会計監査

2017年6月27日 (火)

金融庁 「「監査報告書の透明化」について」を公表

6月27日の日本経済新聞朝刊の記事からです。金融庁は、6月26日、「「監査報告書の透明化」について」を公表し、今後会計監査における監査報告書の記載内容について、企業会計審議会において検討する方向性を示しました。

監査報告書において、財務諸表の適正性についての意見表明に加え、監査人が着目した会計監査上のリスクなどを記載する「監査報告書の透明化」が国際監査基準に導入されたことを受け、欧米やアジアの主要国において導入が検討されている状況にあります。

また、日本においても、「会計監査の在り方に関する懇談会」においても、株主等に対する会計監査の内容等に関する情報提供を充実させるという観点から検討を進めるべきとの提言がなされ、関係諸団体が意見交換を重ねてきた経緯があります。

意見交換においては、

・監査上の重要な事項(Key Audit Matters:KAM)に関する情報が監査報告書において示されることは、監査報告書の情報価値を高め、会計監査についての財務諸表利用者の理解を深めることとなる。

・監査報告書にKAMを記載することは、企業と財務諸表利用者との対話を充実させ、企業と監査人とのコミュニケーションの充実や監査品質の向上にも繋がる。

という意見が出されたようです。一方で、何をどのようにKAMとして監査報告書に記載するのか? 企業と監査人がKAMの記載にあたって必要となる手続(調整)やKAMに関する説明責任の問題、KAMの記載による追加的な監査時間の問題等、実務上の課題は少なくないものと考えられます。

このため、実務上の課題を抽出するために、直近の終了した会計監査を対象に、KAMを試行的に作成する取組みを行い検討にあたっての参考とすることが提言されており、今後の動向が注目されます。

2014年9月22日 (月)

会計監査人に求められる職業的懐疑心

9月4日の研究大会の午後の部は、会計監査人に求められる職業的懐疑心をテーマにしたパネルディスカッションに参加しました。

会計不正に関する事案が後を絶たない昨今、会計監査人には職業的懐疑心を発揮し、監査を行うことが求められています。昨年制定された不正リスク対応基準においても、職業的懐疑心を保持・発揮することが求められています。

監査基準委員会報告書において、職業的懐疑心は
「誤謬又は不正による虚偽表示の可能性を示す状態に常に注意し、監査証拠を鵜呑みにせず、批判的に評価する姿勢をいう。」
と定義されていますが、パネルディスカッションの中では、さらに掘り下げた議論が行われました。私が特に印象に残ったのは次のようなお話でした。


①期待される職業的懐疑心のレベルとは?

会計監査人に期待される職業的懐疑心の水準とは、監査報告書の利用者に対する説明責任である。「監査人として、なぜこれで良いと判断したか、監査報告書の利用者が納得できるように説明できるか?」

職業的懐疑心を発揮することとは、リスクの適切な評価・把握することとそれに対して目的適合性のある行動を取ることである。そのためには、監査現場において仮説を立て、違和感を感じることができるかどうかが重要である。

「Trust, but verify(信頼するが検証もする)」という意味での健全な懐疑心を保持することが重要である。


②組織としての職業的懐疑心(組織的懐疑心)

監査法人を運営する立場からは、組織の構成員1人1人が職業的懐疑心を保持した上で、構成員が職業的懐疑心を保持・発揮することを支援する組織の仕組み・運用ルールを保持・発揮することが重要である。

海外の会計不正の事案(=監査が機能していなかった事案)には、現場レベルで不正を発見できなかった事案と現場レベルで発見されていた不正を監査責任者が適切にさばくことができなかった事案の2つのタイプがある。(日本の場合はどうか?)

