会社法(コーポレート・ガバナンス)

2018年3月19日 (月)

上場企業、後継経営者の育成進まず?

前回のブログでも取り上げましたが、取締役会の重要な役割の1つとして、「後継経営者の育成」が取り上げられるようになりました。

コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)においても

【補充原則 4-1③】
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。

という項目があります。

3月6日の日本経済新聞朝刊の記事によると、経済産業省が東証1部・2部上場企業を対象に調査を実施(約1,000社が回答)したところによると、約80%の企業が計画に関する文書が「存在しない」「存在するか分からない」と回答し、「計画に関する文書が存在する」と回答した企業は約10%だったとのことです。

経済産業省が実施した調査結果は、経済産業省のホームページで公開されており、この内容を見てみることにしました。(この調査は、後継経営者の計画以外の項目についても調べられており、なかなか興味深いので、またこのブログでも取り上げられたらと思います。)

実は、昨年東京証券取引所が調査したところによると、全体の90%弱の企業がCGコードの補充原則4-1③を実施していると回答しており、この結果と先程の経済産業省の調査の結果をどう整合的に考えるのか?ということは重要なポイントと言えそうです。調査の自由回答から浮かび上がってくるのは、

・計画は存在するが、文書化までは実施していない。
・漠然とこんな感じで後継者を育成していくというものがある。
・文書としては存在しないが、社長・CEOの頭の中にはある。
・諮問委員会で議論されており、その内容が取締役会に報告されている。

というあたりでしょうか。これをもってCGコードをクリアしていると言えるかどうかの議論は他に譲りたいと思います(笑)

また、後継者計画が文書化されていると回答された企業についても、以下の特徴が浮かび上がってきています。

・計画を取締役会メンバー全体が共有していると回答した企業は約50%(社長・CEOのみが共有している企業が多い。)

・後継者計画の監督を取締役会が実施していると回答した企業は25%(指名委員会(任意のもの含む)が監督している企業が多い。)

・後継者に求める資質・スキル・経験・人材像等の定義を文書化している企業が75%ある一方で、選定プロセス・育成計画・評価基準といった具体的なアクションの部分を文書化している企業は約50%
 →この点については、後継者計画の内容の充実が必要ではないかとの指摘がなされています。

一方、文書化されていない企業について、その理由を調査したところでは、約50%の企業が、「後継者については、社長・CEO等経営陣の意向が尊重されるため」と回答しており、依然として、後継者人事は社長の重要な仕事となっていると思われます。

また、約50%の企業が、取締役会で議論が不足している事項として、「社長・CEOの後継者計画・監督」を取り上げており、このテーマについては、各企業で試行錯誤が続いているのではないかと感じられました。






2018年3月12日 (月)

取締役会の役割とは?

コーポレートガバナンス・コードの導入により、取締役会の役割が改めて問い直されています。

2月20日の日本経済新聞朝刊で、株式会社プロネッド社長の酒井功氏は、以下のように述べられています。

多くの取締役会は、いわば「個別案件処理型」の取締役会であり、執行側から次々の上がってくる個別案件を粛々と処理している。こうした会社では、実質的な議論は社外取締役が参加しない別の会議体(経営会議など)で済ませており、社外取締役は、取締役に参加していても実質的に意思決定に影響を及ぼしているとは言い難い。

社外取締役に期待されているのは、社内や業界の常識にとらわれない客観的で合理的な視点の提供である。そのため、会社の取締役会は、「経営課題重視型」の取締役会にシフトすることが求められる。

「経営課題重視型」の取締役会の主要な役割とは、以下の7つである。
  ① 中期経営計画(経営戦略)の策定と実施状況の監督
  ② コンプライアンス(法令順守)とリスクマネジメントのモニタリング
  ③ サステナビリティ(CSR)の観点からのモニタリング
  ④ 社長の年次評価
  ⑤ 社長の後継者計画
  ⑥ 役員報酬の決定
  ⑦ 取締役の指名

