日本の税務

2017年6月16日 (金)

国税庁 「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表

6月10日(土曜日)の日本経済新聞朝刊に「移転価格税制相談しやすく」というタイトルの記事がありましたが、どうやら情報ソースはこちらのようです。
移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~

移転価格等の国際課税への関心の高まり、企業のグローバルな国際展開、BEPSプロジェクトの進展、移転価格文書化制度の整備(平成28年度税制改正)等の移転価格を取り巻く環境変化や移転価格を巡る納税者の懸念・問題意識を踏まえ、事務運営の見直しを行うとともに、「移転価格ガイドブック」を公表し、納税者の自主的な検討・対応等に有用となる情報を発信する狙いがあるようです。

移転価格ガイドブックにおいては、3つの文書が公表されています。

Ⅰ 移転価格に関する国税庁の取組方針
   ~移転価格文書化制度の整備を踏まえた今後の方針と取組~

Ⅱ 移転価格税制の適用におけるポイント
   ~移転価格税制の実務において検討等を行う項目~

Ⅲ 同時文書化対応ガイド
   ~ローカルファイルの作成サンプル~

個々の内容については、また機会を改めて取り上げたいと思いますが、新聞記事で取り上げられていたのは、全国12カ所の国税局・事務所に相談窓口を設置するというものでした。

移転価格に関する同時文書化の対象となる取引(1つの国外関連者との取引金額が50億円以上または無形資産取引の合計金額が3億円以上)が相談の対象とのことで、窓口を利用できるのは今のところごく一部の企業に限られるようですが、今後活用が期待されるところです。

2016年9月 5日 (月)

租税回避策に開示義務?

8月22日の日本経済新聞朝刊の1面の記事からです。読まれた方も多いと思いますが、記事の内容を振り返ってみます。

・財務省と国税庁は企業や富裕層に租税回避策を指南する税理士・会計事務所・コンサルティング会社に仕組みの開示を義務付ける方針

・租税回避地(タックスヘイブン)に資産を移すなど悪質な税逃れを把握する狙い。

・適切な助言も開示対象に含む一方、拒んだ場合の罰則も設ける。

・類似の開示制度は、アメリカ、イギリス、カナダ、韓国等でも導入済。

租税回避(課税逃れ)の問題については、このブログでも取り上げたOECDのBEPSプロジェクトが契機となり、その対応が進んでいます。(余談ですが、このプロジェクトの議長は日本人の方が担当されているため、制度の導入が非常に早く進んでいるものと思われます。)

このプロジェクトの中の行動計画の1つとして、「タックス・プランニングの開示義務」というものがあります。今回取り上げられた話題は、この行動計画の内容に基づいた制度の検討が進んでいることを示唆するものと思われます。では、このプロジェクトでは、どういうことが検討されたのか少しご紹介したいと思います。

1.タックス・プランニングの開示義務制度の目的

・潜在的な租税回避スキームに関する情報を早期に入手すること
・租税回避スキームに関わる関係者(利用者及びプロモーターなど)を認識すること
・租税回避スキームの利用に対して抑止力として働くこと

2.タックス・プランニングの開示義務制度に係る基礎的要素のオプション(選択肢)

(1)開示義務者は誰か?
 ①プロモーターと納税者の双方に開示義務を課す方法
 ②プロモーターまたは納税者のいずれかに開示義務を課す方法

 ※プロモーターの定義
  報告すべき税務スキームに関する設計、販売、企画または管理について責任を有する者または関与する者(上記の活動について、重要な援助、支援または助言を行う者を含むことも可能とする)

(2)開示の対象範囲
 ・閾値(いきち:重要性基準値のようなもの)を設定するかどうか?
  以下の2つのオプションが示されています。
  ①閾値を設定せず、個別的にホールマーク(開示すべき税務スキームの特質)を定義して対象範囲を決定する方法
  ②包括的なホールマークに加え、閾値を設定して対象範囲を決定する方法

 ・ホールマークをどのように定義するか?
  包括的ホールマークと個別的ホールマークの両方を用いることが提案されています。
  ①包括的ホールマーク…新しく革新的な税務スキームを把握することが可能
  ②個別的ホールマーク…既知の税務スキームを対象とすることが可能

