IFRS

2018年9月18日 (火)

ASBJ 連結財務諸表における在外子会社等の会計処理に関する取扱いを改正

9月14日、企業会計基準委員会は「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号)を改正しました。

IFRS第9号「金融商品」では、資本性金融商品(株式等)の公正価値の変動を原則として当期の損益に含めることとしていますが、その他の包括利益に表示することも認めています。(ただし、この場合は売却損益や減損損失(評価損)も計上されません。)

今回の改正で、在外子会社がその他の包括利益での表示を選択している場合は、連結決算手続上、売却損益相当額や減損損失相当額を当期の損益として修正することが求められました。

この取扱いは、IFRSのエンドースメント手続(修正国際基準の取扱い)を参考にしたものとなっています。

なお、関連会社についても、「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号)が改正されており、同様の取扱いとなります。

改正後の実務対応報告は、原則として2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用となります。

2018年9月14日 (金)

国際会計基準 のれんの償却処理検討へ

9月14日の日本経済新聞朝刊によると、国際会計基準審議会(IASB)のハンス・フーガーホースト議長は、のれんの会計処理に関する議論を始める意向を表明したそうです。

議事の概要は

・国際会計基準(IFRS)では、のれんの償却は求められない一方で、減損処理の検討が必要。

・しかし、減損処理に関する企業の判断は「楽観的」で「遅すぎる」傾向があるため、再検討が必要との認識。

・2021年にも結論を出す予定。

IFRSの「のれん」の会計処理については、現状の方法にも一定の支持がありますが、日本は償却処理の義務付けを主張してきたという経緯があります。今回のお話は、「日本が国際会計基準を動かす」事例になる可能性があり、注目されます。

それにしても、日経の1面にでかでかと書かれていたので、最初は何事かと思いました…(苦笑)

2017年10月31日 (火)

ASBJ 「修正国際基準」の改正案を公表

10月31日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「修正国際基準」といいます。)の改正案を公表しています。

今回の改正案では、2016年9月30日までに国際会計基準審議会(IASB)より公表された会計基準等のうち、2017年12月31日までに発行するものを対象にエンドースメント手続を実施した結果が反映されており、特に、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」がエンドースメント手続の対象となっています。

エンドースメント手続を実施した結果、IFRS第15号の以下の内容については、削除または修正を行うかどうかの検討が行われたようです。

○ 支配の移転の考え方の工事契約への適用
○ 開示(注記事項)
○ その他の項目:原価回収基準、棚卸資産以外(固定資産等)の売却の会計処理

ただ、いずれの項目についても、IFRS第15号の内容を削除または修正しないことと結論付けられており、「修正国際基準」を適用する場合においても、IFRS第15号の内容はそのまま受け入れる(適用する)ことが求められる方向性のようです。

2017年4月11日 (火)

ASBJ 連結財務諸表における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱いを改正

企業会計基準委員会(ASBJ)は、3月29日、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号)の改正版を公表しました。

従前、在外子会社または在外関連会社に限定して、これらの会社が国際会計基準(IFRS)または米国会計基準(US-GAAP)を適用している場合は、連結決算において、当面の間それらを利用することが認められていました。

今回の改正では、これまでのケースに加えて、国内子会社が指定国際会計基準または修正国際基準(JMIS)に準拠した連結財務諸表を作成して有価証券報告書により開示している場合(開示予定の場合も含む)にも、当面の間それらを利用することが認められました。

ただし、いずれのケースにおいても

①のれんの償却
②退職給付会計における数理計算上の差異のリサイクリング処理
③研究開発費の支出時費用処理
④投資不動産の取得原価評価及び減価償却費の計上

の4点については、所定の修正が必要とされています。(この点は変更なし。)

改正後の実務対応報告は、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されますが、公表日(3月29日)以後、適用することも認められています。

また、今回の改正により、指定国際会計基準または修正国際基準に準拠した連結財務諸表を利用して連結決算を行う場合は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われます。

2016年9月20日 (火)

IFRSにおける財務業績の議論から②

(9/12投稿「IFRSにおける財務業績の議論から①」からつづく)

4.OCIはリサイクリングすべきか?