酒井氏は、特に④と⑤の重要性を指摘されており、急速に変化する経営環境の中で、企業価値の向上と持続的な成長を実現するための最適な人材を社長として選任し、その経営執行をモニタリングすることが不可欠であると述べられています。

もちろん、上記の取締役会の主要な役割は1つの考え方であり、それぞれの会社によって取締役会の果たすべき役割は異なるとも述べられています。大切なことは、「それぞれの会社が取締役会が果たすべき役割を定義し、定義に沿った議案を審議すること。」と述べられている点はとても共感しました。

2018年3月 5日 (月)

「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正

1月25日、日本監査役協会と日本公認会計士協会は、「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」(以下、研究報告)の改正を公表しました。

1.改正の背景

今回の改正の背景として、以下の点が挙げられています。

(1) 平成27年5月施行の改正会社法において、会計監査人の独立性確保の観点から以下の改正が行われたこと。
 会計監査人の選解任等に関する議案の内容は監査役等が決定
 公開会社において、監査役等が会計監査人の報酬等について同意した理由を事業報告に記載

(2) コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)において、適正な監査の確保に向け、監査人の監査環境の整備に対する取締役会及び監査役等の以下の責務が原則に明記されたこと。
 監査役等による監査人の選定・評価基準の策定
 監査人の十分な監査時間の確保
 監査人の経営幹部へのアクセスの確保
 監査人による監査役等、内部監査部門、社外取締役との十分な連携の確保
 監査人の指摘等に対する会社側の対応体制の確立
※この点について、日本監査役協会は「監査役監査基準」等を改正し、日本公認会計士協会は監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」の改正を行っています。

(3) 組織としての監査の品質確保に向けた「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)が公表され、監査法人が被監査会社の経営幹部及び監査役等と監査上のリスクの認識や理解の共有等を通じて率直かつ深度ある意見交換を尽くし、会計監査の品質の持続的な向上に向けた取り組みについて、関係者への分かりやすい説明と積極的な意見交換を行うことが規定されたこと。

2.研究報告の位置付け

今回の改正により、研究報告の位置付けが大きく変わるものではありませんが、以下の点が明記されており、改めて監査の重要性が指摘されています。

監査役等と監査人は、それぞれ監査をその職務とし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担い、その職務を通じて企業不祥事の発生防止をはじめとした企業活動の健全化を図り、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に貢献している。

なお、近年では子会社等における不祥事が目立ってきており、企業集団の観点からのコーポレート・ガバナンスの考え方が重要となってきている。監査役等と監査人の連携を考える上においても、企業集団の観点は重要であり、本研究報告記載の連携を行うに際しても同様である。また、本研究報告は監査役等と監査人との連携についてまとめているが、監査全般の実効性向上に向けて、内部監査部門等監査に携わる他の関係者も含めた連携が重要である。

3.主な改正点

以下、今回の改正内容の中で、特に重要と思われる点を列挙します。

(1) 監査役等と監査人との連携と効果

以下の点が、追記されています。

会社法において、監査役等には会計監査人の選解任に関する議案内容の決定権や監査報酬の同意権が付与されており、また、CGコードにおいて会計監査人の適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うことが求められているが、これらは監査役等と監査人の連携が前提となること。

双方の監査において得られた情報は、相手の監査においても有用であり、監査の実効性・有効性・効率性を高めるためにも相互の連携を強化することが求められること。

監査役等と監査人との適切な連携には相互の信頼関係を基礎としながら、相互の改善点などについて随時意見交換を行うなど、緊張感のある協力関係の下でコミュニケーションを図ることが不可欠であること。

企業活動が大規模かつ複雑になっていることから、リスク・アプローチによる監査を適切に行うために、双方が保有するリスク情報を共有し、適切なリスクの把握に繋げることが期待されること。

(2) 情報・意見交換事項

以下の点が、追記されています。

情報提供(監査人から監査役への報告事項を含む)の範囲を協議・決定するにあたって、直近の課題のみならず、将来への影響を勘案するとともに会計上の課題やコーポレート・ガバナンス、内部統制または業務プロセスにおける課題等も含め、幅広いコミュニケーションとなるよう検討すべきである。