組織としての職業的懐疑心に対する脅威として、クライアントとの関係維持、時間的・予算的制約、集団思考、監査報酬モデルの問題などがある。


ただ、最終的に職業的懐疑心の保持・発揮が適切であったか否かは、具体的な状況において監査人が行った監査手続の内容で判断されるとされており、いわゆる「結果がすべて」という側面があることも見逃せませんでした。

とにかく、折に触れてこの職業的懐疑心とは何か?を問い続けることが公認会計士には重要なことなのだと再認識したパネルディスカッションでした。

2013年4月 3日 (水)

企業会計審議会 監査における不正リスク対応基準を承認

既に新聞報道等でご存じの方も多いかと思いますが、3月26日、企業会計審議会は「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」を承認し、公表しました。

既に、このブログでも公開草案の内容について取り上げましたが、一部文言の修正はあったものの内容についての大幅な変更はなかったようです。

改訂監査基準及び不正リスク対応基準は、平成26年3月期の監査から順次適用されることとされています。(不正リスク対応基準のうち、監査事務所の品質管理に関するものについては平成25年10月1日から適用)

内容については、以下のブログ記事を参考になさってください。

監査における不正リスク対応基準の設定について(その1)

監査における不正リスク対応基準の設定について(その2)

2013年1月11日 (金)

監査における不正リスク対応基準の設定について(その2)

今回は、新たに創設が予定されている不正リスク対応基準の主な内容についてまとめてみます。
不正リスク対応基準は、職業的懐疑心の強調、不正リスクに対応した監査の実施、不正リスクに対応した監査事務所の品質管理の3つから構成されています。

1.職業的懐疑心の強調(第一.1~5)

職業的懐疑心の保持は、現行の監査基準においても述べられていることですが、不正リスクの対応にあたっては、より注意深く批判的な姿勢が求められるとされています。
ただし、これまでの監査基準で採用されている経営者に対する中立的な観点を変更するものではないことに留意しなければならないともされています。

2.不正リスクに対応した監査の実施

(1)不正リスクに対して監査人が実施すべき事項(第二.1~9、14及び付録1)

 ①不正リスクに対応した監査計画を策定する。
  現行の重要な虚偽表示リスクの検討に加え、不正リスク要因を検討する。
  同業種における不正事例の理解、不正リスクに関連する質問手続等不正リスクを把握するための手続を実施する。
  不正リスクを識別した場合は、企業が想定しない要素を監査計画に組み込む。

 ②不正リスクに対応する監査手続として積極的確認を実施する場合、無回答・不十分な回答に対して、安易に代替的な手続を行ってはならない。

 ③不正リスクに関連する監査証拠については、通常入手する監査証拠よりも、適合性・証明力・量の点でより十分な監査証拠を入手しなければならない。

 ④不正リスクの内容や程度に応じて専門家の業務の利用を検討する。

 
(2)不正による重要な虚偽表示の疑義に対する対応(第二.10~13、15~16及び19)
 監査の実施過程において、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況を発見することがあるとされており(状況については、基準の中で例示)、その場合の対処の方法が規定されました。

 ①まず、不正による重要虚偽の疑義が存在していないかどうかを判断するために、適切な階層の経営者に質問し説明を求め、追加的な監査手続を実施する。

 ②その結果、不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断された場合は、
  ・監査人が当該疑義に対して実施した監査手続の内容とその結果、また、監査人としての結論や重要な判断を監査調書に記載する。
  ・想定される不正の態様等に直接対応した監査手続を立案し、監査計画を修正する。
  ・監査事務所内の審査においてもより慎重な対応が必要となる。

(3)監査役等との連携(第二.17~18)
 不正による重要な虚偽表示識別された場合や経営者の関与が疑われる不正を発見した場合には、監査役(または監査委員会)と連携を図る必要がある。
 

3.不正リスクに対応した監査事務所の品質管理(第三.1~10)
この規定は、新たな品質管理のシステムの導入を求めるものではなく、不正リスクに対応する観点から、特に留意すべき点がまとめられています。

①不正リスクに対応できるよう監査事務所の品質管理システムの整備・運用・監視を行う。
具体的には、不正に関する教育・訓練、監査事務所内外からもたらされる情報への対処、専門的な見解の問い合わせ、不正リスクへの対応状況の定期的検証が挙げられています。 

②不正リスクを考慮して監査契約の締結、更新の判断を行う。

③不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断された場合は、監査事務所としてより慎重な審査を行う。