IASBが2015年に公表した概念フレームワークの公開草案(ED)では、すべての収益・費用は損益計算書に含められるという推定は、一定の場合には反証可能である(=OCIに含められる)とされていました。

1つの例として、財政状態計算書のために現在価値を用いることがレリバント(目的適合的)な場合において、損益計算書のためには異なる測定基礎による収益・費用をを用いる方がレリバントである場合に、この差異がOCIになるとされていました。(日本の「その他有価証券」の会計処理をイメージして頂くと分かりやすいかと思われます。)

また、一度OCIに計上された項目をいつリサイクリングすべきか(損益計算書に含め直すべきか)という点については、特段のガイダンスは示されず、個別のIFRSを開発する際に決定するとされていました。

この提案に対して、様々なコメントが寄せられたとされていますが、2016年6月には以下の暫定決定がなされています。

・原則として、OCIに含めた収益・費用は、リサイクリングによって当期の損益計算書の情報のレリバンス(目的適合的であること)または忠実な表現が高まる場合にリサイクリングすべきである。

・OCIに含めた収益・費用がリサイクリングされない場合がある。例えば、当期の損益計算書の情報レリバンスまたは忠実な表現を高めるために、リサイクリングを行うべき期間または金額を識別するための明確な基礎がない場合である。

・OCIに含めた収益・費用をリサイクリングすべきかどうか、いつリサイクリングすべきなのかに関する決定は、基準設定の際にIASBだけが行うことができる。こうした決定を行う場合には、リサイクリングがなぜ損益計算書の情報のレリバンスまたは忠実な表現を高めるのかを説明する。

OCIに含めた収益・費用がリサイクリングされない場合の例として、リサイクリングの時期・金額についての明確な基礎がない場合が挙げられていますが、どのような場合に、明確な基礎がある(または、ない)とされるのでしょうか?

2015年公表のEDでは、二重測定アプローチと呼ばれる考え方が示されています。これは、損益計算書における収益・費用が、財政状態計算書における資産・負債の測定基礎とは別の測定基礎(第2の測定基礎)によって算定される場合に、この第2の測定基礎による資産・負債の測定値が、独立した意味を有している(損益計算書に含めた金額の単なる累計値ではない)かどうかで判断するというものです。すなわち、

独立した意味を有している場合

資産・負債の認識を中止したことにより、これまで損益計算書に含められていなかった当該資産・負債に関するすべての収益・費用が当期純利益に含められることとなるため、リサイクリングは必然的な結果となる。

独立した意味を有していない場合

リサイクリングはそもそも必然的ではなく、リサイクリングが損益計算書の情報のレリバンスまたは忠実な表現を高めると判断される必要がある。

各会計基準の検討の中で、第2の測定基礎による資産・負債の測定値が独立した意味を有するのかということも非常に難しい議論になると思われます。
また、日本のように、この問題は報告システムそのものの問題(クリーンサープラス関係を満たした包括利益と当期純利益を1組の財務諸表で示すためにOCIのリサイクリングは必須である)という意見もあります。
さらに、前回の投稿でも触れましたが、当期純利益とOCIの線引きの議論の中で、我々が当然OCIに含められるべきと考えているものが、当期純利益に含められるべきと判断される可能性もあります。

このようにIFRSにおける財務業績の議論は、一定の方向性を見出しつつありますが、まだまだ今後の動向に留意が必要と言えそうです。

(参考資料)

会計・監査ジャーナル No.734 2016年9月号
 会議報告 国際会計基準審議会(IASB)会議概要(2016年6月) 松尾洋孝

経営財務 3272号 2016年8月8日
 Q&Aコーナー 気になる論点(166)IASBにおける財務業績の議論(1)-当期純利益の位置づけ- 秋葉賢一

経営財務 3273号 2016年8月22日
 Q&Aコーナー 気になる論点(167)IASBにおける財務業績の議論(2)-OCIのリサイクリング- 秋葉賢一

 
                         

2016年9月12日 (月)

IFRSにおける財務業績の議論から①

最近、国際会計基準(IFRS)関連のネタが書けていませんでしたが、少し気になる記事を見つけましたので、触れてみたいと思います。

国際会計基準審議会(IASB)は、2016年6月にIASBの概念フレームワークを討議し、財務業績に関する情報について、以下の暫定決定を行ったとされています。

・損益計算書を当期の企業の財務業績に関する情報の主要な源泉とするが、損益計算書の目的を示すことはしない。

・収益及び費用は損益計算書に含めるべきであるという原則を示すが、資産または負債の現在価額の変動をその他の包括利益(OCI)に含めることによって、情報の目的適合性または忠実な表現が高められる場合は除く。収益及び費用をOCIに含めることに関する決定は基準設定の際にIASBのみができるものとする。IASBはなぜ収益及び費用をOCIに含めることが情報の目的適合性または忠実な表現を高められるのかを説明することが求められる。