また、その例示として、以下の項目が追加されています。

①監査契約の新規締結時
・監査人の状況及び品質管理体制
  監査チーム組成に際しての考え方(グループ監査の体制を含む)
  監査品質に関わる事項(例.透明性報告書等に記載のある事項)

②監査契約の更新時
・監査人の再任に際しての監査役等の評価結果の概要と要望事項

③監査計画の策定時
・監査人による監査計画
  特別な検討を必要とするリスクの状況とその対応
  親会社監査人から子会社監査人に対する指示の状況を含む、グループ内の監査人間の情報提供の頻度や方法
  内部統制の評価の方法及び実施時期(グループを含む)
  監査スケジュール(特に期末監査期間)

・監査役等による監査方針及び監査計画
  企業集団としての監査体制(企業集団の構成会社のリスク評価、内部統制の整備・運用状況、企業集団内の情報共有などの連携体制等)

④四半期レビュー時
・四半期レビューの実施状況について、当初の四半期レビュー計画と相違する場合は、相違点と監査(レビュー)時間に与える影響等
・特別な検討を必要とするリスクの状況と四半期レビュー計画に与える影響

⑤期末監査時
・監査人の監査の実施状況について、当初の監査計画と相違する場合は、相違点と監査時間に与える影響等
・特別な検討を必要とするリスクの状況とその対応

⑥随時
・事業所及び子会社への監査人の往査結果等
・監査人の監査計画の重要な修正について、相違点と監査時間に与える影響等

既に、実務において情報・意見交換されている内容も多いと思われますが、あらためてご確認ください。
公認会計士である社外監査役等は、監査人の皆さんとのコミュニケーションが円滑なものとなるように努力しないといけないと再認識しました。

2018年2月28日 (水)

コーポレートガバナンス・コードの改正動向

最近の日本経済新聞の記事からです。

2月15日の朝刊では、金融庁は2018年版のコーポレートガバナンス・コードの中で、以下の改正を検討しているとの記事がありました。

・上場企業の取締役に占める社外取締役の割合を3分の1以上に
・最高経営責任者(CEO)の選解任手続きも社外から分かりやすい仕組みに
・政策保有株式の保有に対する説明をより詳細に

また、2月28日の朝刊では、女性取締役の登用を求める方向性の改正も検討されているとの記事もありました。

外部の声を取り入れたり、取締役会メンバーのダイバーシティ(多様化)を進めたり、株主構成の変化を求めたりすることで、経営の透明性を高めたり、活性化させたいという金融庁の方向性が感じられますね。

特に、最高経営責任者(CEO)の選任手続きについては、現在の経営トップが後任を指名するという慣行が不透明であり、企業不祥事の一因になっているとの考えもあるようです。

一連の動きが目指すところは理解できる部分もあるのですが、一部企業の不祥事を例に持ち出すまでもなく、形式だけ整えても十分ではないということは明らかだと思います。

「実態を伴ったコーポレートガバナンスというのはどういうものなのか?」、各企業もまだまだ手探りの状況が続いているのではないでしょうか。

2017年3月22日 (水)

経済産業省 CGS研究会報告書を公表

3月10日、経済産業省はCGS(コーポレート・ガバナンス・システム)研究会報告書を公表しました。

このブログでも取り上げているように、会社法の改正、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの策定を通じて、コーポレートガバナンスに関する枠組みの整備が進んでおり、各企業の皆様はガバナンス体制の構築やその実効性の向上に取り組まれていることと思います。
経済産業省は、昨年7月にCGS研究会を立ち上げ、有意義なコーポレートガバナンスの構築・運用に関する取組みについて検討を重ね、今回の報告書の公表に至っています。

