会社法(コーポレート・ガバナンス)

2017年3月22日 (水)

経済産業省 CGS研究会報告書を公表

3月10日、経済産業省はCGS(コーポレート・ガバナンス・システム)研究会報告書を公表しました。

このブログでも取り上げているように、会社法の改正、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの策定を通じて、コーポレートガバナンスに関する枠組みの整備が進んでおり、各企業の皆様はガバナンス体制の構築やその実効性の向上に取り組まれていることと思います。
経済産業省は、昨年7月にCGS研究会を立ち上げ、有意義なコーポレートガバナンスの構築・運用に関する取組みについて検討を重ね、今回の報告書の公表に至っています。

報告書では、企業が持続的成長・中長期的な企業価値向上を図る上で、コーポレートガバナンスが鍵を握っている一方で、各企業の取組みにおいて様々な課題が認識されていることを指摘しています。その上で、以下の2つの点を検討の方向性として示しています。

・企業価値向上のために経営戦略の策定が不可欠。それには、CEO(最高経営責任者)や経営陣のみならず、社外の視点や知見も入れて取締役会で検討する必要がある。

・優れたCEO・経営陣を選び、適切なインセンティブを与え、その成果をチェックしていく仕組みを作ることが不可欠である。

その上で、各企業が検討すべきこととして、以下の4点を挙げています。

①取締役会の役割・機能の明確化
 意思決定機能だけでなく監督機能を強化すること
 その前提となる基本的な経営戦略や経営計画を決定すること
 どのような会社(取締役会)を目指すのかを検討することが重要

②社外取締役を活かすための工夫
 社外取締役に期待する役割を明確化すること
 社外取締役のうち少なくとも1名は経営経験者を選任すること
 社外取締役への適切なインセンティブの付与
 社外取締役に関する情報発信

③経営陣の指名・報酬のあり方
 経営陣の指名の在り方
 経営戦略と適合した形での業績連動報酬や自社株報酬の導入
 社外者を中心とする指名・報酬委員会(任意のものを含む)の活用

④経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備
 CEO経験者が相談役・顧問に就任する場合の役割の明確化、処遇の設定、外部への情報発信
  (その検討にあたっては指名・報酬委員会を活用する)

研究会の報告ですので、強制力は持たないものと考えられますが、今後の議論はこの報告書の内容をベースに進んでいくものと考えられ、コーポレートガバナンスの検討に携わっておられる方々にとっては、是非目を通しておくべき報告書と言えそうです。

2017年2月13日 (月)

法務大臣 会社法改正を諮問

2月10日の日本経済新聞朝刊の記事からです。

金田勝年法務大臣は、法制審議会(法務大臣の諮問機関)に対し、会社法の改正を諮問しました。今回改正が検討される課題は、次の通りです。

1.株主総会手続の合理化
 ・株主提案権の乱用的な行使を制限
 ・株主の承諾なく総会資料をインターネット上で提供することを可能に

2.社外取締役の設置義務付け
 ・法律による義務の必要性を検討

3.役員報酬の規定見直し
 ・業績連動型の報酬を支給する際の規定を整備

4.社債の管理規定の見直し
 ・会社法で原則義務付けられている「社債管理者」に関する制度の見直し

このうち、1~3についてはコーポレート・ガバナンスとも関連する論点となります。特に、株主提案権については、株主総会の進行に重大な影響を与えるような株主提案の事例も見受けられ、経済界からはその制限を求める声がある一方、株主提案権は少数株主の権利(利益)を保護する観点からも非常に重要な権利であり、その制限に対しては慎重な声があるようです。

また、株主総会資料のインターネット上での提供については、コーポレートガバナンス・コードでも触れられており(補充原則1-2②)、株主への適時の提供の他、会社側の事務コストの低減も期待されるところです。

社外取締役の選任義務付けについては、有価証券報告書の提出義務がある公開かつ大会社の監査役会設置会社でその選任が行われていない場合には、会社法上「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明・開示が既に求められており(会社法第372条の2、会社法施行規則第74条の2①及び第124条②)、また、コーポ―レートガバナンス・コードにおいても複数の社外取締役を設置すべきとされています(原則4-8)。このようなことから、実質的に強制されている状況ではありますが、今回どのような判断が下されるのか注目されるところです。