④監査事務所間の引継において、より慎重な対応が求められる。

新聞報道等では、監査が厳格化される等の論調も見受けられましたが、基本的な考え方を読む限り、監査の内容がこれまでと大きく変化することはなさそうです。

ただし、監査人は不正リスクに対してもっと敏感にならなければならなければならないという指摘が含まれているように感じます。
このことは、職業的懐疑心の議論とも関連しますが、監査人には自分の担当会社がいつ不正を行ってもおかしくはないくらいの意識を持つことが求められているのだと考えます。
このように書くと、「画一的に監査手続の実施を求めるものではない」という考え方と矛盾するではないかと思われるかもしれませんが、そこを上手に捌いていくことが求められていると考えられるような気がします。

もう1つは、不正リスクが識別した場合は、そのリスクを低減させるだけの監査手続を確実に行わなければならないということです。
「リスク評価が変われば実施される監査手続も変更されるべき」ではあるのですが、私の経験上、実際に監査計画を変更するとなると多大な労力が必要となることもありますので、実行に移すのは難しい面があると思っています。
しかし、今回の基準策定は、この当たり前の議論を基準として明確化することによって、より監査人に強く意識させるという面があるように思われます。

何はともあれ、不正事例がなくなることが最も重要な課題なのですから、そこは企業と監査人の双方が強く認識しながら日々の業務に取り組んでいく必要があるのだと感じます。

(この回おわり)

2013年1月 8日 (火)

監査における不正リスク対応基準の設定について(その1)

昨年の12月21日、企業会計審議会監査部会は「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」(以下、公開草案)を公表しました。
今日はその概要についてまとめながら、不正への公認会計士の対応について少し考えてみたいと思います。

1.審議の背景

これについては今更述べるまでもありませんが、昨今不正による有価証券報告書の虚偽記載事例が相次いでおり、こうした事例において公認会計士監査が有効に機能していなかったという指摘があります。
また、国際的な動向を見ても、不正に対応した基準の見直しが継続的に行われており、各国において、職業的懐疑心の重要性が再認識されています。
こうした点を踏まえ、重要な虚偽表示の原因となる不正(以下、不正)に対応した監査手続等の検討が行われ、所用の見直しが行われました。

2.不正リスク対応基準の設定

(1)背景
今回の改正において、一番のポイントは監査基準とは別に不正リスク対応のための基準が設けられたことであると言えるでしょう。
監査論を勉強された方であればご存知の話ですが、現行の監査基準においても

不正・誤謬による重要な虚偽表示発生の可能性を評価

                 ↓

         その結果を監査計画に反映

                 ↓

            監査(手続)を実施

することが求められています。
しかし、不正は他者を欺く行為を伴う意図的な行為であり、その発見が困難な場合も少なくないと考えられます。
こうした状況に対して、現行の監査基準の運用だけでは、為すべき対応が明確でなく、実務での対応にもばらつきがあるとの指摘があります。
こうした点を踏まえ、不正リスク対応のための監査手続を明確にし、より慎重に監査を実施することを求める観点から、不正リスク対応基準を設けることとされました。

(2)基本的な考え方
公開草案では、4つの基本的な考え方が述べられています。

①財務諸表監査において重要な虚偽表示となり得る不正を対象としていること
②財務諸表監査の目的を変えるものではなく、不正摘発自体を意図するものではないこと
③すべての財務諸表監査において画一的に不正リスクに対応するための追加的な監査手続の実施を求めることを意図しているものではないこと
④二重責任の原則は堅持されていること

(3)位置付け
不正リスク対応基準は、一部の小規模な非上場会社を除いた金融商品取引法監査対象企業を念頭に作成されています。

3.実施時期等
不正リスク対応基準及び改訂監査基準は、平成26年3月決算に係る監査から適用されます。また、不正リスクに対応した監査事務所の品質管理に関する事項は、平成25年10月1日以降適用されます。

次回のブログでは、不正リスク対応基準の内容についてまとめてみたいと思います。(つづく)

2012年6月29日 (金)

JICPA 四半期レビューの実務指針を改正

日本公認会計士協会(JICPA)は、6月22日、「四半期レビューに関する実務指針」(監査・保証実務委員会報告第83号、以下、四半期レビュー指針)を改正しました。(JICPAのホームページはこちら

