企業の海外進出

2017年3月 9日 (木)

タイ投資委員会 テクノロジーベースの恩典新設

タイ投資委員会(BOI)は、科学技術の発展に重点を置いた「タイランド4.0」の実現に向けた新たな投資優遇措置を発表しました。

これまでのセクターベースの恩典に加え、テクノロジーベースの恩典が提供されることになります。ターゲットとするコア技術については、

・バイオテクノロジー
 →細胞培養、遺伝子工学、生物情報工学 など

・ナノテクノロジー
 →薬物送達システム、ナノファイバー、ナノマテリアル など

・新素材テクノロジー
 →先進的触媒、複合材料、機能材料 など

・デジタルテクノロジー
 →ビッグデータ解析、IoT、人口知能(AI) など

の4分野41項目に及んでおり、これらのR&D研究開発投資を積極的に誘致する方針のようです。

まず、投資奨励法の改正により、これらのテクノノロジーベースの投資については法人所得税の免除が10年間になり(これまでの投資優遇では8年間が最長)、そのプロジェクトの価値に応じて追加の恩典(メリットベースの優遇措置)が1~3年間付与されます。
また、研究開発(関連する試験を含む)に使用するために輸入する物品(試作材料、化学薬品、動植物など)の輸入関税が免除されます。関税免除期間は当初1年とされていますが、適宜延長されるとのことです。
なお、投資優遇措置を受けるためには、企業単独での進出ではなく、タイの研究機関・大学との共同研究が条件となります。

また、新たに特定産業競争力強化法が制定され、10のターゲット業種の研究開発・技術革新・専門家育成にかかわるプロジェクトについては、100億バーツの基金から補助金が支給される制度も導入されるとのことです。(BOIが認可することが条件となります。) 対象となる10のターゲット業種については、以下の通りです。

・次世代自動車
・スマートエレクトロニクス
・ハイエンド観光及び健康観光
・農業及びバイオテクノロジー
・食品加工
・産業ロボット
・医療ハブ
・航空
・バイオ燃料及びバイオ化学
・デジタル

また、この10業種については、東部経済回廊(EEC)地域への投資促進(優遇)政策も合わせて公表されており、今後、新たな分野でのタイへの進出が期待されるところです。

詳細は、タイ投資委員会のホームページでご確認ください。また、あすかアソシエイツ(あすかコンサルティング株式会社/あすか税理士法人)では、タイに進出される際の信頼できる専門家のご案内もさせて頂いております。ご関心のある方は、是非お問い合わせください。

<参考文献>
バンコク週報 第1775号(2017年2月25日)

2017年2月 8日 (水)

海外に子会社を持つ企業が過去最高水準に

2月6日の日本経済新聞朝刊の記事からです。

経済産業省が実施した2015年度の企業活動基本調査によると、海外に子会社を持つ企業の割合が19.9%となり、調査開始以降では過去最高水準になったとのことです。

特に、製造業ではその傾向が顕著で、海外に持つ企業の割合は27.8%、1社当たりの海外子会社の数は平均8.1社にもなっています。

また、製造業の海外子会社の地域別構成比では、中国を除くアジア地域が確実に増加している一方で、中国は減少傾向が続いており、ASEAN諸国を中心とした製造拠点の移転傾向が続いている傾向が読み取れます。


図表1 製造業の国内・海外別子会社保有企業比率


図表2 製造業の1企業当たり子会社保有社数


図表3 製造業の海外子会社地域別構成比


(出典)経済産業省 平成28年企業活動基本調査速報

2017年1月 8日 (日)

関西企業ベトナムへの進出意欲高まる

2016年12月22日の日本経済新聞朝刊の記事からです。日本貿易振興機構(JETRO)によると、2016年4月から9月の海外投資案件に関する相談でベトナムに関するものが初めて中国を上回ったとのことです。記事の内容を要約してみます。