報告書では、企業が持続的成長・中長期的な企業価値向上を図る上で、コーポレートガバナンスが鍵を握っている一方で、各企業の取組みにおいて様々な課題が認識されていることを指摘しています。その上で、以下の2つの点を検討の方向性として示しています。

・企業価値向上のために経営戦略の策定が不可欠。それには、CEO(最高経営責任者)や経営陣のみならず、社外の視点や知見も入れて取締役会で検討する必要がある。

・優れたCEO・経営陣を選び、適切なインセンティブを与え、その成果をチェックしていく仕組みを作ることが不可欠である。

その上で、各企業が検討すべきこととして、以下の4点を挙げています。

①取締役会の役割・機能の明確化
 意思決定機能だけでなく監督機能を強化すること
 その前提となる基本的な経営戦略や経営計画を決定すること
 どのような会社(取締役会)を目指すのかを検討することが重要

②社外取締役を活かすための工夫
 社外取締役に期待する役割を明確化すること
 社外取締役のうち少なくとも1名は経営経験者を選任すること
 社外取締役への適切なインセンティブの付与
 社外取締役に関する情報発信

③経営陣の指名・報酬のあり方
 経営陣の指名の在り方
 経営戦略と適合した形での業績連動報酬や自社株報酬の導入
 社外者を中心とする指名・報酬委員会(任意のものを含む)の活用

④経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備
 CEO経験者が相談役・顧問に就任する場合の役割の明確化、処遇の設定、外部への情報発信
  (その検討にあたっては指名・報酬委員会を活用する)

研究会の報告ですので、強制力は持たないものと考えられますが、今後の議論はこの報告書の内容をベースに進んでいくものと考えられ、コーポレートガバナンスの検討に携わっておられる方々にとっては、是非目を通しておくべき報告書と言えそうです。

2017年2月13日 (月)

法務大臣 会社法改正を諮問

2月10日の日本経済新聞朝刊の記事からです。

金田勝年法務大臣は、法制審議会(法務大臣の諮問機関)に対し、会社法の改正を諮問しました。今回改正が検討される課題は、次の通りです。

1.株主総会手続の合理化
 ・株主提案権の乱用的な行使を制限
 ・株主の承諾なく総会資料をインターネット上で提供することを可能に

2.社外取締役の設置義務付け
 ・法律による義務の必要性を検討

3.役員報酬の規定見直し
 ・業績連動型の報酬を支給する際の規定を整備

4.社債の管理規定の見直し
 ・会社法で原則義務付けられている「社債管理者」に関する制度の見直し

このうち、1~3についてはコーポレート・ガバナンスとも関連する論点となります。特に、株主提案権については、株主総会の進行に重大な影響を与えるような株主提案の事例も見受けられ、経済界からはその制限を求める声がある一方、株主提案権は少数株主の権利(利益)を保護する観点からも非常に重要な権利であり、その制限に対しては慎重な声があるようです。

また、株主総会資料のインターネット上での提供については、コーポレートガバナンス・コードでも触れられており(補充原則1-2②)、株主への適時の提供の他、会社側の事務コストの低減も期待されるところです。

社外取締役の選任義務付けについては、有価証券報告書の提出義務がある公開かつ大会社の監査役会設置会社でその選任が行われていない場合には、会社法上「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明・開示が既に求められており(会社法第372条の2、会社法施行規則第74条の2①及び第124条②)、また、コーポ―レートガバナンス・コードにおいても複数の社外取締役を設置すべきとされています(原則4-8)。このようなことから、実質的に強制されている状況ではありますが、今回どのような判断が下されるのか注目されるところです。

取締役の業績連動型報酬については、コーポレートガバナンス・コードでも持続的な成長に向けた健全なインセンティブの1つとして捉えられており(補充原則4-2①)、平成29年度税制改正でも損金算入が認められる範囲を広げる改正が検討される等、その導入が促される傾向にありますが、海外投資家からは報酬決定のプロセスが不透明であるとの指摘もあり、これに対応する検討がなされるとのことです。

2016年3月30日 (水)