今日は、その主な改正内容についてまとめてみます。

1.事後判明事実に関する取扱い(第35-2項)

①監査人は、四半期レビュー報告書の日後は、四半期財務諸表に対していかなる四半期レビュー手続を実施する義務を負わないことが明示されました。

②一方で、四半期レビュー報告書日後に、もし四半期レビュー報告書日現在に気付いていたとしたら、四半期レビュー報告書を修正する原因となった可能性のある事実(これを事後判明事実といいます)を知ることになった場合には、後発事象の監査手続に準じて必要な手続を実施することが明示されました。

2.経営者確認書への記載要求事項(第50-2項)

①改正前の四半期レビュー指針第50項が見直され、経営者確認書への記載事項が整理されています。

②また、経営者確認書の文例も整理されています。(付録2)

詳細については、四半期レビュー指針の原文をご確認ください。

3.監査役等とのコミュニケーションに関する事項(第57項~第59項)

①監査人は、以下の内容について、監査役等とコミュニケーションを行うことが求められるようになりました。

 ・四半期レビューに関連する監査人の責任

 ・計画した四半期レビューの範囲とその実施時期の概要

 ・四半期レビュー上の重要な発見事項

 ・監査人の独立性

②また、監査人は、想定されるコミュニケーションの手段、実施時期及び内容についても監査役等とコミュニケーションを行うことが求められるようになりました。その際、以下の事項に留意する必要があるとされています。

 ・書面によるコミュニケーションか口頭によるコミュニケーションか

 ・コミュニケーションの適時性

 ・口頭でコミュニケーションを行った場合の調書の整備

③さらに、監査人は、四半期レビュー報告書において以下のことが見込まれる場合には、当該文言の草案等について、監査役等に報告しなければならないとされています。

 ・除外事項付結論の表明

 ・強調事項区分を設ける場合

 ・その他の事項区分を設ける場合

4.監査人交代時におけるレビュー報告書の文例の追加(第92項及び文例8-3)

①監査人の交代があり、比較情報について前任監査人が四半期レビュー(もしくは監査)を実施している場合には、当期のレビュー報告書において比較情報が前任監査人によってレビュー(もしくは監査)されている旨を記載することとされています。

②なお、前年同四半期の情報を開示していなかった企業が、任意に比較情報を作成し開示した場合は、現任監査人が比較情報のレビュー手続を行うこととなるため、当該比較情報については、前任監査人によって四半期レビューされていない旨を記載することが明示されました。

この他、構成単位の財務情報に関する監査の取扱い(監査基準委員会報告書600「グループ監査」)が規定されたことに伴い、「子会社等」は「構成単位」に、「他の監査人」は「構成単位の監査人」に用語が変更されています。

改正後の四半期レビュー指針は、平成24年4月1日以降開始する四半期会計期間の四半期レビュー手続より適用されます。

2012年6月22日 (金)

JICPA 内部統制監査に関する実務上の取扱いを改正

日本公認会計士協会(JICPA)は、6月15日「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(監査・保証実務委員会報告第82号)を改正し公表しました。(原文はこちらからダウンロード可能です) 今日は、その主な改正内容についてまとめてみます。

1.監査人が一体監査を実施する上での監査役等とのコミュニケーションにおける留意事項(第44-2項)

監査役とのコミュニケーションが要求される事項として、以下の点が挙げられています。

 ○内部統制監査に関連する監査人の責任

 ○計画した監査の範囲とその実施時期の概要

 ○監査上の重要な発見事項

 ○監査人の独立性

コミュニケーション・プロセスについて、監査人は以下の点に留意すべきであるとされています。

 ○想定されるコミュニケーションの手段、実施時期及び内容について、監査役等とコミュニケーションを行うこと

 ○口頭でのコミュニケーションが適切ではないと考える場合、監査上の重要な発見事項について、書面によりコミュニケーションを行うこと

また、会社の統制環境やモニタリング等の重要な一部を担う監査役等から有効な双方向のコミュニケーションを通じて、監査に関連する必要な情報を入手することが重要であるとされています。 
 

