日本の会計基準(J-GAAP)

2017年4月11日 (火)

ASBJ 連結財務諸表における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱いを改正

企業会計基準委員会(ASBJ)は、3月29日、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号)の改正版を公表しました。

従前、在外子会社または在外関連会社に限定して、これらの会社が国際会計基準(IFRS)または米国会計基準(US-GAAP)を適用している場合は、連結決算において、当面の間それらを利用することが認められていました。

今回の改正では、これまでのケースに加えて、国内子会社が指定国際会計基準または修正国際基準(JMIS)に準拠した連結財務諸表を作成して有価証券報告書により開示している場合(開示予定の場合も含む)にも、当面の間それらを利用することが認められました。

ただし、いずれのケースにおいても

①のれんの償却
②退職給付会計における数理計算上の差異のリサイクリング処理
③研究開発費の支出時費用処理
④投資不動産の取得原価評価及び減価償却費の計上

の4点については、所定の修正が必要とされています。(この点は変更なし。)

改正後の実務対応報告は、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されますが、公表日(3月29日)以後、適用することも認められています。

また、今回の改正により、指定国際会計基準または修正国際基準に準拠した連結財務諸表を利用して連結決算を行う場合は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われます。

2017年4月10日 (月)

ASBJ マイナス金利の取扱いに関する実務対応報告を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、3月29日、「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」(実務対応報告第34号)を公表しました。

退職給付債務等の計算において、割引率の基礎となる安全性の高い債券の支払見込期間における利回りがマイナスとなる場合、以下のいずれかの方法によることとされています。

 ① 利回りの下限としてゼロを利用する方法

 ② マイナスの利回りをそのまま利用する方法

実務指針第11項によれば、退職給付会計基準において、割引率は金銭的時間価値のみを反映させるべきであり、すなわち信用リスクフリーレートに近い期末における安全性の高い債券の利回りを用いるとされています。

金銭的時間価値のみが反映された信用リスクフリーレートとは、一般的に、信用リスクが存在しない状態で時の経過に応じて価値が増えるレートを反映するものであると考えられるため、この信用リスクフリーレートについて、マイナス金利の状況下においてどのように考えるべきか整理が必要とされています。

この点については、以下の2つの意見があるようです。

・信用リスクが存在しない状態においても、将来の価値が現在の価値よりも低くなると市場が評価しており、金銭的時価価値は時の経過に応じて減少する、すなわち信用リスクフリーレートはマイナスになり得る。

・現金を保有することによって現在の価値を維持することができるため、金銭的時間価値は時の経過に応じて減少することはない、すなわち信用リスクフリーレートの下限はゼロになる。

また、実務指針第12項及び第13項では、

・年金資産は時価評価が求められており、この時価もマイナス金利の影響を受けている中で、退職給付債務(割引率)にもマイナス金利の影響を反映させるべきかどうか。

・マイナス金利の影響を退職給付債務の算定に織り込んだ場合、現時点における負債(債務)の金額が将来の見積支払総額を超える場合の取扱いはどうなるのか。(そうなるのは、論理矛盾のような気もしますね。)

というような論点も指摘されています。

退職給付債務等の計算は、財務諸表に与える影響が大きく、この論点について早急に取扱いを示すべきという実務上の要請がある一方で、国際的にもマイナス金利の取扱いについての統一的な見解が定まっておらず、また、現時点におけるマイナスの利回りの幅が大きくないことを踏まえ、冒頭に示したいずれの方法も認めるという取扱いとなったようです。

なお、適用時期は、平成29年3月31日に終了する事業年度から平成30年3月31日に終了する事業年度とされており、その後の取扱いについては、引き続き検討が行われることとされています。

2017年3月17日 (金)

ASBJ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準を公表

企業会計基準審議会(ASBJ)は、3月16日、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」を公表しました。

この会計基準は、法人税等に関する会計上の取扱いを定めた以下の会計基準等の内容を整理したものであり、基本的にその内容が踏襲されているとされています。

日本公認会計士協会から公表
「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査保証実務指針第63号)
「税効果会計に関するQ&A」(会計制度委員会)

ASBJから公表
「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」(実務対応報告第12号)  

1.更正等による追徴及び還付があった場合(第5項~第7項、第14項~第15項)