・原則として、OCIに含めた収益及び費用はリサイクル(組替調整)によって情報の目的適合性または忠実な表現を高められる場合にリサイクルすべきである。

・OCIに含めた収益及び費用がリサイクルされない場合がもある。
(例)情報の目的適合性または忠実な表現を高めるために、リサイクルを行う期間または金額を識別するための明確な基礎がない場合

・OCIに含めた収益及び費用をリサイクルすべきかどうか、いつリサイクルすべきかという決定は基準設定の際にIASBができるものとする。IASBはリサイクルが情報の目的適合性または忠実な表現を高めることになる理由を説明することが求められる。

1.議論の経過

IASBは、その前身である国際会計基準委員会(IASC)が1989年に公表した「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」を2001年に採用し、その後一部改正を経て今日に至っています。
しかし、2012年には概念フレームワークの見直しに関する議論を再開し、2015年5月には公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」を公表し、これに対して寄せられたコメントについて議論を行っています。

2.損益計算書の目的が示されない?

2015年公表のEDでは、財務業績計算書における収益と費用は①当期純利益の内訳項目になるものと②OCIの内訳項目になるものに分類されることを提案した上で、損益計算書(当期純利益を表す計算書)の目的を以下のように提案していました。

・企業がその期間に自らの経済的資源に対して得たリターンを描写すること
・将来キャッシュ・フローの見通しの評価と企業の資源に関する経営者の受託責任の評価に有用な情報を提供すること

しかし、その一方で、IASBは当期純利益とOCIを区別する唯一の性格や基礎的な概念はないとし、適切に当期純利益を定義することは実行可能ではないという立場を採っていました。EDに対しては、当期純利益を記述または定義すべきというコメントが多く寄せられましたが(中には当期純利益の定義の提案もあったようです)、最終的にはEDを修正するという結論には至らなかったようです。

また、「損益計算書の目的だけを設けて、他の計算書や注記の目的を設けないことは正当化できない」「リターンという用語を定義しておらず不明確である」といったコメントも寄せられたとのことであり、前述のような暫定決定となったようです。

しかし、「会計の目的=適正な期間損益計算」と財務諸表論で一番最初に勉強した私のようなものからすると、損益計算書の目的も当期純利益の定義もなされない概念フレームワークには少なからず違和感を感じるところがあります。

3.当期純利益とOCIの線引きは?

2015年公表のEDでは、すべての収益及び費用は損益計算書に含められるという推定と一定の場合にその推定を反証できることを提案していました。すなわち、やむを得ない理由がないのに損益計算書から収益及び費用を除くことは、逆に損益計算書の有用性を害することになるため、できる限り包括的であるべきとされていました。また、この推定はIASBが基準設定時に反証できるものであって、作成者が反証することはできないとされていました。

今回の暫定決定では、推定という言葉が原則という言葉に改められていますが、基本的なスタンスはEDの内容が引き継がれているのではないかと思います。今後は、IASBがどのようなケースにおいて損益計算書ではなくOCIに含めるべきと判断するのかが注目されるところですが、日本において当然にOCIに含められるべきとされている項目(代表例としてその他有価証券評価差額金がありますが)が、ある日突然損益計算書に含めるべきとなるケースも想定しておかなければなりません。

※ちなみに、現在のIFRSの金融商品会計においても、いわゆるその他有価証券評価差額金は原則として損益に含めることとされていますが、一定の条件の下でOCIに含めることも許容されています。

秋葉賢一先生によれば、概念フレームワークの改訂は、今後の基準設定に役立たせるというよりも、むしろ妨げにならないように幅広に記載し、今後の基準設定に関する関心は、当期純利益よりも上の小計部分、すなわち損益計算書をはじめとする財務諸表の表示をいかにすべきか?という議論に移っていくのではないかとのことです。(つづく)

(参考資料)
会計・監査ジャーナル No.734 2016年9月号
 会議報告 国際会計基準審議会(IASB)会議概要(2016年6月) 松尾洋孝

経営財務 3272号 2016年8月8日
 Q&Aコーナー 気になる論点(166)IASBにおける財務業績の議論(1)-当期純利益の位置づけ- 秋葉賢一

経営財務 3273号 2016年8月22日
 Q&Aコーナー 気になる論点(167)IASBにおける財務業績の議論(2)-OCIのリサイクリング- 秋葉賢一

2016年8月 2日 (火)