・労働力として人件費の安さだけでなく消費市場として注目する企業も増えた。
・中国以外に拠点を分散する「チャイナプラスワン」が広がっている。
・ハノイの工場労働者の人件費は中国沿岸部の3~4割の水準。
・ベトナムと欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)(2018年年初にも発効予定)に対する期待感があり輸出拠点として活用した企業が増えている。
・高い経済成長を背景にベトナムの人口は1億人に迫る勢いであり、中間層を狙った飲食業や小売業の進出も増えている。
・2016年4月から9月は、タイやフィリピンへの投資相談も増加した一方、中国は人件費の上昇から撤退や縮小の相談が多い。

また、日本政策金融公庫が2016年10月に公表した「中小企業事業 取引先海外現地法人の業況調査報告」においても、投資有望国(中期的な事業展開先)の1位としてベトナムが挙げられています。その理由としては、

①労働力が低廉豊富
②既存取引先が既に進出
②優秀な人材確保が可能
④現地市場の将来性が高い
⑤地理的に優位である

となっており、先程の記事の内容を裏付ける結果となっています。一方で、現在ベトナムに進出されている企業が直面している問題点としては、

①労務費の上昇
②管理者の確保
③原材料の調達
④現地のワーカー等に対する教育
⑤ワーカーの確保

が挙げられており、今後進出を考えている企業の目論見とは少し矛盾する結果も見受けられます。

海外進出にあたっては、十分なフィジビリティスタディ(feasibility study 実行可能性調査)を行い、進出のメリット・デメリットを慎重に検討しておくことが重要と考えられ、現地の専門家とコンタクトを取ることは必須と考えられます。あすかアソシエイツ(あすかコンサルティング株式会社・あすか税理士法人) では信頼できる現地専門家のご紹介も行っていますので、是非ご関心のある方はお問い合わせください。

※こちらのブログもご参考まで

2016年9月6日投稿 「海外出張に行ってきました」

2015年7月7日投稿 「海外出張に行ってきました」

2016年11月23日 (水)

タイ投資委員会 IHQ及びITC質疑応答集を公開

タイ投資委員会(BOI)は、公式ホームページにIHQ(国際地域統括本部)及びITC(国際貿易センター)に関する質疑応答集を掲載しています。

タイ投資委員会の質疑応答ページはこちら

IHQ(国際地域統括本部)の概要はこちら(私のブログにリンクしています)

ITC(国際貿易センター)の概要はこちら(私のブログにリンクしています)

日本語での解説も用意されていますので、関心のある方は是非活用されてはいかがでしょうか。

(出典)バンコク週報 第1760号

2016年9月 6日 (火)

海外出張に行ってきました

8月30日(火)~9月4日(日)まで海外出張に行ってきました。

あすかアソシエイツ(あすか税理士法人/あすかコンサルティング㈱)は、海外に事務所を持たない会計事務所ですが、海外の会計・税務・事業進出等に関するご相談を受けることも少なくありません。

このような場合、我々の守備範囲外ということで、「現地の会計事務所に直接お問い合わせください」とお願いすることもできるのですが、それではあまりに寂しいということで、2年前からアジアの国・地域を中心に、現地の会計事務所とのネットワーク作りに取り組んでいます。

今回は、ベトナムとシンガポールを訪問しました。特に、ベトナム(ホーチミン市)は初めての訪問でしたが、訪れた会計事務所の皆様には非常に丁寧に応対をして頂き、事務所の状況だけでなく、経済情勢や会計・税務のトピックスまで、幅広く教えて頂くことができました。ご対応頂いた皆様には、この場を借りて、あらためて厚く御礼を申し上げます。

ホーチミン市内は、自動車やバイクがたくさん走っており、街の中心部では地下鉄の工事も行われる(2020年開通予定だそうです)など、街全体に活気が感じられました。また、日本企業の進出状況についても、従来の製造業だけでなく、商社やIT関連など業種が幅広くなってきており、毎年数百社の進出案件があるとお聞きしました。

特に、IT関連企業はベトナム政府が外国企業の誘致に熱心だそうで、投資の優遇措置も整備されているようです。その背景には、ベトナムの男子学生は理系に進む人が多く、優秀なIT技術者が相当数いるということもあるようです。(初めて知りました)

