ディスクロージャー制度

2017年4月17日 (月)

金融庁 有価証券報告書作成の留意事項を公表

金融庁は、3月31日、平成29年3月期以降の有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項を公表しました。

1.規則等の改正

(1)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の記載

企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され、従前より記載が求められていた「対処すべき課題」や「財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」に加えて、提出会社の経営方針・経営戦略等の内容や経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等が定められている場合はその内容を記載することが求められるようになりました。

(2)リスク分担型企業年金を採用している場合の注記

会計上確定拠出制度に該当するリスク分担型企業年金を採用している場合、以下の事項についての注記が求められるようになりました。

・当該年金制度に関する説明
・当該年金に係る退職給付費用の額(制度への拠出額)
・翌年度以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額や拠出に関する残存年数

なお、当該年金制度に関する説明の例示として、

・標準掛金相当額の他に、リスク対応掛金相当額があらかじめ規約に定められていること
・毎事業年度における財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られること

が挙げられています。

2.平成28年度 有価証券報告書レビューの審査結果を踏まえた留意事項

毎年、金融庁によって有価証券報告書レビューが実施されていますが、平成28年度のレビュー結果から、作成上留意すべき事項が取りまとめられています。

今回取り上げられているテーマは、以下の5つです。

〇企業結合関係

〇工事契約に関する会計処理・開示

〇棚卸資産に関する会計処理・開示

〇包括利益計算書

〇1株当たり情報

特に、包括利益計算書については、組替調整額の開示(漏れ)に関する指摘が多くなっています。組替調整額とは、当期及び過去の期間にその他の包括利益に含まれていた項目のうち当期純利益に含められた金額のことをいいます。このため、

・繰延ヘッジ損益について、ヘッジ対象に係る損益が認識されたこと等に伴って当期純利益に含められた金額やヘッジ対象とされた予定取引で購入した資産の取得価額に加減された金額

・為替換算調整勘定について、連結子会社に対する持分の減少に伴って取り崩され当期純利益に含められた金額

・未認識数理計算上の差異について、年金資産(退職給付信託を含む)の返還に伴い損益として認識された金額

は、すべて組替調整額の開示対象となることに留意が必要です。

また、重要性の判断において、質的重要性(当該事項の性質等)が考慮されていない事例や金額的重要性について単一の指標のみが検討され多面的な検討が行われていない事例があったとの指摘もありました。経理担当者の方々にとっては、ご多忙な中で有価証券報告書を作成されているため、ついつい重要性を理由に開示を省略…というようなことも少なくないかと思いますが、慎重な検討が必要と言えそうです。

2017年3月13日 (月)

東京証券取引所 決算短信作成要領を改定

東京証券取引所は、2月10日「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(以下、作成要領)を改定しました。

今回の改定では、4つの大きなポイントがあります。

①「サマリー情報」について、使用義務を廃止し、要請にとどめる。

②決算短信には速報性が求められる項目のみを開示し、そうでない項目は有価証券報告書等に記載する。

③決算短信開示時点での連結財務諸表及び主な注記を記載せず、開示可能になった時点での追加開示を容認する。(投資判断を誤らせる恐れがない場合に限る。)

④決算短信には監査等が不要であることを明確化する。

①については、「サマリー情報」に代わる独自のフォーマットを持っている企業がどの程度存在するか分かりませんが、そのような企業については作成の重複を避けることができるものと思われます。

②については、添付資料として開示が要請される事項が以下の通り整理されています。

・当期の経営成績及び財政状態の概況
・今後の見通し
・継続企業の前提に関する重要事象等
・会計基準の選択に関する基本的な考え方
・連結財務諸表及び主な注記

変更点として2つ大きなポイントがあります。1つ目は、従来開示が要請されていた「経営方針」が削除された点です。これについては、速報性が求められるものでないことから有価証券報告書での開示が求められることとなりました。 
2つ目は、当期の経営成績及び財政状態「に関する分析」が「の概況」に改められた点です。言葉のニュアンスから、より簡略な記載が容認される印象ですが、この部分については、決算短信、会社法事業報告、有価証券報告書で記載内容を統一している会社も少なくないかと思われ、今回の改定をどのように取り扱うか(従前通りとするのか)検討が必要と考えられます。