(3)その他
 ・開示のタイミング
  以下の2つのオプションが示されています。
  ①税務スキームの利用可能となるタイミング…プロモーターに報告義務を課す場合
  ②税務スキームを実行するタイミング…納税者に報告義務を課す場合

 ・利用者の特定方法
  以下の2つのオプションが示されています。
  ①照会番号とクライアントリストを用いる方法
  ②クライアントリストのみ用いる方法

 ※プロモーターに一義的に報告義務を課す場合は、①の方法の具体的な運用方法として、

・開示された税務スキームに対して税務当局が照会番号を発行する
・当該税務スキームを利用した納税者は税務申告書にその照会番号を記載する義務を課す
・プロモーターはその税務スキームに係る顧客リストを税務当局に報告する義務を課す

(4)開示義務制度の位置づけ・罰則
以下の点について、国内法上明記することを推奨しています。

・開示義務制度に基づく税務スキームの開示は、税務当局の承認を得たことを意味するものではない。
・開示された税務スキームの全てが租税回避を意図した取引であることを意味するものではない。
・開示義務制度の実効性を確保するため罰則規定を設けるべきである。

日本の制度についても、上記のオプション(選択肢)を基本線として議論が進められるものと思われますが、あすか税理士法人・高田和俊税理士のブログでも指摘されているように、具体的にどのような線引きが行われるのか、その動向を見守る必要があるように思われます。

(参考資料)
PwC BEPS News
OECD・BEPS 最終パッケージの公表 行動12-タックス・プランニングの開示義務
(2015年10月30日)

2016年7月25日 (月)

移転価格税制に係る文書化制度の改正⑤

今回は、まず国別報告事項(CbCレポート)の概要について確認していきましょう。

提供義務者となるのは、どの法人か?

特定多国籍企業グループの構成会社等が内国法人または国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人であるケースとして、以下の5つが考えられます。(PEとは、国内にPEを有する外国法人を指します。)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

国別報告事項については、原則として①の会社が提出を求められます。②及び③については提出義務はありません。④及び⑤については、少し注意が必要です。

  原則:提供する必要はありません。(条約方式)
  例外:最終親会社等の居住地国の税務当局が国別報告事項に相当する情報を日本の税務当局に提供できない認められる場合には、それぞれの会社等が提供するか、一の特定多国籍企業グループの構成会社等の中で代表1社が提供する必要があります。(子会社方式)

また、提供方法が国税電子申告・納税システム(e-Tax)によることとされている点も留意が必要です。

国別報告事項(CbCレポート)に記載される事項

国別報告事項に記載されるものは以下の通りとなっています。

企業グループの構成会社等の事業が行われている国・地域ごとの
 ・構成会社等の名称及び主たる事業の内容
 ・収入金額
 ・税引前当期利益の額
 ・納付税額
 ・発生税額
 ・資本金(出資金)の額
 ・利益剰余金の額
 ・従業員の数
 ・有形資産(現金及び現金同等物を除く)の額

また、使用言語が英語とされていますので、その点も留意が必要です。

最終親会社届出事項、事業概況報告事項、国別報告事項の報告様式については、国税庁のホームページで公表されています。(ちょっと場所が分かりにくいので、是非このリンクをご活用ください。)
また、PDFファイルの形で提供されていますが、国別報告事項については、XMLまたはCSVの形式により提出する必要があるとされていますので、留意が必要です。

最後に、もう一度、この新しい報告制度に、いつまでに対応しなければいけないのかを整理しておきましょう。

独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類【改正】
 →同時文書化義務が課される場合、平成29年4月1日以後に開始する事業年度の確定申告書の提出期限までに書類を用意する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成30年5~7月頃までに用意する必要がある。

最終親会社等届出事項【新設】
 →平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度の終了の日までに報告する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成29年3月末までに報告する必要がある。

事業概況報告事項【新設】
 →平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度の終了の日の翌日から1年以内に報告する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成30年3月末までに報告する必要がある。

国別事業報告事項【新設】
→平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度の終了の日の翌日から1年以内に報告する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成30年3月末までに報告する必要がある。

3月決算会社の場合、大体のものは約2年後をターゲットに準備すればいいということになりますが、かなり手間のかかる内容でもあり、早めの対応が肝要ではないかと思われます。
また、最終親会社等届出事項は、来年の3月末までの報告が必要となりますので、漏れがないようにご留意ください。(おわり)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年7月19日 (火)

移転価格税制に係る文書化制度の改正④

今回と次回に分けて、具体的にどのような情報を提供することが求められるのかを確認していくことにしましょう。今回は、最終親会社等届出事項と事業概況報告事項(マスターファイル)です。

提供義務者となるのは、どの法人か?