過年度の法人税等(外形標準課税に係る事業税は除く)について、更正等により追徴される可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合は、その期の損益として計上することとされています。一方、還付の場合は、還付されることが確実に見込まれ、その金額を合理的に見積もることができる場合に、その期の損益として計上することとされています。ただし、いずれのケースも、誤謬により遡及修正が必要な場合は除きます。(遡及修正に関する会計基準の解説はこちら

なお、追徴(還付)税額を損益処理した場合は、原則として当期の税金とは別の科目で表示をすることが求められていますが、重要性がなければ、当期の税金に含めてもよいとされています。(実務上は例外処理のケースがほとんどだと思いますが。)

また、外形標準課税に係る事業税について、更正等により追徴(還付)があった場合は、原則として販管費で計上することとされていますが、合理的な配分方法によってその一部を売上原価として計上することも認められています。


2.受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税

受取利息や受取配当金等に源泉所得税のうち、税額控除の適用を受けない税額は原則として営業外費用で計上することとされています。ただし、重要性がなければ、法人税等に含めて計上することができるとされています。

お恥ずかしい話ですが、私は原則的な取扱いと例外的な取扱いを反対に覚えていました。きちんと確認しておかないといけませんね。。。


3.外国法人税

外国法人税(外国の法令により課される法人税等に相当する税金)のうち、税額控除の適用を受けない税額は、以下のように処理するものとされています。

・利益に関する金額を課税標準とする場合
 → 法人税等に含めて計上する。

・それ以外の場合
 → その内容に応じて、売上原価、販管費、営業外費用で計上する。

適用は、この会計基準が公表された日からとなっていますので留意が必要です。また、この会計基準の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更には該当しない(内容的な変更を伴わないためと考えられます。)こととされていますので、その点もご留意ください。

2017年2月 3日 (金)

ASBJ リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2016年12月16日、実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下、実務対応報告)を公表しました。

1.リスク分担型企業年金とは?

リスク分担型企業年金は、実務対応報告第2項において、以下のように説明されています。

確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)に基づいて実施される企業年金のうち、給付の額の算定に関して、確定給付企業年金法施行規則(平成14年厚生労働省令第22号)第25条の2に定める調整率が規約に定められる企業年金制度

では、「給付の額の算定に関して規約で定められる調整率」とは何なのか?ということですが、これも同じく第2項において、

積立金の額、掛金額の予想額の現価、通常予測給付額の現価、財政悪化リスク相当額(通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額)に応じて定まる数値

とされています。

2.今までの企業年金とはどこが異なるのか?

定義を読むと「?」がたくさん出てきそうですが、要するに、どういう年金制度なのかというと、「運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合うことができるようなハイブリッド型の企業年金制度」(日本再興戦略改訂2015)ということになろうかと思います。

すなわち、年金制度に積立不足が生じる場合に備えて、事業主はリスク対応掛金を追加拠出することとしておき、リスク対応掛金では対応しきれない部分を加入者のリスクとして年金制度からの給付額を増減させて解消するというものです。

これによって、これまでの確定給付制度では年金資産の運用リスクはすべて事業主が負担する(年金制度の積立不足は事業主の責任で解消しなければならない)ことになっていましたが、加入者(従業員)にも一部負担をお願いできることとなります。

よって、リスク分担型企業年金では、以下の3つの掛金が予め設定され、財政再計算を行っても原則として変更は生じないとされています。

・標準掛金…給付に要する費用に充てるため、事業主が将来にわたって平準的に拠出する掛金
・特別掛金…年金財政計算における過去勤務債務の額に基づき計算される掛金
・リスク対応掛金…財政悪化リスク相当額に対応するために拠出する掛金

3.リスク分担型企業年金の会計処理

リスク分担型企業年金の会計処理を考える時、それが退職給付会計基準における「確定給付制度」なのか「確定拠出制度」なのかがポイントとなります。

退職給付会計基準において、ある退職給付制度を確定拠出制度と確定給付制度のいずれに分類するかは、

①事業主である企業が一定の掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負うか否か
②一定の掛金を外部に積み立てているか否か

が判断基準になるとされています。(実務対応報告第17項)