弊社では、既に海外の会計事務所・進出コンサルタントのご紹介実績もございますので、海外進出にご関心のある方は、是非一度ご相談を頂ければと思います。なお、出張の様子につきましては、あすか税理士法人・高田和俊税理士のブログで、詳しく取り上げられていますので、是非そちらもご覧ください。

<ホーチミン市内の様子>14729940265851
綺麗な朝焼けの様子ですが、実際は早朝からかなり蒸し暑かったです。

14729940339411
初日、ホーチミンに到着後に食事をした市内のレストランからの写真です。時間は9時過ぎだったのですが、車もバイクも人もかなりたくさんいますね。

2016年7月25日 (月)

移転価格税制に係る文書化制度の改正⑤

今回は、まず国別報告事項(CbCレポート)の概要について確認していきましょう。

提供義務者となるのは、どの法人か?

特定多国籍企業グループの構成会社等が内国法人または国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人であるケースとして、以下の5つが考えられます。(PEとは、国内にPEを有する外国法人を指します。)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

国別報告事項については、原則として①の会社が提出を求められます。②及び③については提出義務はありません。④及び⑤については、少し注意が必要です。

  原則:提供する必要はありません。(条約方式)
  例外:最終親会社等の居住地国の税務当局が国別報告事項に相当する情報を日本の税務当局に提供できない認められる場合には、それぞれの会社等が提供するか、一の特定多国籍企業グループの構成会社等の中で代表1社が提供する必要があります。(子会社方式)

また、提供方法が国税電子申告・納税システム(e-Tax)によることとされている点も留意が必要です。

国別報告事項(CbCレポート)に記載される事項

国別報告事項に記載されるものは以下の通りとなっています。

企業グループの構成会社等の事業が行われている国・地域ごとの
 ・構成会社等の名称及び主たる事業の内容
 ・収入金額
 ・税引前当期利益の額
 ・納付税額
 ・発生税額
 ・資本金(出資金)の額
 ・利益剰余金の額
 ・従業員の数
 ・有形資産(現金及び現金同等物を除く)の額

また、使用言語が英語とされていますので、その点も留意が必要です。

最終親会社届出事項、事業概況報告事項、国別報告事項の報告様式については、国税庁のホームページで公表されています。(ちょっと場所が分かりにくいので、是非このリンクをご活用ください。)
また、PDFファイルの形で提供されていますが、国別報告事項については、XMLまたはCSVの形式により提出する必要があるとされていますので、留意が必要です。

最後に、もう一度、この新しい報告制度に、いつまでに対応しなければいけないのかを整理しておきましょう。

独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類【改正】
 →同時文書化義務が課される場合、平成29年4月1日以後に開始する事業年度の確定申告書の提出期限までに書類を用意する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成30年5~7月頃までに用意する必要がある。

最終親会社等届出事項【新設】
 →平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度の終了の日までに報告する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成29年3月末までに報告する必要がある。

事業概況報告事項【新設】
 →平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度の終了の日の翌日から1年以内に報告する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成30年3月末までに報告する必要がある。

国別事業報告事項【新設】
→平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度の終了の日の翌日から1年以内に報告する必要がある。
 ※3月決算会社の場合、平成30年3月末までに報告する必要がある。

3月決算会社の場合、大体のものは約2年後をターゲットに準備すればいいということになりますが、かなり手間のかかる内容でもあり、早めの対応が肝要ではないかと思われます。
また、最終親会社等届出事項は、来年の3月末までの報告が必要となりますので、漏れがないようにご留意ください。(おわり)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年7月19日 (火)

移転価格税制に係る文書化制度の改正④

今回と次回に分けて、具体的にどのような情報を提供することが求められるのかを確認していくことにしましょう。今回は、最終親会社等届出事項と事業概況報告事項(マスターファイル)です。

提供義務者となるのは、どの法人か?