2.内部統制監査における「重要な事業拠点」と財務諸表監査における「個別の財務的重要性を有する重要な構成単位」の関係(第89-2項)

両者は選定主体や選定方法が異なるため、必ずしも一致するものではありませんが、重要な虚偽表示リスクを潜在的に有しているという点では共通点があると考えられています。

このため、監査人は一体監査の観点から両者の関係に留意する必要があるということが明記されています。

3.内部統制監査における「全社的な内部統制」と財務諸表監査における「グループ内部統制」の関係(第116項)

内部統制監査における全社的な内部統制及び全社的な観点で評価することが適切と考えられる決算・財務報告プロセスのうち、企業集団全体に適用される内部統制があれば、それは財務諸表監査におけるグループ内部統制に該当する関係にあると考えられます。

4.監査人が一体監査を実施する上で、経営者確認書に記載することを要請しなければならない事項(第281項)

監査人が一体監査を実施するにあたっては、財務諸表監査に関する確認事項に加え、次の事項について記載した経営者確認書を提出するよう要請することが求められています。

 ○内部統制報告書の作成に関する事項

 ○内部統制報告書に重要な影響を及ぼす事項

 ○財務報告の内部統制の有効性に係る事項

 ○監査人に提供される情報の網羅性

具体的な確認書の文案については、委員会報告の中で文例が示されていますので、ご確認ください。

5.監査人が経営者確認書において確認を要請した事項について、経営者から確認を得られない場合の取扱い(第282項~第283項)

監査人が確認を要請した事項について、経営者から確認を得られない場合は、以下の事項を実施する必要があるとされています。

 ○経営者と当該事項について協議すること

 ○経営者の誠実性を再評価し、口頭または書面による陳述の信頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を評価すること

 ○内部統制監査の監査意見への影響を判断することを含め、適切な措置を講じること

特に、以下のケースでは監査意見の表明をしてはならないとされています。

 ○経営者の誠実性について深刻な疑義があり、内部統制監査の前提となる経営者の責任に関する確認事項に信頼性がないと判断した場合

 ○内部統制監査の前提となる経営者の責任に関する確認事項について経営者から確認が得られない場合

改正後の委員会報告は、平成24年4月1日以降開始する事業年度の内部統制監査から適用となります。
  

2012年2月21日 (火)

JICPA 減価償却に関する当面の監査上の取扱いを改正

日本公認会計士協会は、2月14日に「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第81号)を改正しました。昨年12月に公布された平成23年度税制改正への積み残し分への対応が主な内容ですが、ここでは主な内容について解説したいと思います。

昨年12月に公布された平成23年度税制改正の内容については、こちら

①平成24年4月1日以降取得する固定資産(以下、新規取得資産)の取扱い

従前より、法人税法に規定された普通償却限度額を会計上の減価償却費として計上している会社が、今回の税制改正に伴い新規取得資産に対して200%定率法を適用する(つまり、今回も法人税法に規定された方法に一致させる)場合には、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として認められます。

よって、従前の減価償却費の計算が法人税法に規定された普通償却限度額の計算と異なっているような会社が、今回の税制改正に伴い新規取得資産に対して200%定率法を適用しようとする場合には、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更とは認められないため、他の正当な理由によって自発的に会計方針を変更しなければならない(他の正当な理由がなければ会計方針を変更できない)という取扱いとなることに留意する必要があります。

さらに、新規取得資産に対して200%定率法を適用せず、従前の償却計算を継続した場合は、会計的には会計方針の変更が行われていないという取扱いとなります。

また、平成23年度税制改正では、事業年度が平成24年4月1日をまたがるようなケースでは、その事業年度に限って、改正前の減価償却を行うことが認められていますが、これは監査上の取扱いにおいても認められています。

②平成24年3月31日までに取得していた固定資産の取扱い

これらの固定資産の減価償却方法を従来の方法から変更する場合には、たとえ、平成23年度税制改正を契機とした改正であっても、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更とは認められず、すべて正当な理由によって発的な会計方針の変更しなければならない(他の正当な理由がなければ会計方針を変更できない)という取扱いとなることに留意する必要があります。