④については、作成要領では以下のような記載例となっています。

※決算短信は、監査の対象外です。

非常に簡潔明瞭な文章です(笑) 従来から決算短信は監査の対象外だった訳ですが、後から修正発表を行うことを避けるため、監査のチェックを受け、重大な問題がないことを確認してから、決算短信を発表している企業も少なくないと思われます。
今回の改定を受け、決算発表及び監査意見表明のタイミングをどのようにするのか、企業と監査人との協議をしておかないと、短信の記載が変わっただけで、速報性の向上ということには繋がらないのではないかと思われます。
この点について、日本公認会計士協会は会員に対して文書で「決算短信等については、監査等の対象外であることから会社の責任において速報値として早期に開示を促し、監査人として、会社法監査及び金融商品取引法監査について、より高品質な監査を実施するために十分な監査期間を確保した上で実施」するように要請しています。

2016年10月26日 (水)

東証 決算短信の簡素化容認?

(10月25日 日本経済新聞朝刊より)

東京証券取引所は2017年3月期から決算短信の内容を簡素化する方針を固めたようです。

サマリー情報(決算短信の1枚目)
 現状の開示義務を改正後は開示要請に見直し

(連結)財務諸表
 現状の開示を要請する位置付けはそのままだが、投資判断を誤らせなければ、後からの開示を容認

経営方針(経営指標・中期経営計画の進捗等)
 現状の開示要請を任意の開示に見直し(有価証券報告書で記載)

                                                   (参考)10月25日 日本経済新聞朝刊

決算情報をできるだけ早く開示する「速報」としての位置付けを明確にし、監査法人の監査が不要であることも明確にするとのことです。

このような見直しの動きは、2015年の「日本再興戦略改定」に盛り込まれ、金融庁の金融審議会がまとめた報告書を踏まえてのこととなっています。

しかし、投資家からは「開示が後退することで適切な投資判断ができなくなる」だけでなく、「開示を後退させた企業は投資対象から外すべき」との厳しい声も聞かれるようです。また、簡素化によって恩恵を受けるはずの企業からも「投資家は決算短信を重視しており、簡素化は考えられない」という声も聞かれており、その効果については、少々疑問もあるように思われます。

また、会社法上の「事業報告・計算書類」や金融商品取引法上の「有価証券報告書」といった開示書類との関係性をどのように整理するのかという点についても、今後議論を深める必要があると思われます。

なお、今後約1ヶ月ほどの意見公募を経て正式決定されるとのことですので、簡素化の詳しい内容については、またこのブログで取り上げたいと思います。

2016年5月25日 (水)

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告

4月、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループは、我が国の開示制度にあり方に関する報告書(以下、報告書)を公表しています。
金融審議会(金融庁)のホームページはこちら

1.報告書の趣旨

企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、企業と株主・投資家との建設的な対話を促進する観点を踏まえつつ、投資者が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するための情報開示のあり方について幅広く検討を行うこととされています。

2.基本的な考え方

大きな方向性としては、以下の2つに区分されます。

制度開示(決算短信・会社法事業報告等・有価証券報告書)の開示内容を整理・共通化・合理化し、自由度を高めることで、投資家にとってより分かりやすく、効果的・効率的な開示が実施できるようにする。(欧米企業の年次報告書(アニュアルレポート)をイメージしているものと思われます。)

②対話に資する情報がより適時に開示されるようにする。(例.株主総会資料が株主総会までに十分な期間を置いて開示されるようにする。)

3.開示内容の整理・共通化・合理化

制度開示の開示内容を整理・共通化・合理化していくにあたっては、
 ・それぞれの役割を踏まえた上で、記載内容を整理
 ・同種の開示項目、開示内容がある場合は、記載を共通化
 ・記載内容が重複していたり、加重である場合は、記載を合理化
していく方向性を示した上で、各制度の見直しについて、以下のような提言がなされています。

(1) 決算短信及び四半期決算短信

 ・監査及び四半期レビューが不要であることの明確化(情報開示の速報性を重視)
 ・速報性に着目した記載内容の合理化(削減)
 ・要請事項の限定による自由度の向上

(2) 会社法事業報告等

 ・経団連ひな型に即する必要はない旨の明確化
  →有価証券報告書との記載の共通化や一体化を容易に

(3) 有価証券報告書

 ・経営方針等や経営者による経営成績等の分析(MD&A)等の記載を充実
  →「業績等の概要」や「生産、受注及び販売の状況」はMD&Aに統合
 ・重複記載を避けるための開示内容の合理化(削減)
  →例として、「新株予約券等の状況」「ライツプランの内容」「ストックオプション制度の内容」が挙げられている。
 ・事業報告との共通化
  →同種の開示を行う場合で、事業報告と有価証券報告書との間で記載のルールが異なっているものについては、ルールの共通化が考えられる。