日本経団連 事業報告・計算書類等のひな型を改訂

日本経団連は、3月9日に「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を公開しました。

今回の改訂は、2016年1月に改正法務省令が公布されたこと、2016年3月期に企業結合に関する会計基準が全面適用になること等による所要の修正を行ったものとされています。

事業報告及びその附属明細書と株主総会参考書類については、2015年(平成27年)5月1日以後に終了する事業年度から適用となっています。また、計算書類及び連結計算書類については、改正された会計基準の適用時期に合わせてこのひな型を参考にすることができます。

3月決算会社の皆様には大変参考になる資料かと思いますので、是非ご活用ください。

2015年6月 8日 (月)

東証 コーポレートガバナンス・コードを策定へ

東京証券取引所は、有価証券上場規程等の一部改正を行い、6月1日から施行しました。今回の改正は、新聞等でも取り上げられている「コーポ―レートガバナンス・コード」(以下、CGコード)の策定に伴うものとなっています。

1.CGコードの狙いは?

コーポレートガバナンスという言葉からは、リスクの回避・抑制や不祥事の防止といった企業にマイナスの状況が起きることを防止するというイメージを持たれる方が多いのではないかと思います。しかし、今回のCGコード策定の狙いとして、実効的なコーポレートガバナンスの実現により、経営者の健全な企業家精神の発揮を後押しすることが主眼とされているようです。
私なりの解釈ですが、コーポレートガバナンスの整備=経営者が自信を持って経営判断をし、その経営判断を投資家をはじめとする利害関係者に説明していく体制が整備されるということではないかと考えます。

2.プリンシプルベース・アプローチとコンプライ・オア・エクスプレイン

CGコードの説明の際によく用いられる表現ですが、プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)とは、CGコードに記載されている各原則について、その趣旨や精神に照らして、自社の活動が原則に即しているかどうかの判断が求められることを意味するそうです。その上で、原則に即していない場合には、その理由を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも許容されるとされています。これが「コンプライ・オア・エクスプレイン」という考え方です。これは、企業側に極めて高度な判断を要求することになるため、今後の運用が注目されるところです。

3.CGコードの構成

CGコードは大きく5つの章から構成されており、基本原則(5)・原則(30)・補充原則(38)が用意されています。

第1章 株主の権利・平等性の確保
第2章 株主の平等な取扱い
第3章 株主以外のステークホルダーの役割
第4章 開示と透明性
第5章 取締役会の責任

今回は、1つ1つの内容についてご紹介できませんが、一度原文を読まれることをお薦めします。
コーポレートガバナンス・コードとは?(東京証券取引所のホームページへ)

4.コーポレート・ガバナンスに関する報告書

コーポレート・ガバナンスに関する報告書は従前から用意されていたものですが、コーポレートガバナンス・コードの策定に伴い、その記載内容が一部改正されています。
コーポレート・ガバナンスに関する報告書とは?(東京証券取引所のホームページより)

(1)コードの各原則を実施しない理由

コンプライ・オア・エクスプレインの所で触れましたが、CGコードの原則に従うことは必ずしも強制されているものではありませんが、従わない場合には、従わない理由をコーポレート・ガバナンスに関する報告書で説明することが求められます。CGコードの各原則において何が要求されているのかを整理しておくことが非常に重要になってきます。
1つの事例ですが、原則4-8では「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」とされています。独立社外取締役が1名しかいらっしゃらない企業のケースでは、なぜ原則に従っていないのかを説明することになるものと思われます。

(2)コードの各原則に基づく開示

CGコードの各原則の中で、企業に開示を求めている項目が数多くあります。具体的には、以下の項目をコーポレート・ガバナンスに関する報告書において開示する必要があります。

【原則1-4】
・上場株式の政策保有に関する方針
・政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準

【原則1-7】
・関連当事者間の取引を行う場合の、取引の重要性や取引の性質に応じた適切な手続き(枠組み)