特定多国籍企業グループの構成会社等が内国法人または国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人であるケースとして、以下の5つが考えられます。(PEとは、国内にPEを有する外国法人を指します。)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

最終親会社等届出事項及び事業概況報告事項については、原則として①から⑤まですべての会社等が提供する必要がありますが、特例としてグループの構成会社等の中で代表1社が提供することも認められています。また、提供方法が国税電子申告・納税システム(e-Tax)によることとされている点も留意が必要です。

最終親会社等届出事項

最終親会社等届出事項として提供される情報は以下の通りとなっています。

最終親会社等の
 ・名称
 ・本店または主たる事務所の所在地
 ・法人番号
 ・代表者の氏名

内容的には、それほど複雑なものではありませんね。もし、グループの中で代表1社が提供する場合は、

代表として提供する法人の
 名称、本店等所在地、法人番号、代表者の氏名等
代表として提供する法人以外の
 名称、本店等所在地、法人番号、代表者の氏名等

を同様にe-Taxで提供することが求められます。適用開始が平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度とされており、提出期限は、最終親会社の会計年度終了の日までとされていることから、最初の提出は平成29年3月末が目途となります。この点、他の2つの報告事項よりも提出期限が早くなっているため、留意が必要です。

事業概況報告事項(マスターファイル)

事業概況報告事項(マスターファイル)として提供される情報は、「特定多国籍グループの組織構造、事業の概要、財務状況」とされており、具体的には租税特別措置法施行規則第22条の10の5①に示されていますが、要約してみたいと思います。

・構成会社等の名称、本店等所在地、関係を系統的に示した図

・事業等の概況
 構成会社等の売上など収益の重要な源泉
 主要な5種類の製商品等に係るサプライ・チェーン及び地理的な市場の概要
 グループ全体の売上等のうち5%を超える製商品等に係るサプライ・チェーン及び地理的な市場の概要
 構成会社間での役務提供に関する重要な取り決めの一覧表及びその概要
  (対価の額の設定方針、費用の負担方針、役務提供が行われる主要な拠点など)
 各構成会社等が付加価値の創出において果たす機能、負担する重要なリスク、使用する重要な資産など
 事業上の重要な合併、分割、事業譲渡等の概要

・無形固定資産などの無形資産の研究開発、所有及び使用に関する包括的な戦略

・研究開発の用に供する主要な施設及び当該研究開発を管理する場所の所在地

・構成会社間での取引において使用される重要な無形資産及びそれを所有する構成会社等の一覧表

・無形資産の研究開発に要する費用の額の負担、当該研究開発に係る役務提供、当該無形資産の使用許諾などの取り決めの一覧表

・構成会社間での研究開発及び無形資産に関連する取引に係る対価の額の設定方針

・構成会社間で行われた重要な無形固定資産の移転に関する概要
 (関係した構成会社等の名称、本店等所在地、移転した無形資産の内容、対価の額など)

・各構成会社等の資金調達方法の概要

・グループの中において中心的な金融機能を果たすものの名称、本店等所在地

・構成会社間で行われる資金の貸借に係る対価の額の設定方針

・連結財務諸表に記載された損益及び財産の状況(連結財務諸表がない場合には、当該グループの財産及び損益の状況を明らかにした書類)

・居住地国が異なる構成会社間での取引に係る対価の額の算定方法や構成会社間での所得の配分に関する事項について、一の構成会社等の居住地国の権限ある当局のみによる確認がある場合は、その確認の概要

こちらは、内容が大変複雑になっており、事前に相当の準備が必要なように思われます。適用開始が平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度からとなっており、提出期限は最終親会計年度の終了の日から1年以内とされているため、3月決算会社の場合、平成30年3月末が最初の提出の目処となります。
また、グループの中で代表1社が提出することも認められていますが、その場合の取扱いは最終親会社等届出事項の場合と同じです。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年7月11日 (月)

移転価格税制に係る文章化制度の改正③

直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループ(「特定多国籍企業グループ」といいます)の構成会社等である内国法人及び国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人は、以下の3つの文書を国税電子申告・納税システム(e-Tax)で提供しなければならないこととされました。

①最終親会社等届出事項
 →最終親会社等に関する情報
②事業概況別報告事項(マスターファイル)
 →グループの活動の全体像に関する情報
③国別報告事項(CbCレポート)
 →国別の活動状況に関する情報

特定多国籍企業グループとはどのような企業グループなのか?

①企業グループとは?