①に関しては、前述の通り、毎事業年度における財政状況に応じて自動的に給付額が増減して財政の均衡が図られるため、基本的には企業に追加の掛金拠出が要求されないことが想定されていると考えられます。また、②に関しても、一定の拠出方法に基づく各期のリスク対応掛金相当額等が当該制度の導入時にあらかじめ規約に定められるため、基本的には一定の掛金を外部に積み立てているものと考えられています。(実務対応報告第18項及び第19項)

そこで、企業の拠出義務が前述の3つの掛金に相当する額に限定されこれらの掛金以外の拠出義務を実質的に負っていないと判断されるリスク分担型企業年金は確定拠出制度に分類され、規約に基づき予め定められた掛金の金額を各期において費用として処理することとされています。(実務対応報告第3項及び第7項) それ以外のリスク分担型企業年金は確定給付制度に分類されることになります。(実務対応報告第4項)

なお、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っているか否かの判断にあたって、リスク分担型企業年金における給付額の減額調整に対応して、当該リスク分担型企業年金以外の退職給付制度における給付額を増額する義務を負う場合、企業に追加的な負担が求められるため、当該給付額を増額する義務を考慮する必要がある点には留意が必要です。(実務対応報告第20項)

4.既存の確定給付制度を確定拠出制度に該当するリスク分担型企業年金に移行した場合の会計処理

今後、既存の確定給付制度から確定拠出制度に該当するリスク分担型企業年金に移行することが想定されますが、この場合は退職給付制度の終了に該当することとなります。(実務対応報告第9項)

すなわち、

・移行の時点で、移行した部分に係る退職給付債務とリスク分担型企業年金に移行した資産の額との差額を損益として認識する。
・移行した部分に係る未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異は損益として認識する。
・リスク分担型企業年金への移行の時点で規約に定める各期の掛金に特別掛金相当額が含まれる場合、当該特別掛金相当額の総額を未払金等として計上する。

こととなり、その結果認識される損益は、原則として特別損益に純額で表示することになります。(実務対応報告第10項)

5.リスク分担型企業年金に関する開示

確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金は、確定拠出制度に準ずる形で、いくつかの注記事項が定められています。(実務対応報告第11項及び第12項)

・企業の採用するリスク分担型企業年金の概要
 (例)標準掛金相当額以外に、リスク対応掛金相当額が予め規約に定められていること
    毎事業年度における財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られること
・リスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額
・翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数

実務対応報告は平成29年1月1日以後適用されることとなっていますので、今後リスク分担型企業年金の導入を検討されている企業の皆様はご留意ください。

(参考文献)
「リスク分担型企業年金制度について」(谷内陽一 経営財務第3278号)

2016年8月22日 (月)

ASBJ 中期運営方針等を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、8月12日に「中期運営方針」及び「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂を公表しました。

中期運営方針については、国際会計基準の適用会社(予定を含む)が140社を超える状況の中で、日本基準を高品質で国際的に整合性のとれたものとして維持・向上を図ること及び国際的な会計基準の質を高めることに貢献すべく意見発信を行っていく必要があるとの認識が示されています。

日本基準に対する基本的な考え方として、

・企業の総合的な業績指標としての当期純利益の有用性を保つこと
事業活動の性質に応じて適切に資産及び負債の測定を行うこと(適切な公正価値測定の適用範囲)

などが挙げられており、今後の日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みは、国際的な会計基準を自動的に日本基準に取り入れることを意味するものではなく、

・国際的な会計基準を日本基準に採り入れる範囲
・整合性を図った結果、日本基準が高品質な会計基準となるのかどうか
・国際的な会計基準における考え方が日本のものと大きく異ならないかどうか

を判断することが必要であると述べられています。

その上で、具体的な課題として、以下のテーマが取り上げられています。

1.日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組み
 ・収益認識に関する包括的な会計基準の開発
  …IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえて
 ・引当金に関する包括的な会計基準の開発
  …国際会計基準審議会での審議を踏まえて検討
 ・東京合意以降に公表された国際会計基準への対応
  …各専門委員会において基準の開発(改訂)の必要性を検討

2.その他の日本基準の開発
 ・日本公認会計士協会から公表されている税効果会計に関する実務指針の移管…「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」は移管済
 ・減価償却に関する会計基準の開発
 ・適用後レビューの実施

3.国際的な会計基準の開発に関連する活動
 ・国際的な意見発信の強化
 ・修正国際基準の開発
 ・国際会計基準に関する解釈の取組み
 ・国際的な会計人材の育成

2016年8月 2日 (火)