取締役の業績連動型報酬については、コーポレートガバナンス・コードでも持続的な成長に向けた健全なインセンティブの1つとして捉えられており(補充原則4-2①)、平成29年度税制改正でも損金算入が認められる範囲を広げる改正が検討される等、その導入が促される傾向にありますが、海外投資家からは報酬決定のプロセスが不透明であるとの指摘もあり、これに対応する検討がなされるとのことです。

2016年3月30日 (水)

日本経団連 事業報告・計算書類等のひな型を改訂

日本経団連は、3月9日に「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を公開しました。

今回の改訂は、2016年1月に改正法務省令が公布されたこと、2016年3月期に企業結合に関する会計基準が全面適用になること等による所要の修正を行ったものとされています。

事業報告及びその附属明細書と株主総会参考書類については、2015年(平成27年)5月1日以後に終了する事業年度から適用となっています。また、計算書類及び連結計算書類については、改正された会計基準の適用時期に合わせてこのひな型を参考にすることができます。

3月決算会社の皆様には大変参考になる資料かと思いますので、是非ご活用ください。

2015年6月 8日 (月)

東証 コーポレートガバナンス・コードを策定へ

東京証券取引所は、有価証券上場規程等の一部改正を行い、6月1日から施行しました。今回の改正は、新聞等でも取り上げられている「コーポ―レートガバナンス・コード」(以下、CGコード)の策定に伴うものとなっています。

1.CGコードの狙いは?

コーポレートガバナンスという言葉からは、リスクの回避・抑制や不祥事の防止といった企業にマイナスの状況が起きることを防止するというイメージを持たれる方が多いのではないかと思います。しかし、今回のCGコード策定の狙いとして、実効的なコーポレートガバナンスの実現により、経営者の健全な企業家精神の発揮を後押しすることが主眼とされているようです。
私なりの解釈ですが、コーポレートガバナンスの整備=経営者が自信を持って経営判断をし、その経営判断を投資家をはじめとする利害関係者に説明していく体制が整備されるということではないかと考えます。

2.プリンシプルベース・アプローチとコンプライ・オア・エクスプレイン

CGコードの説明の際によく用いられる表現ですが、プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)とは、CGコードに記載されている各原則について、その趣旨や精神に照らして、自社の活動が原則に即しているかどうかの判断が求められることを意味するそうです。その上で、原則に即していない場合には、その理由を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも許容されるとされています。これが「コンプライ・オア・エクスプレイン」という考え方です。これは、企業側に極めて高度な判断を要求することになるため、今後の運用が注目されるところです。

3.CGコードの構成

CGコードは大きく5つの章から構成されており、基本原則(5)・原則(30)・補充原則(38)が用意されています。

第1章 株主の権利・平等性の確保
第2章 株主の平等な取扱い
第3章 株主以外のステークホルダーの役割
第4章 開示と透明性
第5章 取締役会の責任

今回は、1つ1つの内容についてご紹介できませんが、一度原文を読まれることをお薦めします。
コーポレートガバナンス・コードとは?(東京証券取引所のホームページへ)

4.コーポレート・ガバナンスに関する報告書

コーポレート・ガバナンスに関する報告書は従前から用意されていたものですが、コーポレートガバナンス・コードの策定に伴い、その記載内容が一部改正されています。
コーポレート・ガバナンスに関する報告書とは?(東京証券取引所のホームページより)

(1)コードの各原則を実施しない理由

コンプライ・オア・エクスプレインの所で触れましたが、CGコードの原則に従うことは必ずしも強制されているものではありませんが、従わない場合には、従わない理由をコーポレート・ガバナンスに関する報告書で説明することが求められます。CGコードの各原則において何が要求されているのかを整理しておくことが非常に重要になってきます。
1つの事例ですが、原則4-8では「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」とされています。独立社外取締役が1名しかいらっしゃらない企業のケースでは、なぜ原則に従っていないのかを説明することになるものと思われます。

(2)コードの各原則に基づく開示

CGコードの各原則の中で、企業に開示を求めている項目が数多くあります。具体的には、以下の項目をコーポレート・ガバナンスに関する報告書において開示する必要があります。

【原則1-4】
・上場株式の政策保有に関する方針
・政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準

【原則1-7】
・関連当事者間の取引を行う場合の、取引の重要性や取引の性質に応じた適切な手続き(枠組み)