一言で言うと「連結財務諸表が作成される企業集団」ということになりますが、この制度の適用においては、「もし上場したならば連結財務諸表が作成される場合」も含まれる(非上場の企業グループも適用対象となる)ことに留意が必要です。
また、いわゆる孫会社等が存在することにより、いくつかの階層で企業グループが形成されるケースが考えられますが、その場合は最終(究極)親会社を頂点する企業集団のみが企業グループに該当するとされています。以下の【図1】及び【図2】において、制度の適用があるのは企業集団AとDとなります。

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

②多国籍企業グループとは?

これには、2つのケースが考えられます。

・企業グループの構成会社等の居住地国が2以上あるもの(下図、【図1】のケース)
・企業グループの構成会社等の居住地国は同一であるが、その構成会社の中に当該居住地国以外の国または地域に恒久的施設が存在し、その恒久的施設を通じて行われる事業から生じる所得に対し、当該国または地域において課される法人税当があるもの(下図、【図2】のケース)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

③構成会社等とは?

構成会社等については、連結範囲に含められている会社等だけではなく、重要性を理由として連結範囲から除外されている 会社等(いわゆる非連結子会社)も含まれるとされています。一方で、関連会社については、たとえ持分法適用会社であっても、構成会社等の範囲には含めない こととされていますので、留意が必要です。

④連結総収入金額1,000億円以上とは?

連結総収入金額には、売上高だけでなく、その他の収益の金額も含まれるものとされています。また、非上場会社のように連結財務諸表を実際に作成していない場合は、その金額に相当する金額とされています。


実際に報告(届出)事項の提供義務者となるのは、どの法人か?

特定多国籍企業グループの構成会社等が内国法人または国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人である場合に提供義務が生じることとなりますが、想定されるケースとして、以下の5つが考えられます。(PEとは、国内にPEを有する外国法人を指します。)

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                           (出典)国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし

3つの報告(届出)事項について、それぞれのケースでどのような取扱いとなるのかをまとめると、以下の通りとなります。

<最終親会社等届出事項及び事業概況報告事項>
 原則:①から⑤まですべて提供する必要があります。
 特例:グループの構成会社等の中で代表1社が提供することが認められています。

<国別報告事項>
 ①は提供する必要があり、②及び③は提供する必要はありません。
 ④及び⑤のケースでは、以下のように取り扱われます。
  原則:提供する必要はありません。(条約方式)
  例外:最終親会社等の居住地国の税務当局が国別報告事項に相当する情報を日本の税務当局に提供できない認められる場合には、それぞれの会社等が提供するか、一の特定多国籍企業グループの構成会社等の中で代表1社が提供する必要があります。(子会社方式)

このブログの読者の方は、①の会社等に所属されているケースが多いかと思いますが、②~⑤のケース(子会社に該当するケース)でも、提出義務のある事項もありますので、十分留意が必要です。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年7月 4日 (月)

移転価格税制に係る文書化制度の改正②

ある(一の)国外関連者との取引が、以下のいずれかの要件を満たす法人は、当該国外関連者との取引に係る「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)」を確定申告書の提出期限までに作成・取得し、保存しなければならない(「同時文書化義務」というそうです)こととされました。

①当該国外関連者との取引の合計金額が50億円以上である。
②当該国外関連者との無形資産取引(特許権や実用新案権等の無形固定資産やその他無形固定資産の譲渡・貸付等)の合計金額が3億円以上である。

独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)とは?

ローカルファイルに記載されるべき内容は、租税特別措置法施行規則第22条の10①に規定されています。大きくは、国外関連取引の内容を記載した書類独立企業間価格を算定するための書類に区分することができます。ちなみに、使用言語の指定はないので、日本語で作成するのが無難と言えそうです。

<国外関連取引の内容を記載した書類(要約)>

・当該国外関連取引に係る資産の明細及び役務の内容
・当該国外関連取引において法人及び国外関連者が果たす機能、負担するリスク
・当該国外関連取引において使用した無形固定資産またはその他無形資産の内容
・当該国外関連取引に係る契約書または契約の内容
・当該国外関連取引における対価の額の明細、対価の額の設定方法、その設定方法に係る交渉の内容
・独立企業間価格の算定方法及び当該国外関連取引に関する事項について日本以外の国・地域の税務当局による確認がある場合は、その確認の内容
・当該国外関連取引に係る損益の明細及びその計算過程
・当該国外関連取引に係る市場に関する分析など
・法人及び国外関連者の事業の内容、方針、組織系統
・当該国外関連取引と密接に関連する取引の有無、密接に関連する取引が存在する場合はその事情