ASBJ 改正「修正国際基準(JMIS)」を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、7月25日に改正「修正国際基準(JMIS)」公表しました。今回の改正にあたり、2013年中に国際会計基準審議会(IASB)より公表された会計基準等のエンドースメント手続が行われており、IFRS第9号「金融商品」(2013年公表分)やIAS第19号の修正「確定給付制度:従業員拠出」等がその対象となっています。
 ※JMISやエンドースメントの手続については、こちらで解説しています。

検討の結果、以下の2点について「削除または修正」が提案されています。

①その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資をヘッジ対象とした公正価値ヘッジのノンリサイクリング処理

②キャッシュ・フロー・ヘッジにおけるベーシス・アジャストメント

①の「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資」とは、日本基準でいうところの「その他有価証券に分類された株式」の会計処理をイメージして頂くと分かり易いかと思うのですが、IFRSでは、これをヘッジ対象として公正価値ヘッジを行っている場合に、ヘッジ手段に係る利得または損失は、その他の包括利益に残したままとしなければならず(損益に含めることはできない)、その後のリサイクリング処理も禁止されています(ヘッジ終了後に損益に含めることもできない)が、今回の改正で、リサイクリング処理を行うように削除または修正されています。

当初の修正国際基準を公表した際に、「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資」に係るその他包括利益のノンリサイクリング処理をリサイクリング処理を行うように削除たは修正していましたが、今回は対応するヘッジ手段についても同様の処理とすべきという考え方に基づくものです。

②の「キャッシュ・フロー・ヘッジにおけるベーシス・アジャストメント」ですが、IFRSではキャッシュ・フロー・ヘッジについて、対象となる予定取引が実施され、非金融資産または非金融負債が認識される等の場合に、ヘッジ手段に関して累積されたその他の包括利益累計額(キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金)を減額して、認識された非金融資産(負債)の当初原価等に直接含めなければならない(その他の包括利益に反映せず、貸借対照表上直接振り替えられる)とされています。

今回の改正では、これを削除または修正して、キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の減額はその他の包括利益に含めることとされています。また、将来の商品購入等の一定の場合にヘッジ手段であるオプションに関して認識される認識される時間的価値の変動部分についても同様の取扱いが求められることから、この会計処理の部分についても削除または修正が行われています。

今回改正された内容は、「純損益と包括利益は本質的に認識時点の相違である」というASBJの従来からの主張(スタンス)に沿ったものということができるかと思います。

2016年6月21日 (火)

ASBJ 平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱いを公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、6月17日、実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」を公表しました。

これは、平成28年度税制改正において建物附属設備及び構築物の法人税法上の減価償却方法について定率法が廃止され定額法のみとなったことに対応して、会計上の取扱いを示したものとなっています。

以下の要件を満たす会計方針の変更については、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされています。(第2項)

①従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理しており、建物附属設備・構築物(またはその両方)に係る減価償却方法として定率法を採用していること

平成28年4月1日以後に取得する当該すべての資産に係る減価償却方法として定額法に変更すること

この場合には、法人税法の改正に伴い実務対応報告第32号を適用し、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物について減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨と会計方針の変更による当期への影響額を記載することとされています。(第4項)

上記以外の減価償却方法の変更については、正当な理由に基づき自発的に行う会計方針の変更として取り扱うこととされています。(第3項)

本来、法令等の改正が会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当するのは、法令等によって会計処理の原則及び手続が定められている場合であり、原則的には、税法の改正によって償却限度額の算定方法が変更されたことだけでは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更には該当しないと考えられます。(第14項)

しかし、いわゆる税法基準がこれまでも会計上広く容認されてきた経緯等を踏まえ、一定の条件を満たす減価償却方法の変更については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことを妨げないこととされています。

なお、平成28年4月1日以後に建物附属設備または構築物を取得したかどうかにかかわらず、平成28年度税制改正に合わせて、これらの減価償却方法を定額法に変更する場合に、法令等の改正に準じたものとして会計基準等の改正に伴う会計方針として取り扱うことが意図されていることに留意が必要です。(第17項)