【原則3-1】
・会社の経営理念、経営戦略、経営計画等
・コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
・取締役会が経営幹部、取締役の報酬を決定する際の方針、手続
・取締役会が経営幹部の選任や取締役・監査役候補者の指名を行うに当たっての方針、手続(個々の選任・指名についての説明を含む)

【補充原則4-1①】
・取締役会の経営陣に対する委任の範囲

【原則4-8】
取締役会メンバーの1/3以上を独立社外取締役とすることが必要と考えている場合、そのための取組方針

【原則4-9】
独立社外取締役の独立性を担保するための判断基準

【補充原則4-11①】
取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性、規模に関する考え方

【補充原則4-12②】
取締役・監査役の他の上場会社の役員の兼任状況

【補充原則4-11③】
取締役会全体の実効性についての分析・評価結果

【補充原則4-14②】
取締役・監査役に対するトレーニングの方針

【原則5-1】
株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組に関する方針

既に方針や考え方が用意されている項目も多いように思われますが、外部に開示するとなると、慎重に検討する必要があるものも多そうです。

今回の改正を踏まえたコーポレートガバナンスに関する報告書の提出期限は、6月1日以降最初に開催される定時株主総会の日から6か月を経過する日までとなっていますので、3月決算企業の場合、年内までの提出が1つの目安になりそうです。

【参考文献】
コーポ―レートガバナンス・コード原案の策定について
(油布志行 会計・監査ジャーナル 2015年7月号)

2015年3月 9日 (月)

グループ内部統制に関する会社法改正

今年の5月1日より改正会社法及び改正会社法施行規則が施行されることとなりました。その中で、いわゆるグループ内部統制に関する規定の見直しが行われています。

内部統制システムの整備・運用は取締役(個人)に委ねることができない業務であり、大会社においては取締役会の決議を必要とされていますが、この点は変更ありません。

改正前の規定では、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」を整備・運用することが求められていました。(改正前会社法施行規則100条)

改正後の規定では、「株式会社及びその子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」を整備・運用することが会社法本文(改正後会社法348条③四)において求められ、その具体的な内容が会社法施行規則で定められるという構成に変わっています。

改正後の会社法施行規則で定められているグループ内部統制に関する事項としては、以下のようなものがあります。

①子会社の取締役等の職務の執行に係る事項(職務執行情報)の報告に関する体制

②子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制(リスク管理体制)

③子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

④子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(コンプライアンス体制)

⑤子会社の取締役等及び使用人から報告を受けた者が自社の監査役に報告するための体制(子会社の内部通報情報が自社の監査役に伝達されることを想定しているものと思われる)

⑥⑤の報告をした者が報告を行ったことを理由に不利益を受けないことを確保するための体制

今回の改正において求められるのは、子会社が具体的にどのような体制を持っているかを明確にすることではなく、それぞれの事項に対し親会社としての関与があるかどうか、また、関与がある場合には、具体的にどのような関与の体制となっているかを明確にすることであると解されているようです。

従って、子会社における内部統制システムを整備する義務や子会社を監督する義務を定めたものではないと説明されていますが、十分な関与がないままに、子会社に問題が生じ、その結果、自社または子会社に損害等が生じた場合には、自社の取締役が善管注意義務違反に問われる可能性に留意する必要があると考えられます。

(参考文献)
「グループ内部統制について」(石井裕介 会計・監査ジャーナル No.715 2015年2月号)

2015年2月23日 (月)

東証 社外取締役の複数選任ルールを策定へ

(2月22日付日本経済新聞朝刊より)

東京証券取引所は、社外取締役の2名以上選任するように促す上場規則案をまとめたとのことです。もし2名以上の社外取締役を選任しない場合には、株主総会後にその理由を説明する義務を企業に課し、説明がない場合には罰則を適用する方針とのことです。

新しい上場規則は今年の6月1日から適用され、東証1部・2部に上場する約2,400社が対象となる見込みとのことです。今年の株主総会で社外取締役を複数選任しない場合には、何らかの開示が求められる可能性があり、今後の動向に注目が必要です。

2014年12月29日 (月)

コーポレートガバナンス・コード原案を読んで②

4.非執行取締役・独立社外取締役の活用
 原案では、非執行取締役や独立社外取締役の活用について、以下のような記述があります。

【原則4-6.経営の監督と執行】
 上場会社は、取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保すべく、業務の執行には携わらない、業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用について検討すべきである。