特定多国籍企業グループの構成会社等が内国法人または国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人であるケースとして、以下の5つが考えられます。(PEとは、国内にPEを有する外国法人を指します。)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

最終親会社等届出事項及び事業概況報告事項については、原則として①から⑤まですべての会社等が提供する必要がありますが、特例としてグループの構成会社等の中で代表1社が提供することも認められています。また、提供方法が国税電子申告・納税システム(e-Tax)によることとされている点も留意が必要です。

最終親会社等届出事項

最終親会社等届出事項として提供される情報は以下の通りとなっています。

最終親会社等の
 ・名称
 ・本店または主たる事務所の所在地
 ・法人番号
 ・代表者の氏名

内容的には、それほど複雑なものではありませんね。もし、グループの中で代表1社が提供する場合は、

代表として提供する法人の
 名称、本店等所在地、法人番号、代表者の氏名等
代表として提供する法人以外の
 名称、本店等所在地、法人番号、代表者の氏名等

を同様にe-Taxで提供することが求められます。適用開始が平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度とされており、提出期限は、最終親会社の会計年度終了の日までとされていることから、最初の提出は平成29年3月末が目途となります。この点、他の2つの報告事項よりも提出期限が早くなっているため、留意が必要です。

事業概況報告事項(マスターファイル)

事業概況報告事項(マスターファイル)として提供される情報は、「特定多国籍グループの組織構造、事業の概要、財務状況」とされており、具体的には租税特別措置法施行規則第22条の10の5①に示されていますが、要約してみたいと思います。

・構成会社等の名称、本店等所在地、関係を系統的に示した図

・事業等の概況
 構成会社等の売上など収益の重要な源泉
 主要な5種類の製商品等に係るサプライ・チェーン及び地理的な市場の概要
 グループ全体の売上等のうち5%を超える製商品等に係るサプライ・チェーン及び地理的な市場の概要
 構成会社間での役務提供に関する重要な取り決めの一覧表及びその概要
  (対価の額の設定方針、費用の負担方針、役務提供が行われる主要な拠点など)
 各構成会社等が付加価値の創出において果たす機能、負担する重要なリスク、使用する重要な資産など
 事業上の重要な合併、分割、事業譲渡等の概要

・無形固定資産などの無形資産の研究開発、所有及び使用に関する包括的な戦略

・研究開発の用に供する主要な施設及び当該研究開発を管理する場所の所在地

・構成会社間での取引において使用される重要な無形資産及びそれを所有する構成会社等の一覧表

・無形資産の研究開発に要する費用の額の負担、当該研究開発に係る役務提供、当該無形資産の使用許諾などの取り決めの一覧表

・構成会社間での研究開発及び無形資産に関連する取引に係る対価の額の設定方針

・構成会社間で行われた重要な無形固定資産の移転に関する概要
 (関係した構成会社等の名称、本店等所在地、移転した無形資産の内容、対価の額など)

・各構成会社等の資金調達方法の概要

・グループの中において中心的な金融機能を果たすものの名称、本店等所在地

・構成会社間で行われる資金の貸借に係る対価の額の設定方針

・連結財務諸表に記載された損益及び財産の状況(連結財務諸表がない場合には、当該グループの財産及び損益の状況を明らかにした書類)

・居住地国が異なる構成会社間での取引に係る対価の額の算定方法や構成会社間での所得の配分に関する事項について、一の構成会社等の居住地国の権限ある当局のみによる確認がある場合は、その確認の概要