ASBJ 改正「修正国際基準(JMIS)」を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、7月25日に改正「修正国際基準(JMIS)」公表しました。今回の改正にあたり、2013年中に国際会計基準審議会(IASB)より公表された会計基準等のエンドースメント手続が行われており、IFRS第9号「金融商品」(2013年公表分)やIAS第19号の修正「確定給付制度:従業員拠出」等がその対象となっています。
 ※JMISやエンドースメントの手続については、こちらで解説しています。

検討の結果、以下の2点について「削除または修正」が提案されています。

①その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資をヘッジ対象とした公正価値ヘッジのノンリサイクリング処理

②キャッシュ・フロー・ヘッジにおけるベーシス・アジャストメント

①の「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資」とは、日本基準でいうところの「その他有価証券に分類された株式」の会計処理をイメージして頂くと分かり易いかと思うのですが、IFRSでは、これをヘッジ対象として公正価値ヘッジを行っている場合に、ヘッジ手段に係る利得または損失は、その他の包括利益に残したままとしなければならず(損益に含めることはできない)、その後のリサイクリング処理も禁止されています(ヘッジ終了後に損益に含めることもできない)が、今回の改正で、リサイクリング処理を行うように削除または修正されています。

当初の修正国際基準を公表した際に、「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資」に係るその他包括利益のノンリサイクリング処理をリサイクリング処理を行うように削除たは修正していましたが、今回は対応するヘッジ手段についても同様の処理とすべきという考え方に基づくものです。

②の「キャッシュ・フロー・ヘッジにおけるベーシス・アジャストメント」ですが、IFRSではキャッシュ・フロー・ヘッジについて、対象となる予定取引が実施され、非金融資産または非金融負債が認識される等の場合に、ヘッジ手段に関して累積されたその他の包括利益累計額(キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金)を減額して、認識された非金融資産(負債)の当初原価等に直接含めなければならない(その他の包括利益に反映せず、貸借対照表上直接振り替えられる)とされています。

今回の改正では、これを削除または修正して、キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の減額はその他の包括利益に含めることとされています。また、将来の商品購入等の一定の場合にヘッジ手段であるオプションに関して認識される認識される時間的価値の変動部分についても同様の取扱いが求められることから、この会計処理の部分についても削除または修正が行われています。

今回改正された内容は、「純損益と包括利益は本質的に認識時点の相違である」というASBJの従来からの主張(スタンス)に沿ったものということができるかと思います。

2016年3月 2日 (水)

ASBJ 収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集①

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2月4日「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」を公表しました。

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同のプロジェクトとして収益認識に関する会計基準を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」を公表するに至りました。 (IFRSではIFRS第15号として、米国基準ではTopic606として基準化されています。) 一方で、日本基準ではこれまで収益認識に関する包括的な会計基準は開発されておらず、いわゆる「実現主義」の考え方に沿って収益認識が行われてきました。 このような状況を受け、ASBJでもIFRS第15号を踏まえた収益認識に関する包括的な会計基準の開発に着手したという状況です。

IFRS第15号を踏まえた日本基準の中に収益認識に関する包括的な会計基準が開発されることによって、

・会計基準の体系の整備につながり、日本基準の高品質化に寄与する
・国内外の企業間での比較可能性が改善される
・開示(注記事項)の定めが設け在れることによって、財務情報の質が向上し、財務諸表利用者に便益をもたらす

ことが期待されています。

IFRS第15号を出発点として、会計基準の開発を行っていることについては、

・IFRS第15号を出発点としない場合に、国際的な整合性を図ることが困難であること
・IFRS第15号は5つのステップにより収益を認識するという特徴を有しており、その体系を評価する必要があること
・連結財務諸表の作成基準としてIFRSや米国基準を採用している企業において、連結と個別で同じレベルの会計基準へのニーズがあること

が理由として挙げられています。 先日、ASBJのセミナーに参加した際に、講演者の方からIFRS適用会社が100社を超えるような状況になり、企業(作成者)の会計基準に対する要望にもかなりバラつきが見られるようになってきたというコメントがありました。特に、収益認識の会計基準は実務上大きな影響が出ることが予想されるため、国際的な基準と同じものがいいという意見から日本固有のものを作るべきだという意見まで幅広く聞かれるとのことで、 今回の意見募集もそうしたことが背景になっているとのことでした。