過年度遡及基準において、減価償却方法の変更の場合には、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するため、一定の事項を注記することが求められていますが、この実務対応報告によって、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う場合には、前提が異なっているため、注記事項が別途定められることとなりました。また、建物附属設備または構築物を取得していない場合にも所定の注記事項が必要となることに留意が必要です。(第18項)

この実務対応報告は、公表日後最初に終了する事業年度のみに適用することとされています。ただし、4月決算及び5月決算会社のように、公表日前に事業年度が終了している場合には、当該事業年度にこの実務対応報告を適用することができるとされています。(第5項)

今後も税制改正によって会計上の減価償却方法の取扱いが影響を受ける可能性があるため、減価償却に関する会計基準の開発を行い、いわゆる税法基準を利用することも含め、あるべき会計処理を検討する必要があると考えられますが、法人税法における損金経理要件の問題や減価償却方法が業績に与える影響の重要性を鑑みると、会計基準の開発に着手することの合意形成を図るには、まだ時間が必要とのことです。(第13項及び第14項)

2016年5月30日 (月)

ASBJ 収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集⑨

ようやくこのテーマの最終回を迎えました(汗)が、今回はその他の論点として取り上げられている内容と開示(注記事項)について触れたいと思います。

【論点16】契約コスト

IFRS第15号では、顧客との契約を獲得するために発生したコストで当該契約を獲得しなければ発生しなかったコスト(契約獲得のための増分コスト)のうち、回収可能と予想されるものは資産として認識した上で、関連する財・サービスの移転と整合する方法で償却することが求められています。

<検討された事例>
①コンサルティング・サービス契約を獲得するためのコスト
コンサルティング会社が1年超の新規の契約を獲得した際に、販売担当従業員に対する成功報奨金を支払ったとします。このコストは、契約が獲得されたことによって初めて発生するものであり(逆に言えば、契約が獲得できない場合は発生しない)、契約獲得のための増分コストであると考えられ、当該費用が回収可能であるならば、資産計上した上で契約期間にわたって償却する処理が必要になると考えられます。

②データ・センターの管理サービス提供前のセットアップコスト
サーバー管理業者が顧客のデータ・センターを管理する契約を締結したとします。サービス提供を開始する前に、自社のシステムと顧客のシステムを接続し、テストを行うための支出が発生するとします。この作業自体が顧客に対して財・サービスを提供するものでない場合は、契約増分のコストに該当する可能性があります。(他の会計基準で処理すべきものでないかどうかを検討する必要があります。)

【論点17】貸借対照表項目の表示科目

IFRS第15号では、企業の履行と顧客の支払との関係に応じて、貸借対照表の表示を以下の通り定めています。

 ・契約資産…顧客が対価を支払うか支払期限が到来する前に、企業が財・サービスを顧客に移転することに伴って生じる対価に対する権利

 ・債権…対価に対する権利のうち無条件(対価の支払期限までに考慮されるものが時間の経過のみである場合)のもの

 ・契約負債…企業が財・サービスを顧客に移転する前に、顧客から対価を前受するか前受の期限が到来している場合に、顧客に対して財・サービスを移転する義務

<認識された適用上の課題>
日本基準では、企業の有する権利が営業上のものである場合には「売掛金」として表示されますが、IFRS第15号に従った場合は、対価に対する権利が無条件か否かによって、「債権」と「契約資産」に表示を区分する必要があるため、その判断プロセスが必要となる可能性があります。

【開示(注記事項)について】

IFRS第15号においては、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質・金額・時期・不確実性を財務諸表の利用者がより理解できるようにするために、以下の定量的・定性的情報を開示することが求められています。

 ○顧客との契約から生じた収益に関する情報
  適切なカテゴリーに分解した収益の情報 など
 ○契約残高に関する情報
  債権、契約資産、契約負債の期首期末残高 など
 ○履行義務に関する情報
  履行義務に関する定性的情報、残存履行義務に配分された取引価格 など
 ○会計基準の要求事項を適用する際に行った重要な判断及びその変更
  履行義務の充足時期の決定、取引価格及び履行義務への配分額の算定 など
 ○顧客との契約を獲得または実行するためのコストから認識された資産に関する情報