4.開示の日程・手続のあり方

企業と株主・投資家との対話の促進を図るためには、株主総会の開催前に十分な期間を置いて情報開示がなされる必要があります。具体的な指摘として、以下のようなものがあります。
 ・株主総会開催前に有価証券報告書を開示すること
 ・招集通知等の発送から株主総会開催までの期間を十分に空けること
  →現行の会社法では2週間とされていますが、4週間以上空けることを要求している国もあるそうです。

これらの点を踏まえて、報告書では、
 ・株主総会の開催を後ろ倒しにすることも選択肢となるように適切な手当を行う。
 ・事業報告及び計算書類等の電子化を促進する。
ことが提案されています。

5.その他

上記のほか、以下の点についても今後の方向性に関する提言がなされています。
 ・非財務情報の開示の充実
 ・単体財務諸表におけるIFRSの任意適用の検討
 ・情報の公平かつ公正な開示についてのルールの導入
 ・投資者のリテラシー向上等に向けた取組みの充実

今後、実務負担の軽減とより効果的な情報開示の実現に向けた制度の見直しが進んでいくことを期待したいと思います。

2016年4月 6日 (水)

金融庁 有価証券報告書作成・提出に際しての留意すべき事項を公表

少しネタが古いのですが、金融庁は3月25日に「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期以降)」を公表しています。内容としては、2つのテーマから構成されています。

1.新たに適用となる開示制度・会計基準に係る留意すべき事項

企業結合に関する会計基準等の改正に伴い、連結財務諸表規則の改正が行われ、連結財務諸表項目の改正が行われています。既に四半期報告書で対応済の内容ではありますが、連結財務諸表規則の適用は今回が初めてとなりますので留意が必要です。

【連結貸借対照表】
・少数株主持分 → 非支配株主持分

【連結損益計算書及び連結包括利益計算書】
・少数株主損益調整前当期純利益 → 当期純利益
・少数株主利益 → 非支配株主に帰属する当期純利益
・当期純利益 → 親会社株主に帰属する当期純利益
・少数株主に係る包括利益 → 非支配株主に係る包括利益

※上記の改正に伴い、連結株主資本等変動計算書においても改正項目があります。

【連結キャッシュ・フロー計算書】
・少数株主への配当金の支払額 → 非支配株主への配当金の支払額

また、企業結合における取得関連費用の取扱いや暫定的な会計処理が確定した場合の取扱いが改正されたことに伴い、所要の注記事項が追加・改正されていますので、該当事項がある場合は注意が必要です。

2.平成27年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査及び情報等活用審査)を踏まえた留意すべき事項

これについては、退職給付会計及びセグメント情報に重点審査テーマとして取り上げられ、以下の留意事項が示されています。

【退職給付会計】
・企業の採用する退職給付制度の概要…採用している制度の内容を分かりやすく、正確に記載すること
・年金資産の主な内訳…その資産の内容が明瞭になるように、適切に区分して記載すること
・退職給付に関連する損益…会計基準変更時差異の費用処理額や臨時に支払った割増退職金等が含まれることに留意すること
・退職給付信託に含まれるみなし保有株式…「コーポレート・ガバナンスの状況」において、銘柄や株式数等を開示する必要があること
・未認識数理計算上の差異等の組替調整額…「その他の包括利益に関する注記」において正しく記載(開示)する必要があること

【セグメント情報】
・量的基準を満たす事業セグメントは報告セグメントとして開示すること
・複数の事業セグメントを集約した場合は、その旨の注記が必要であること
・事業セグメントの財務情報として資産に関する情報がない場合を除いては、各報告セグメントの資産の額を開示する必要があること
・セグメント情報の「関連情報」…開示すべき重要性基準を超える項目については区分して開示する必要があること
・「事業の状況」の研究開発活動に関する記載…研究開発活動の状況及び研究開発費の金額をセグメント情報に関連付けて記載する必要があること

2016年3月30日 (水)

日本経団連 事業報告・計算書類等のひな型を改訂

日本経団連は、3月9日に「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を公開しました。

今回の改訂は、2016年1月に改正法務省令が公布されたこと、2016年3月期に企業結合に関する会計基準が全面適用になること等による所要の修正を行ったものとされています。