今回の意見募集では、主に以下の点が質問事項とされています。

・IFRS第15号を出発点として検討を行っていることに対する意見
・仮にIFRS第15号の内容のすべてを日本基準として導入した場合に予想される17の適用上の論点に対する意見
・上記17の論点以外の適用上の課題
・IFRS第15号に定められた注記事項の有用性及び懸念に対する意見

繰り返しになりますが、今の段階でIFRS第15号と同様の日本基準を開発するという方針が決まっている訳ではなく、あくまで議論の出発点としてのIFRS第15号であるという点に留意が必要です。 ただ、個人的にはIFRS第15号を考慮しない形での日本の基準開発は難しいと思いますので、今回公表された17の適用上の論点や今後集められる適用上の課題を分析することは、将来の実務において大変参考になる のではないかと考えています。

会計基準の開発予定としては、平成30年1月1日以降(IFRS第15号の強制適用日、Topic606もほぼ同時期)に適用可能となることを当面の目標としているとのことでした。ということで、強制適用のタイムスケジュールは もう少し後になることも予想されます。(つづく)

 

2016年2月 8日 (月)

IASB IFRS第16号「リース」を公表

記事のアップが遅くなってしまいましたが、1月13日、国際会計基準審議会(IASB)はIFRS第16号「リース」(以下、「新基準」)を公表しました。今回は、IASBがホームページ上で公表しているプロジェクトサマリーを用いて、会計基準の概要についてまとめてみたいと思います。
IFRS第16号「リース」のプロジェクトサマリーはこちら

1.会計基準改訂の必要性

IFRSには既にリースに関する会計基準(IAS第17号、以下「旧基準」)が存在しますが、IFRS第16号はそれを置き換えるものとされています。では、なぜリース会計基準を作り直す必要があったのでしょうか?

旧基準では、どのような場合にリース取引が経済的に資産の購入取引と近似しているのかということに焦点を当てていました。つまり、購入取引に近似しているものはファイナンスリースとして分類され、貸借対照表に資産(及び負債)が計上される一方、その他のリース取引はオペレーティングリースとして分類され、いわゆるオフバランス処理とされてきました。

しかし、2005年、米国証券取引委員会(SEC)は、リース負債に関する情報の透明性について懸念があることを表明し、IASBと米国財務基準審議会(FASB)は、リース会計基準を改善するためのプロジェクトを開始しました。

両委員会は、リースの開始時点において、リースの借り手が資産と負債を取得しているという点について合意しましたが、旧基準では、多くの取引がオフバランス処理されている状態となっていました。(2014年時点において、IFRSやUS-GAAP適用する上場企業においておよそ3兆ドルものオフバランス処理のリース契約が存在したとされています。)

貸借対照表においてリースに関する情報が開示されていなかったことは、投資家やアナリストが企業の財務状態に関して完全な情報を得られておらず、資産を購入するために借入を行っている企業とリース取引を活用している企業との比較も調整なしに行うことはできなかったと考えられます。

2.借り手の会計処理の概要

(1)リースの定義

新基準では、リースは「資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部」と定義されています。
企業は、「一定期間において特定の資産の使用を支配する権利を有しているかどうか」という点に着目して、契約にリースが含まれるかどうかを判断する必要があるとされています。
また、新基準はリースにのみ適用することとされています。1つの契約の中にリースとサービスの両方が含まれているケースでは、リースの部分のみを取り出して新基準を適用する必要があるとされています。

(2)貸借対照表への影響

新基準では、旧基準で見られたようなファイナンスリースかオペレーティングリースかの区分を廃止しており、全てのリースは旧基準におけるファイナンスリースのように取り扱われます。
すなわち、企業はリースの開始時点で資産の使用権を得たと考え、リース料の現在価値によってリース資産(使用権資産)を認識します。また、将来のリース料の支払は財務行為とみなされ、リース負債(金融負債)を認識することとなります。
新基準を適用することにより、これまでオフバランス処理されていたリース取引がオンバランス処理されるため、資産や負債が関連する財務指標に大きな影響を与えることが考えられます。

(3)損益計算書への影響

旧基準において重要なオフバランス処理のリース取引がある企業にとっては、新基準における費用の内容も変わることになります。
旧基準におけるオペレーティングリースの場合は、リース料の発生額(支払額)がそのまま費用計上されていたため、リース関連の費用は定額的に発生しているケースが多かったと考えられます。
新基準では、すべてのリースについてリース資産の減価償却費とリース債務に係る支払利息が計上されることとなります。減価償却費は定額法で認識されるケースが多いと考えられますが、リース債務に係る支払利息は利息法で認識されるため、リースに係る費用は逓減することになります。