また、単に法人税法の改正を理由とするだけでは、正当な理由には該当しないことに留意する必要があります。

基本的な考え方は平成19年度税制改正の時と同じであるため、まだご記憶が残っている方も多いと考えられますが、この監査上の取扱いの内容に十分留意して平成24年4月1日以降の会計処理を決定する必要があると考えられます。

2011年11月17日 (木)

変わる?! 監査の世界

経営財務3039号の記事からです。欧米では、監査を巡る議論が活発に行われており、将来日本の監査現場も大きく変わる可能性があると指摘されています。

☆監査法人の強制ローテーション

現在、日本の制度においても監査責任者(業務執行社員)のローテーションルールが定められていますが、監査法人自体の定期的な交代を促す提案です。以前から、このような議論はなされていたところですが、今回は欧米においても現実味があるということで、導入されれば、日本においても非常に大きな影響がありそうです。

監査法人自体をローテーションすることについては、かえって監査の質が低下するのではないか?(過去の業務から得られる情報・経験が活用できなくなる)や被監査会社側のコスト増加するのではないか?(監査法人が交代する度に、会社のビジネスや内部統制を1から説明しなければならなくなる)といった懸念も示されています。

☆監査業務への特化

被監査会社への非監査証明業務の全面的な禁止を求める提案です。過去の粉飾事例においても、公認会計士が行ったコンサルティングがその原因として指摘されるケースが少なくないことによるものですが、現在の日本においては、被監査会社への非監査証明業務の提供が認められているため、全面的な禁止となると、これも非常に大きな影響がありそうです。

☆監査報告書の充実化

これは、主にアメリカで行われている議論のようですが、適正か否かといった機械的な評価の結果だけを表示するのではなく、監査人としての意見・情報をもっと盛り込むべきという考え方によるものだそうです。

これは、経験上非常に同意できるところがあります。実際の監査の現場においては、いわゆるグレーな問題が多い訳ですが、現状の制度では、それを適正か否か(白か黒か)を表明しなければならない(多くの場合は適正(白)となる)訳です。しかし、追加的な意見・情報を盛り込むことができることによって、同じ適正意見であったとしても、そのリスク(不確実性)の程度を表明することができ、ひいては、財務諸表や監査報告書の読者もより有効に活用できるのではないかと考えるのですが。

何はともあれ、監査の現場は大きくする変化する時代がすぐそこまで来ているのかもしれませんね。

(参考記事)

経営財務3039号「監査法人のローテーションに現実味」

経営財務3039号「【海外会計トピックス】コンドースメント、監査人の定期的交代、その他」

☆経営財務のホームページはこちら

http://www.zeiken.co.jp/mgzn/index_zaimu.htm

2011年7月15日 (金)

中国企業の会計不信が深刻に?

7月13日の日本経済新聞朝刊の記事からです。アメリカの格付け会社であるムーディーズ・インベスターズ・サービスは、格付けの低い中国企業約60社を対象に調査を行い、このうち6社については「潜在的なリスクが高い」として個別に解説を付ける対応を行うなど、海外市場で上場する中国企業の会計不信が鮮明になっていると記事は伝えています。

この指摘を受けた6社は、今のところ特段のコメントを発表していないようですが、アメリカの上場企業会計監視委員会(PCAOB)と証券取引委員会(SEC)の代表団は、中国に拠点を置く監査法人をチェックするための申し入れを行った模様です。

これは、アメリカの企業改革法(SOX法)に基づく措置ですが、中国側は自国の監査法人に対するチェックは主権にかかわる問題として難色を示しているようです(当然の反応であるとは思いますが…)

これまで中国企業が上海や深圳などの国内市場のみで上場している間は、このような会計不信の問題はあくまで国内問題としての取り扱われていたようですが、香港市場を含む国外市場において上場するようになったここ数年、この問題はグローバルレベルの問題として認識されるようになってきたようです。

中国といえば、これまでも新興国としてのスタンスを強く主張し、グローバルレベルの議論からは一歩下った対応を取ることで有名ですが、会計・監査の分野においても、いわゆる「中国流」が通用するのか? 今後の動向に注目する必要がありそうです。

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