こちらは、内容が大変複雑になっており、事前に相当の準備が必要なように思われます。適用開始が平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度からとなっており、提出期限は最終親会計年度の終了の日から1年以内とされているため、3月決算会社の場合、平成30年3月末が最初の提出の目処となります。
また、グループの中で代表1社が提出することも認められていますが、その場合の取扱いは最終親会社等届出事項の場合と同じです。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年7月11日 (月)

移転価格税制に係る文章化制度の改正③

直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループ(「特定多国籍企業グループ」といいます)の構成会社等である内国法人及び国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人は、以下の3つの文書を国税電子申告・納税システム(e-Tax)で提供しなければならないこととされました。

①最終親会社等届出事項
 →最終親会社等に関する情報
②事業概況別報告事項(マスターファイル)
 →グループの活動の全体像に関する情報
③国別報告事項(CbCレポート)
 →国別の活動状況に関する情報

特定多国籍企業グループとはどのような企業グループなのか?

①企業グループとは?

一言で言うと「連結財務諸表が作成される企業集団」ということになりますが、この制度の適用においては、「もし上場したならば連結財務諸表が作成される場合」も含まれる(非上場の企業グループも適用対象となる)ことに留意が必要です。
また、いわゆる孫会社等が存在することにより、いくつかの階層で企業グループが形成されるケースが考えられますが、その場合は最終(究極)親会社を頂点する企業集団のみが企業グループに該当するとされています。以下の【図1】及び【図2】において、制度の適用があるのは企業集団AとDとなります。

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

②多国籍企業グループとは?

これには、2つのケースが考えられます。

・企業グループの構成会社等の居住地国が2以上あるもの(下図、【図1】のケース)
・企業グループの構成会社等の居住地国は同一であるが、その構成会社の中に当該居住地国以外の国または地域に恒久的施設が存在し、その恒久的施設を通じて行われる事業から生じる所得に対し、当該国または地域において課される法人税当があるもの(下図、【図2】のケース)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

③構成会社等とは?

構成会社等については、連結範囲に含められている会社等だけではなく、重要性を理由として連結範囲から除外されている 会社等(いわゆる非連結子会社)も含まれるとされています。一方で、関連会社については、たとえ持分法適用会社であっても、構成会社等の範囲には含めない こととされていますので、留意が必要です。

④連結総収入金額1,000億円以上とは?

連結総収入金額には、売上高だけでなく、その他の収益の金額も含まれるものとされています。また、非上場会社のように連結財務諸表を実際に作成していない場合は、その金額に相当する金額とされています。


実際に報告(届出)事項の提供義務者となるのは、どの法人か?

特定多国籍企業グループの構成会社等が内国法人または国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人である場合に提供義務が生じることとなりますが、想定されるケースとして、以下の5つが考えられます。(PEとは、国内にPEを有する外国法人を指します。)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

3つの報告(届出)事項について、それぞれのケースでどのような取扱いとなるのかをまとめると、以下の通りとなります。

<最終親会社等届出事項及び事業概況報告事項>
 原則:①から⑤まですべて提供する必要があります。
 特例:グループの構成会社等の中で代表1社が提供することが認められています。

<国別報告事項>
 ①は提供する必要があり、②及び③は提供する必要はありません。
 ④及び⑤のケースでは、以下のように取り扱われます。
  原則:提供する必要はありません。(条約方式)
  例外:最終親会社等の居住地国の税務当局が国別報告事項に相当する情報を日本の税務当局に提供できない認められる場合には、それぞれの会社等が提供するか、一の特定多国籍企業グループの構成会社等の中で代表1社が提供する必要があります。(子会社方式)

このブログの読者の方は、①の会社等に所属されているケースが多いかと思いますが、②~⑤のケース(子会社に該当するケース)でも、提出義務のある事項もありますので、十分留意が必要です。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年7月 4日 (月)

移転価格税制に係る文書化制度の改正②

ある(一の)国外関連者との取引が、以下のいずれかの要件を満たす法人は、当該国外関連者との取引に係る「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)」を確定申告書の提出期限までに作成・取得し、保存しなければならない(「同時文書化義務」というそうです)こととされました。

①当該国外関連者との取引の合計金額が50億円以上である。
②当該国外関連者との無形資産取引(特許権や実用新案権等の無形固定資産やその他無形固定資産の譲渡・貸付等)の合計金額が3億円以上である。

独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)とは?