【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】
 上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。
 (ⅰ) 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点から助言を行うこと (ⅱ) 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
  (ⅲ) 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
 (ⅳ) 経営陣・支配株主等から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】
 独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。(以下、省略)

 一言で言えば、社内の執行取締役のみで取締役会メンバーが構成されている状況で、前述の取締役会に求められる役割・責務を達成することが可能かどうかということを各企業が議論することが求められます。
 もし、非執行取締役や独立社外取締役を活用せずともそれが達成できるということであれば、どのようにして達成するのか(なぜ達成できるのか)ということを説得力をもってステークホルダーに説明(Explain)することが求められますから、真剣な議論が必要となることは言うまでもありません。

5.監査役及び監査役会の役割・責務
 原案では、監査役(会)の役割・責務についても、以下のように言及されています。

【原則4-4.監査役及び監査役会の役割・責務】
 監査役及び監査役会は、取締役の職務の執行の監査、外部会計監査人の選解任や監査報酬に係る権限の行使などの役割・責務を果たすに当たって、株主に対する受託者責任を踏まえ、独立した客観的な立場において適切な判断を行うべきである。
 また、監査役及び監査役会に期待される重要な役割・責務には、業務監査・会計監査をはじめとするいわば「守りの機能」があるが、こうした機能を含め、その役割・責務を十分に果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切でなく、能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきである。

 記載されている内容は、これまでの監査役の役割・責務に関する議論を踏まえた内容となっており、より積極的にコーポレートガバナンスに参加することが求められているかと思います。
 さらに、補充原則4-4①では、「監査役または監査役会は、社外取締役が、その独立性に影響を受けることなく情報収集力の強化を図ることができるよう、社外取締役との連携を確保すべきである。」との記述があります。
 このように、主として監査役に期待されている「守りの側面」と主として社外取締役に期待されている「攻めの側面」が融合することによって、より充実したコーポレートガバナンスが構築されることが期待されていると考えられるのではないでしょうか。

(おわり)

2014年12月26日 (金)

コーポレートガバナンス・コード原案を読んで①

 12月12日、金融庁(コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議)は、「コーポレートガバナンス・コード原案 ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために~」(以下、「原案」)を公表しました。
 今回は、特に会社の機関設計の部分を中心に、原案は上場企業に何を求めているのかについて考察したいと思います。

1. コードの目的

 コーポレートガバナンス・コードを設定する目的として、以下のような記述があります。

 本コード(原案)では、会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面を過度に強調するのではなく、むしろ健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼をおいている。

 仮に、会社においてガバナンスに関する機能が十分に働かないような状況が生じれば、経営の意思決定過程の合理性が確保されなくなり、経営陣が、結果責任を問われることを懸念して、自ずとリスク回避的な方向に偏るおそれもある。こうした状況の発生こそが会社としての果断な意思決定や事業活動に対する阻害要因となるものであり、本コード(原案)では、会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、経営陣をこうした制約から解放し、健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えることを目的としている。

 以前にこのブログでも触れましたが、コーポレートガバナンスにはいわゆる「攻めの側面」と「守りの側面」があり、今回コードが検討されている背景として、「攻めの側面」が強調されています。この点は、今後コードが導入されていくにあたって、各企業の経営者の方々が十分に認識しておくことが重要ではないかと考えます。

2. 「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」

 原案では、原則主義(プリンシプルベース・アプローチ)の考え方を採用し、法的拘束力を有する規範ではなく、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)のアプローチを採用しているとされています。
 しかし、とかく横並び意識が強い日本において、原則を実施しない理由を説明した場合に、それがきちんと受け止められるかどうかは個人的に懸念を感じます。
 そういう意味では、実質的に何らかの拘束力を有するものとなってしまう可能性があり、原案においても株主等のステークホルダーがこのアプローチの趣旨を理解し、会社の個別の状況を十分に尊重することが求められることを指摘しています。

3.コードの構成

 原案では、次の5つの観点から基本原則を定め、それぞれについてより詳細な原則及び補充原則を定めるという構成が採用されています。

【5つの基本原則】
 ①株主の権利・平等性の確保
 ②株主以外のステークホルダーとの適切な協働
 ③適切な情報開示と透明性の確保
 ④取締役会等の責務
 ⑤株主のとの対話