事業報告及びその附属明細書と株主総会参考書類については、2015年(平成27年)5月1日以後に終了する事業年度から適用となっています。また、計算書類及び連結計算書類については、改正された会計基準の適用時期に合わせてこのひな型を参考にすることができます。

3月決算会社の皆様には大変参考になる資料かと思いますので、是非ご活用ください。

2015年11月16日 (月)

金融庁 情報開示のあり方検討へ

1ヶ月ブログの更新がストップしてしまいました。反省です。

麻生金融担当大臣から金融審議会(金融庁の諮問機関)に対して、以下の諮問が行われました。

企業と投資家の建設的な対話を促進する観点も踏まえつつ、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するための情報開示のあり方等について幅広く検討を行うこと

ご存知の方も多いと思いますが、上場会社の場合、決算時の開示書類として以下の3つのものが求められています。

・取引所のルールに基づく決算短信
・会社法に基づく事業報告、計算書類
・金融商品取引法に基づく有価証券報告書

それぞれの開示書類には目的があり、それなりの存在意義もある訳ですが、企業の経理担当者の方にとっては、相当の負担になっていたのではないかと思われます。(それをチェックする我々公認会計士も結構な負担だったりするわけで。。。)

今回の議論では、重複開示項目の排除や相互参照の活用、実質的な監査の一元化、四半期開示の一本化、株主総会等の適切な日程の設定などが検討の対象となり、平成27年度中に結論を取りまとめる方向とのことです。

一方で、今回の諮問内容にもあるように、単なる事務の効率化だけではなく、逆に開示が不足している項目が充実するような取組も必要かと思われます。何はともあれ、日本企業の決算書がよりよいものとなることを期待したいものです。

(参考)経営財務 3234号 2015年11月2日

2015年10月 5日 (月)

開示規制違反による課徴金事例集

証券取引等監視委員会は、8月28日「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規則違反編~」を公表しています。

これは、同委員会の開示検査の結果確認された不適正な会計処理等の概要を取りまとめ、適切な開示に向けた市場関係者の自主的な取組を促すことが目的とされています。

その中で、違反の手法には一定の傾向(パターン)が観察されており、最近の件では以下の事案が把握されているようです。(事例集P.9~10参照)

①代表者等の会社幹部が自ら主導するなどして不適正な会計処理が行われていたケース

 創業者等の影響力が強い役員等が不適正な会計処理を行った結果、他の取締役や監査役からの牽制が十分機能していない問題や代表者自身のコンプライアンス意識が欠如しているという問題が指摘されています。
 具体的な事象としては、業績等をよく見せるための不適正な会計処理に加えて、個人的な債務返済等のために会社の資金を流出させていたケースもあるようです。

②海外子会社等において不適正な会計処理が行われ連結財務諸表に影響が及ぶケース

 企業の海外進出が拡大し、海外子会社等の財務情報に対して適切なモニタリングが行えているかという企業集団全体としての内部統制のあり方が問われていると指摘されています。
 具体的な事象としては、社内の会計基準が整備されていなかった結果、不適正な会計処理が行われていたケースや厳しい目標を達成するために不適正な会計処理が行われていたケースがあったようです。

③資産の評価が適切に行われていないケース

 資産評価の重要性に対する認識の甘さや取締役会等の機能不全という問題が見受けられると指摘されています。

 特に、②の海外子会社のモニタリングについては私も問題意識があることから、このブログで何度も触れているところです。問題が生じてから動き出すのではなく、問題を認識していない状況でも、本当に適切なモニタリングが実施できているかを考えておく必要があると考えます。

内部統制の世界では、「便りがないのは良い便り」とは限らないのです。

2015年1月26日 (月)

海外子会社の財務情報のモニタリング

(経営財務 3195号 2015年1月12日より)

証券取引等監視委員会が、昨年8月に公表した「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」を通して、内部統制整備のポイントを考えてみたいと思います。

金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~

この中で、開示違反の手法の傾向として、以下の3点が指摘されています。(事例集のP.9~P.10参照)

①不適切な会計処理の隠ぺいを図るため、海外子会社や海外ファンドが利用されるケース

②海外子会社等において不適切な会計処理が行われ、連結財務諸表に影響が及ぶケース

③経営者や取締役等の会社幹部が主導して不適正な会計処理が行われるケース

この中で、特に強調したいのは②のケースです。昨今では、上場会社等のみならず、中堅・小規模企業においても海外子会社を持たれるケースが増えてきているように思われますが、同様の危険性(リスク)に留意する必要があると思われます。