ローカルファイルに記載されるべき内容は、租税特別措置法施行規則第22条の10①に規定されています。大きくは、国外関連取引の内容を記載した書類独立企業間価格を算定するための書類に区分することができます。ちなみに、使用言語の指定はないので、日本語で作成するのが無難と言えそうです。

<国外関連取引の内容を記載した書類(要約)>

・当該国外関連取引に係る資産の明細及び役務の内容
・当該国外関連取引において法人及び国外関連者が果たす機能、負担するリスク
・当該国外関連取引において使用した無形固定資産またはその他無形資産の内容
・当該国外関連取引に係る契約書または契約の内容
・当該国外関連取引における対価の額の明細、対価の額の設定方法、その設定方法に係る交渉の内容
・独立企業間価格の算定方法及び当該国外関連取引に関する事項について日本以外の国・地域の税務当局による確認がある場合は、その確認の内容
・当該国外関連取引に係る損益の明細及びその計算過程
・当該国外関連取引に係る市場に関する分析など
・法人及び国外関連者の事業の内容、方針、組織系統
・当該国外関連取引と密接に関連する取引の有無、密接に関連する取引が存在する場合はその事情

<独立企業間価格を算定するための書類(要約)>

・法人が選定した独立企業間価格の算定方法、選定に係る重要な前提条件、その選定理由
・法人が採用した比較対象取引の選定に係る事項及びその比較対象取引の明細
・法人が利益分割法等を選定した場合の法人及び国外関連者に帰属する利益を算出するための書類
・法人が複数の国外関連取引を1つの取引として独立企業間価格の算定を行った場合の理由及び各取引の内容
比較対象取引等について差異調整を行った場合の理由及び差異調整の方法

一定の要件を満たさない国外関連取引については本当にローカルファイルは不要?

同時文書化義務が課されるのは、一定の要件(ボリューム)を満たす国外関連取引ですが、税務調査においては、それ以外の取引についても同様の書類の提示(提出)を求められることがあるとされており、この点は注意が必要です。以下、書類の提出期限についてまとめてみます。

<同時文書化義務が課される取引>

・独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)
 →45日以内の調査官が指定する日まで
・独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類
  ローカルファイルに記載された内容の基礎となる事項
  ローカルファイルに記載された内容に関連する事項  など
 →60日以内の調査官が指定する日まで

<同時文書化義務が免除される取引>

・独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類
  ローカルファイルに相当する書類
  ローカルファイルに記載された内容の基礎となる事項
  ローカルファイルに記載された内容に関連する事項  など
 →60日以内の調査官が指定する日まで

「○○日以内の調査官が指定する日まで」とは、調査官が書類の準備に通常要する日数を勘案して期日を指定することされています。(改正前は「遅滞なく」とされていました。)
よって、ローカルファイルの同時文書化義務が課される国外関連取引がない企業においても、国外関連取引について一定のボリュームがある場合は、事前にローカルファイル(のようなもの)を準備しておくことが重要であると考えられます。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年6月27日 (月)

移転価格税制に係る文書化制度の改正①

平成28年度税制改正において、租税特別措置法の一部が改正され、移転価格税制に係る文書化制度が整備されています。この改正は、以前このブログで取り上げたOECD(経済協力開発機構)のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの勧告(行動計画13「多国籍企業情報の文書化」)を踏まえたものとなっています。今回は、この税制改正の内容について、取りまとめてみたいと思います。

1.国外関連取引を行った法人が作成する文書

ある(一の)国外関連者との取引が、以下のいずれかの要件を満たす法人は、当該国外関連者との取引に係る「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)」を確定申告書の提出期限までに作成・取得し、保存しなければならない(「同時文書化義務」というそうです)こととされました。

①当該国外関連者との取引の合計金額が50億円以上である。
②当該国外関連者との無形資産取引(特許権や実用新案権等の無形固定資産やその他無形固定資産の譲渡・貸付等)の合計金額が3億円以上である。

この改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

2.多国籍企業グループが作成する文書

直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの構成会社等である内国法人及び国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人は、以下の3つの文書を国税電子申告・納税システム(e-Tax)で提供しなければならないこととされました。