 この中で、会社の機関設計と関係が深いのが「④取締役会等の責務」の部分です。上場会社の取締役会に求められる役割・責務として、特に以下の3つが強調されています。

①企業戦略等の大きな方向性を示すこと
②経営陣に幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
③独立した客観的な立場から、経営陣に対する実効性の高い監督を行うこと

 これら3つが達成されることにより、企業の持続的成長や企業価値の向上に資するような積極的な経営判断が促され、より透明度の高い形で実現されていく姿をイメージしていると考えられます。

(次回につづく)

2014年12月15日 (月)

社外取締役の複数選任と監査等委員会設置会社への移行

(12月8日付日本経済新聞朝刊より)

 東京証券取引所が中心となって、来年6月を目途に企業統治コード(規範)の制定を進めています。その中で「社外取締役の複数選任」というテーマがクローズアップされています。
 仮にすべての上場企業が複数の社外取締役を置いた場合、約5,000人の社外取締役が新たに必要になるとの試算もあり、人材の確保は制度導入にあたっての大きなテーマの1つとなります。
 この点について、監査等委員会設置会社(従来の監査役(会)制度を廃止し、取締役会の中に非執行取締役である監査等委員を選任する方式。監査等委員の過半数は社外取締役であることが求められる。)への移行が促進されれば、問題は解決するという意見もあるようです。

 確かに、そのような解決策は現実的であると思われますが、そもそも社外取締役と社外監査役ではその役割に対して期待されている内容は異なるはずで、社外監査役が社外取締役にスライドすれば問題は解決するという意見には多少疑問を感じます。
 もう少し具体的に言えば、監査等委員会の任務は「監査等」になるわけです。この「等」がポイントで、これは取締役の監督すなわち経営判断の妥当性をチェックすることを意味します。
 監査役監査においても、この経営判断の妥当性に踏み込んだ監査をすべきかどうかは議論のあるところですが、少なくとも法律上要求された業務内容ではありません。従って、社外監査役の立場からすれば、これまでの任務(責任)にプラスアルファのものが加わる訳で、しかもそのプラスアルファはかなり大きな意味を持つと個人的には思います。

 社外監査役に対する期待と社外取締役に対する期待の違いについては、以前このブログでも取り上げましたが、監査等委員会設置会社はその両方の機能を持つ機関であると言えると思います。その機関をきちんと機能させるためにも、しっかりとした制度設計が重要ではないかと思います。

2014年9月15日 (月)

公認会計士たる監査役に期待される役割

去る9月4日、東京の新高輪プリンスホテルで日本公認会計士協会の研究大会が開催されました。非常に興味深いテーマの研究発表やパネルディスカッションが行われ、私も参加してきました。

午前・午後で2つのテーマの発表に参加できるのですが、午前中は「公認会計士たる監査役に期待される役割」に関するパネルディスカッションに参加しました。

このパネルディスカッションでは、特にリスクマネジメントと監査役の役割の関係が話題の中心となりましたが、私の印象に残ったお話をまとめてみたいと思います。


①ビジネスリスクへの対応

 どういうリスクを認識し、どういう対処(排除・低減・移転・受容)をしたのかということを明確にする=意思決定プロセスの妥当性を監査することが重要。

 監査役は、車を上手く走らせるためのブレーキでなければならない。

②ガバナンスリスクへの対応

 必要な監視体制(モニタリングシステム)が構築できているかの監査が重要。(人は見られていると感じれば慎重になる)

 情報(特に、悪い情報)が監査役に集まる体制をどのように構築するのかがポイント。

 自分が必要な情報を持っているかどうかを自己評価しなければならない。

③ディスクロージャーリスクへの対応

 開示制度はどんどん複雑化しており、いわばプロの世界になりつつある=適切に運用することが難しくなっているという認識が重要

 監査役と会計監査人の連携の重要性 → 連携するためには相互信頼がなけれがならない(意識を変える必要性)


 目新しい話はなかったかもしれませんが、公認会計士である自分が監査役の職務をやらせて頂いて感じているのは、会計・税務・ディスクロージャーといった自分の仕事に関係のあるリスクだけでなく、会社を取り巻く様々なリスクに適切に対応できているかどうかをチェックすることが非常に重要だということです。

 今回のパネルディスカッションはそのことを再認識するよい機会となったように思います。