結果では、適格退職年金からの移行先を決定している企業の46%が確定給付年金に移行すると答えているようです。その理由として、適格退職年金も確定給付制度であり、これと、制度の構造が近いとされる確定給付年金を選択するという従業員の皆さんへの配慮が伺えます。

また、運用成績をすべて従業員が負担しなければならない確定拠出年金への移行は、現在の運用環境の低迷を考えると、従業員の方々の同意を取り付けにくいといった問題点もあるようです。(年金制度の移行については、法律上従業員の方々の同意を得る必要があります。)

通常、「検討開始から手続終了までは1年半から2年はかかる」(厚生労働省)とのことですが、どの制度を選択するのかを決めるのは非常に難しい面があるため、早めの検討が必要であることを記事は指摘しています。