(4)キャッシュ・フロー計算書への影響

損益計算書の会計処理が変わることに伴い、キャッシュ・フロー計算書にも影響が出ると考えられます。
旧基準でオフバランス処理されていたリースについては、リース料の支払が営業キャッシュ・フローに影響を与えていたと考えられますが、新基準を適用することによって、リース料の支払は、金融負債の返済及び利息の支払として取り扱われるため、特に金融負債の返済部分は財務キャッシュ・フローに影響を与えることとなります。

(5)その他

新基準においては、リース期間が12ヶ月以内のリースや少額資産のリースについては、いわゆるオフバランス処理が認められています。

3.適用時期

この会計基準は2019年1月1日から適用されることとされていますが、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用する場合に限って早期適用も認められています。

今回は概要のみのご紹介となりましたが、詳細が明らかになりましたら、またこのブログでも取り上げてみたいと思います。

2015年9月10日 (木)

東証 会計基準の選択に関する考え方の分析結果を公表

東京証券取引所は、9月1日『「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析』を公表しました。
東証のホームページはこちら

これは、2015年3月期の年度決算に係る決算短信から「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示が求められるようになったことに伴い、約2,400社の決算短信の開示内容を分析して、IFRSの適用に対する各企業の考え方を分析したものとなっています。

1.全体としてのIFRSの適用状況

①IFRSを既に適用済の企業 68社 時価総額101兆円

②IFRSを適用することを決定している企業 23社 時価総額15兆円

③IFRSを適用する予定があることを開示している企業 21社 時価総額31兆円

④IFRS適用を検討していることを開示している企業 194社 時価総額106兆円

①から③までの企業を合計すると112社で時価総額は147兆円となりますが、これは、会社数ベースで東証上場企業(3,471社)のうちの3.2%程度、時価総額ベースで東証全体(607兆円)の24.2%を占めることとなります。

また、④の企業が仮にすべてIFRSの適用を行ったとすると、会社数ベースでは8.8%、時価総額ベースでは41.7%の企業がIFRSを適用していることになります。

さらに、今回の分析対象は主に3月決算会社であるため、分析対象外になっている企業が約1,100社程度あり、この中からIFRSを適用する企業が現れることも十分予想されます。

2.業種別のIFRS適用状況

「1.全体としてのIFRSの適用状況」における①から③までの企業を業種別に見た場合、以下の業種でIFRSの適用が進んでいることが分かります。

<会社数ベース(IFRS適用企業数が多い業種)>
 電機機器     18社
 医薬品       12社
 情報通信業    12社
 卸売業       10社
 輸送用機器    10社

<時価総額ベース(業種全体の時価総額に対し、IFRS適用企業の時価総額の割合が高い業種)>
 情報通信業    72%
 医薬品       69%
 卸売業       57%
 石油石炭製品  42%
 食料品       38%

IFRSの適用が進んでいる業種については、競合他社がIFRSを適用しているという可能性が高くなるため、財務諸表の比較可能性の観点からIFRSの適用が更に進む可能性があると考えられます。

3.IFRSの適用を検討している企業の検討状況

IFRS適用を検討していることを開示している企業のうち、具体的な検討事項を記載した企業の検討状況を分析したところ、情報収集や影響度調査の段階にある企業が比較的多い一方で、マニュアルや指針の整備を行っていると回答した企業が59社あり、今後これらの企業がIFRSの適用を表明する可能性は高いのではないかと考えられます。


市場の視点で考えると、今後IFRSの世界において日本が意見発信力(発言力)を持つために、IFRSを適用している実績(企業)を増やしていくことが避けられないとされていましたが、今回の調査結果からは、かなりの実績が積み上がりつつあることが分かりました。

一方、企業の視点で考えると、以前このブログでも触れましたが、IFRSの導入にはそれなりの負担が生じることになるため、「なぜIFRSを適用する必要があるのか?」ということに対する議論を十分に深めた上で、方針決定をする必要があると考えます。

個人的には、時価総額ベースで半分近い企業がIFRSを適用することとなった場合、強制適用(IFRSの全面導入)の可能性はどうなるのか?と感じました。(強制適用は見送られる可能性が高いという話も耳に入ってきたりもしています。あくまで噂レベルの話ですが。)

より以前の記事一覧