<独立企業間価格を算定するための書類(要約)>

・法人が選定した独立企業間価格の算定方法、選定に係る重要な前提条件、その選定理由
・法人が採用した比較対象取引の選定に係る事項及びその比較対象取引の明細
・法人が利益分割法等を選定した場合の法人及び国外関連者に帰属する利益を算出するための書類
・法人が複数の国外関連取引を1つの取引として独立企業間価格の算定を行った場合の理由及び各取引の内容
比較対象取引等について差異調整を行った場合の理由及び差異調整の方法

一定の要件を満たさない国外関連取引については本当にローカルファイルは不要?

同時文書化義務が課されるのは、一定の要件(ボリューム)を満たす国外関連取引ですが、税務調査においては、それ以外の取引についても同様の書類の提示(提出)を求められることがあるとされており、この点は注意が必要です。以下、書類の提出期限についてまとめてみます。

<同時文書化義務が課される取引>

・独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)
 →45日以内の調査官が指定する日まで
・独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類
  ローカルファイルに記載された内容の基礎となる事項
  ローカルファイルに記載された内容に関連する事項  など
 →60日以内の調査官が指定する日まで

<同時文書化義務が免除される取引>

・独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類
  ローカルファイルに相当する書類
  ローカルファイルに記載された内容の基礎となる事項
  ローカルファイルに記載された内容に関連する事項  など
 →60日以内の調査官が指定する日まで

「○○日以内の調査官が指定する日まで」とは、調査官が書類の準備に通常要する日数を勘案して期日を指定することされています。(改正前は「遅滞なく」とされていました。)
よって、ローカルファイルの同時文書化義務が課される国外関連取引がない企業においても、国外関連取引について一定のボリュームがある場合は、事前にローカルファイル(のようなもの)を準備しておくことが重要であると考えられます。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

2016年6月27日 (月)

移転価格税制に係る文書化制度の改正①

平成28年度税制改正において、租税特別措置法の一部が改正され、移転価格税制に係る文書化制度が整備されています。この改正は、以前このブログで取り上げたOECD(経済協力開発機構)のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの勧告(行動計画13「多国籍企業情報の文書化」)を踏まえたものとなっています。今回は、この税制改正の内容について、取りまとめてみたいと思います。

1.国外関連取引を行った法人が作成する文書

ある(一の)国外関連者との取引が、以下のいずれかの要件を満たす法人は、当該国外関連者との取引に係る「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)」を確定申告書の提出期限までに作成・取得し、保存しなければならない(「同時文書化義務」というそうです)こととされました。

①当該国外関連者との取引の合計金額が50億円以上である。
②当該国外関連者との無形資産取引(特許権や実用新案権等の無形固定資産やその他無形固定資産の譲渡・貸付等)の合計金額が3億円以上である。

この改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

2.多国籍企業グループが作成する文書

直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの構成会社等である内国法人及び国内に恒久的施設(PE)を有する外国法人は、以下の3つの文書を国税電子申告・納税システム(e-Tax)で提供しなければならないこととされました。

①最終親会社等届出事項
 →最終親会社等に関する情報
②事業概況別報告事項(マスターファイル)
 →グループの活動の全体像に関する情報
③国別報告事項(CbCレポート)
 →国別の活動状況に関する情報

①については最終親会社の会計年度終了の日までに提供することとされており、②及び③については最終親会社の会計年度の終了の日から1年以内に提供することとされています。
この改正は、平成28年4月1日以後に開始する最終親会社の会計年度から適用されます。

1については既に導入されていた制度について改正がなされており、2については新たに制度が設けられた形となっています。
次回以降は、それぞれの制度の内容について、もう少し詳しく見ていくことにします。(つづく)

<参考資料>
国税庁 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

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