①最終親会社等届出事項
 →最終親会社等に関する情報
②事業概況別報告事項(マスターファイル)
 →グループの活動の全体像に関する情報
③国別報告事項(CbCレポート)
 →国別の活動状況に関する情報

①については最終親会社の会計年度終了の日までに提供することとされており、②及び③については最終親会社の会計年度の終了の日から1年以内に提供することとされています。
この改正は、平成28年4月1日以後に開始する最終親会社の会計年度から適用されます。

1については既に導入されていた制度について改正がなされており、2については新たに制度が設けられた形となっています。
次回以降は、それぞれの制度の内容について、もう少し詳しく見ていくことにします。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年6月21日 (火)

ASBJ 平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱いを公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、6月17日、実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」を公表しました。

これは、平成28年度税制改正において建物附属設備及び構築物の法人税法上の減価償却方法について定率法が廃止され定額法のみとなったことに対応して、会計上の取扱いを示したものとなっています。

以下の要件を満たす会計方針の変更については、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされています。(第2項)

①従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理しており、建物附属設備・構築物(またはその両方)に係る減価償却方法として定率法を採用していること

平成28年4月1日以後に取得する当該すべての資産に係る減価償却方法として定額法に変更すること

この場合には、法人税法の改正に伴い実務対応報告第32号を適用し、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物について減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨と会計方針の変更による当期への影響額を記載することとされています。(第4項)

上記以外の減価償却方法の変更については、正当な理由に基づき自発的に行う会計方針の変更として取り扱うこととされています。(第3項)

本来、法令等の改正が会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当するのは、法令等によって会計処理の原則及び手続が定められている場合であり、原則的には、税法の改正によって償却限度額の算定方法が変更されたことだけでは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更には該当しないと考えられます。(第14項)

しかし、いわゆる税法基準がこれまでも会計上広く容認されてきた経緯等を踏まえ、一定の条件を満たす減価償却方法の変更については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことを妨げないこととされています。

なお、平成28年4月1日以後に建物附属設備または構築物を取得したかどうかにかかわらず、平成28年度税制改正に合わせて、これらの減価償却方法を定額法に変更する場合に、法令等の改正に準じたものとして会計基準等の改正に伴う会計方針として取り扱うことが意図されていることに留意が必要です。(第17項)

過年度遡及基準において、減価償却方法の変更の場合には、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するため、一定の事項を注記することが求められていますが、この実務対応報告によって、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う場合には、前提が異なっているため、注記事項が別途定められることとなりました。また、建物附属設備または構築物を取得していない場合にも所定の注記事項が必要となることに留意が必要です。(第18項)

この実務対応報告は、公表日後最初に終了する事業年度のみに適用することとされています。ただし、4月決算及び5月決算会社のように、公表日前に事業年度が終了している場合には、当該事業年度にこの実務対応報告を適用することができるとされています。(第5項)

今後も税制改正によって会計上の減価償却方法の取扱いが影響を受ける可能性があるため、減価償却に関する会計基準の開発を行い、いわゆる税法基準を利用することも含め、あるべき会計処理を検討する必要があると考えられますが、法人税法における損金経理要件の問題や減価償却方法が業績に与える影響の重要性を鑑みると、会計基準の開発に着手することの合意形成を図るには、まだ時間が必要とのことです。(第13項及び第14項)

2015年8月26日 (水)

国際税務の世界で話題になっているBEPSとは?

最近、新聞等でBEPSという言葉を目にしませんか? 今日は、税務の世界では重要なキーワードになりつつあるこの言葉についてまとめてみたいと思います。

1.BEPSとは何か?

BEPS
の正式な名称は「Bace Erosion and Profit Shifting」で、日本語訳は「税源浸食と利益移転」となっています。欧米の企業が様々なスキーム(手法)を用いて、法人税の負担を不当に引き下げているのではないかというような記事を新聞等で目にされた方もいらっしゃると思いますが、それがBEPSという問題なのです。

2.BEPSが生じる理由とは?