【原則3-1】
・会社の経営理念、経営戦略、経営計画等
・コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
・取締役会が経営幹部、取締役の報酬を決定する際の方針、手続
・取締役会が経営幹部の選任や取締役・監査役候補者の指名を行うに当たっての方針、手続(個々の選任・指名についての説明を含む)

【補充原則4-1①】
・取締役会の経営陣に対する委任の範囲

【原則4-8】
取締役会メンバーの1/3以上を独立社外取締役とすることが必要と考えている場合、そのための取組方針

【原則4-9】
独立社外取締役の独立性を担保するための判断基準

【補充原則4-11①】
取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性、規模に関する考え方

【補充原則4-12②】
取締役・監査役の他の上場会社の役員の兼任状況

【補充原則4-11③】
取締役会全体の実効性についての分析・評価結果

【補充原則4-14②】
取締役・監査役に対するトレーニングの方針

【原則5-1】
株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組に関する方針

既に方針や考え方が用意されている項目も多いように思われますが、外部に開示するとなると、慎重に検討する必要があるものも多そうです。

今回の改正を踏まえたコーポレートガバナンスに関する報告書の提出期限は、6月1日以降最初に開催される定時株主総会の日から6か月を経過する日までとなっていますので、3月決算企業の場合、年内までの提出が1つの目安になりそうです。

【参考文献】
コーポ―レートガバナンス・コード原案の策定について
(油布志行 会計・監査ジャーナル 2015年7月号)

2015年3月 9日 (月)

グループ内部統制に関する会社法改正

今年の5月1日より改正会社法及び改正会社法施行規則が施行されることとなりました。その中で、いわゆるグループ内部統制に関する規定の見直しが行われています。

内部統制システムの整備・運用は取締役(個人)に委ねることができない業務であり、大会社においては取締役会の決議を必要とされていますが、この点は変更ありません。

改正前の規定では、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」を整備・運用することが求められていました。(改正前会社法施行規則100条)

改正後の規定では、「株式会社及びその子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」を整備・運用することが会社法本文(改正後会社法348条③四)において求められ、その具体的な内容が会社法施行規則で定められるという構成に変わっています。

改正後の会社法施行規則で定められているグループ内部統制に関する事項としては、以下のようなものがあります。

①子会社の取締役等の職務の執行に係る事項(職務執行情報)の報告に関する体制

②子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制(リスク管理体制)

③子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

④子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(コンプライアンス体制)

⑤子会社の取締役等及び使用人から報告を受けた者が自社の監査役に報告するための体制(子会社の内部通報情報が自社の監査役に伝達されることを想定しているものと思われる)

⑥⑤の報告をした者が報告を行ったことを理由に不利益を受けないことを確保するための体制

今回の改正において求められるのは、子会社が具体的にどのような体制を持っているかを明確にすることではなく、それぞれの事項に対し親会社としての関与があるかどうか、また、関与がある場合には、具体的にどのような関与の体制となっているかを明確にすることであると解されているようです。

従って、子会社における内部統制システムを整備する義務や子会社を監督する義務を定めたものではないと説明されていますが、十分な関与がないままに、子会社に問題が生じ、その結果、自社または子会社に損害等が生じた場合には、自社の取締役が善管注意義務違反に問われる可能性に留意する必要があると考えられます。

(参考文献)
「グループ内部統制について」(石井裕介 会計・監査ジャーナル No.715 2015年2月号)

2015年2月23日 (月)

東証 社外取締役の複数選任ルールを策定へ

(2月22日付日本経済新聞朝刊より)

東京証券取引所は、社外取締役の2名以上選任するように促す上場規則案をまとめたとのことです。もし2名以上の社外取締役を選任しない場合には、株主総会後にその理由を説明する義務を企業に課し、説明がない場合には罰則を適用する方針とのことです。

新しい上場規則は今年の6月1日から適用され、東証1部・2部に上場する約2,400社が対象となる見込みとのことです。今年の株主総会で社外取締役を複数選任しない場合には、何らかの開示が求められる可能性があり、今後の動向に注目が必要です。