海外子会社は会計監査を受けているケースが多く、監査報告書の入手をもって海外子会社の会計処理は適切に行われており、正確な業績報告が本社にも届いていると判断するケースが多いように思います。

にもかかわらず、不適切な会計処理が発見される事例が散見されるということはどういうことなのか? これは、全面的に会計監査に頼ることは危険であるということを意味すると考えられます。

私も、これまでにアジアを中心に約10か国に出張して、各国の会計士にインタビューをさせて頂いた経験がありますが、「色々なレベルの会計士がいる」というのが率直な感想です。特に、中小の事務所では、会計監査をいわゆる税法基準でやっているのではないか?と疑われるケースもあり、このような場合には問題の発見も遅くなる傾向があるように思います。

では、このような問題にどのように対処するか?ということですが、事例集でも指摘されているように、海外子会社等の財務情報に対して、現地固有の統制環境やリスクの評価も踏まえた適切なモニタリング(監視)を行う体制を作るということがポイントになるのではないかと考えます。

報告された情報に対する適時のフィードバックはもちろんですが、内部監査体制を作って、会計監査とは別の視点から財務情報をチェックするということも考えられます。中小規模の会社様では、そこまでの人員を割くことは困難な場合もあるかと思いますが、その場合は外部の専門家を活用する(応援を依頼する)ことも有効と考えます。

外部の専門家の活用はお金がかかる(高い)と思われる方が多いように思いますが、「転ばぬ先の杖」と考えられてはいかがでしょうか。あすかコンサルティング株式会社 では、海外子会社の内部監査の受託・支援のサービスも提供させて頂いております。ご興味のある方は是非お問い合わせください。

2014年10月20日 (月)

平成26年金融商品取引法の改正(その2)

前回に引き続き、今年の5月30日に公布された金融商品取引法の改正内容について、まとめてみたいと思います。

流通市場における虚偽記載等に係る賠償責任の見直し
従来は、有価証券報告書等の開示書類に虚偽記載があった場合、その虚偽記載により生じた損害を賠償する責任が、以下の通り定められていました。

 提出者(会社)…発行市場・流通市場ともに無過失責任

 提出者の役員…発行市場・流通市場ともに立証責任の転換された過失責任

 提出会社の監査法人…監査証明について故意または過失がなかったことを立証できれば免責

(1) 流通市場における提出者(会社)の無過失責任の見直し
民法上の一般不法行為責任は、加害者の「故意または過失」について、被害者が立証しなければならないこととされています。(過失責任の原則)
それにも関わらず、金融商品取引法において提出者の虚偽開示書類の責任を例外的に無過失責任としていたのは、民事訴訟による責任追及を容易にすることによって、違法行為の抑止を図り、証券市場の公正性・透明性を向上させることにあったと考えられていました。
しかし、近年虚偽開示書類に対する課徴金制度の導入等により、提出者に無過失責任を課すことの意義が相対的に低下してきていることやそもそも流通市場において提出者に無過失責任を負わせるのは不合理であるという指摘がありました。
これらを踏まえ、改正後は流通市場における投資者は「虚偽記載等について故意または過失がなかったことを証明したとき」は賠償責任は負わされないこととなりました。

(2) 流通市場における損害賠償責任の請求権者の拡大
従来は、虚偽開示書類が公衆縦覧に供されている間に、当該虚偽書類の提出者が発行する有価証券を取得した投資者だけが提出者等に損害賠償を請求できることとされていました。
この点につき、いわゆる逆粉飾が行われ、その情報に基づいて保有している有価証券を処分した投資者も損害を被る可能性があるとの指摘がなされていました。
このことを踏まえ、損害賠償の請求権者に虚偽記載種類の提出者が発行する有価証券を処分した投資者も含まれることとなりました。


3.新規上場企業の負担軽減(内部統制監査の免除)
新規・成長企業の新規上場を促進するという観点から、内部統制報告制度に対する負担軽減が検討されました。
その結果、新規上場企業が上場後3年後以内に提出する内部統制報告書については、内部統制監査を受ける必要がなくなりました

【改正のポイント】
内部統制報告書の提出が免除される訳ではなく、監査が免除されるだけであるという点に留意が必要です。

公認会計士法上の大会社(資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上)に該当する企業は免除対象にはなりません

再上場企業についても免除対象にはなりません

任意で内部統制監査を受け、内部統制報告書に添付することは妨げられていません。

(以上、おわり)