では、なぜBEPSという問題が生じるのでしょうか。1つは、国ごとに課税ルールが異なっているという問題です。単純な例ですが、国によって税率が異なる(中には法人税のない国もあります)ために、企業はできるだけ税率の低い国に所得が集まるようなスキームを組もうとするのです。

もう1つは、課税ルールが事業環境の変化に対応できていないという問題です。有名な例としてインターネットショッピングの課税という問題があります。私もアメリカの有名なインターネットショッピング会社を利用しますが、では、私がそれを利用したことによる収益はどの国で課税されるのでしょうか? アメリカでしょうか? 日本でしょうか? それとも別の国でしょうか? というような問題です。

3.BEPSを解決するために

このように、BEPSの問題は1つの国が対処しようとしても解決しない問題であることが分かります。そこで、OECD(経済開発協力機構)が中心となって、2013
7月にBEPS行動計画というものを策定し、これらの問題を解決すべく議論を行っていくことにしました。

BEPS
行動計画においては、各国税制の一貫性を確保することが必要(Coherence)、経済実態に合わせた課税が必要(Substance)、透明性の確保が必要(Transparency)という3つの基本方針を定めた上で15のテーマについて検討することになりました。20149月には、第一弾の成果物(報告書)が公表され、この秋にも第二弾が公表されると言われています。


4.BEPS行動計画で取り上げられているテーマ

BEPS
行動計画において定められた15のテーマは以下の通りです。

行動計画1)電子経済の課税上の課題への対応

(行動計画2)ハイブリッドミスマッチ取決めの効果の無効化

(行動計画3)外国子会社合算税制(CFC税制)の強化

(行動計画4)利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限

(行動計画5)透明性・実質性を考慮した有害税制への対応

(行動計画6)条約の濫用防止

(行動計画7)恒久的施設(PE)の人為的回避の防止

(行動計画8)無形資産に係る移転価格ルールの策定

(行動計画9)リスクの移転又は資本の配分に係る移転価格ルールの策定

(行動計画10)租税回避の可能性が高い取引に係る移転価格ルールの策定

(行動計画11BEPSのデータを収集・分析する方法等

(行動計画12)濫用的なタックス・プランニングの取決めの開示要求

(行動計画13)移転価格関連の文書化及び国別報告書に係るガイダンス

(行動計画14)相互協議の効果的実施

(行動計画15)多国間協定

どんな議論なのかイメージが湧いてきそうなものもあれば、「ハイブリッドミスマッチ」なんて、さっぱり何のことだか分からないものもありますね(苦笑)

ですが、BEPSの問題を解決するためには、これらの議論の結果(報告書で提言された内容)が各国の税制(税法)に反映されていくことが重要であり、日本も例外ではありません。(既に、これまでの税制改正で影響を受けているものもあるそうです。)

そこで、次回から数回にわたって、このBEPS行動計画でどのような議論が行われているのかということについて、少し整理してみたいと思います。

2015年4月 7日 (火)

平成27年度税制改正法案の成立と税効果会計

既に新聞報道等もなされていますが、平成27年度税制改正に関する法案が3月31日に成立し、公布されました。

これにより、法人税率が現行の25.5%から23.9%に引き下げられ、事業税(所得割)の税率も段階的に引き下げられることとなります。よって、平成27年3月期決算から税効果会計に用いる実効税率の見直しが必要となるという点はご承知の方も多いかと思います。

一方で、超過税率を採用している都道府県ににおいては、条例の改正が3月末までに公布されるかどうかが懸案となっていましたが、東京都を除く各都道府県は3月末までに改正条例を公布しており、原則的な取扱いに基づいて実効税率を見直すこととなりそうです。

東京都は条例の公布が4月1日となったため、厳密には原則的な取扱いが認められませんが、この点については、3月6日に開催された企業会計基準委員会(ASBJ)の議事概要の中で、

「条例改正後の標準税率+(条例改正前の超過税率-条例改正前の標準税率)」を用いて(条例改正後の超過税率とみなして)、法定実効税率を計算する。

との見解が示されています。

また、重要性の観点から、改正後の超過税率を適用することも認められるのではないかとの意見もあるようですので、監査法人の先生方とも十分協議された上で、対応を検討されることが望ましいと考えられます。

(経営財務 3207号 2015年4月6日より)