<認識された適用上の課題>
当該要求事項に対応するための(追加的な情報を入手するための)体制整備の負担が顕著となる可能性があると考えられており、特に、以下の項目については負担が顕著になるる可能性があると考えられています。
 ①当報告期間に認識した収益のうち期首現在の契約負債残高に含まれていたもの
 ②報告期間末現在で未充足(部分的なものを含む)の履行義務に配分した取引価格の総額
 ③未充足の履行義務に配分した取引価格の総額について、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるか

非常に長い間にわたって、IFRS第15号を仮に日本企業に適用した場合の影響を見てきました。あくまで、この分析はIFRS第15号をそのまま日本に導入するという「仮説」に基づくものですが、会計基準の国際的なコンバージェンスが進んでいる状況等を考えると、米国も同じ基準として採用しているIFRS第15号とかけ離れた会計基準が日本に導入される可能性は低いのではないかと思われます。そのような点を考えると、自社にIFRS第15号を導入した場合の影響度を調査しておくことも、非常に有用なものと考えられます。(おわり)

2016年5月16日 (月)

ASBJ 収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集⑧

IFRS第15号における収益認識の最後のステップとなる「履行義務の充足時における収益認識」については、4つの論点が認識されていますが、今回もこの中の2つの論点について確認していくことにしましょう。

【論点11】顧客の未行使の権利(商品券等)

IFRS第15号では、企業が顧客から前払金を受け取った場合、将来において財・サービスを移転するという履行義務について、この前払金額で契約負債を認識することとされています。その上で、企業が当該履行義務を充足した時に、契約負債の認識を中止し、収益認識を行うこととされています。
また、顧客が前払金を支払った場合には、顧客が将来において財・サービスを受け取る権利を有しますが、その権利が行使されない場合があります。この未行使の権利(非行使部分)については、顧客が権利を行使しないことが(ほぼ確実に)見込まれる場合、顧客が権利を行使するパターンに比例して収益を認識する(顧客が権利行使をした際に非行使部分の一部も収益認識をする)こととされています。

<検討された事例>
有効期限のない商品券等を発行する企業
現行の日本基準における実務では、有効期限のない商品券等が発行された場合、商品券等の対価を受領した時点で前受金等の負債を認識し、商品等を提供した段階(商品券等が使用された段階)で負債の認識を中止し、収益を認識しているケースが多いものと考えられます。
ここで、負債の認識時点から一定期間経過後も未使用部分がある場合(負債として計上されたままの場合)、債務履行の可能性を考慮して一定の要件を満たす場合は、負債計上を中止し収益認識を行うケースがあります。ただし、法的な債務性は消える訳ではないので、収益認識後に商品券等が利用される場合に備えて、将来の返還(支払)リスクに備えた引当金を計上しているケースもあるものと考えられます。
IFRS第15号では、顧客が権利を行使しないことが見込まれる場合は、その部分を顧客が権利を行使するパターンに比例して収益認識することとされているため、収益認識の時期が相違する可能性があります。

<認識された適用上の課題>
非行使部分について、顧客がその権利を行使しないことが見込まれる金額の見積りを、商品券等を発行した時点で行う必要があるため、見積りが困難になる可能性があります。


【論点12】返金不能の前払報酬

IFRS第15号では、返金不能の前払報酬については、以下の会計処理を行うこととされています。

○将来の財・サービスの移転に関連している場合
 →将来その財・サービスが顧客に提供された時点で収益認識を行う。

○当該報酬を受領した時点における財・サービスに関連している場合
 →当該財・サービスを独立した履行義務として会計処理すべきかどうかを評価する。

<検討された事例>
スポーツクラブやゴルフクラブの入会金
スポーツクラブやゴルフクラブの入会金が、顧客に対して単に会員資格を認める約束に関連したものであり、他のすべての財・サービスからは独立した履行義務であると判断される場合は、入会時点で履行義務が充足されているため、収益を認識することになると考えられます。
一方で、会員資格に加えて、会員に財・サービスを受ける権利を与えたり、非会員よりも低い価格で財・サービスを購入する権利を与えるような場合は、それらの履行義務に関連するものと判断され、提供される履行義務の充足につれて収益を認識する必要が生じます。
現行の日本基準における実務において、入会金を入会時(入金時)の収益として一括で計上している場合、後者に該当すると、収益認識の時期が相違する可能性があります。

<認識された適用上の課題>
入会金に関連して企業が実施する活動が何であるのか?という判断が必要となります。しかし、実際に財・サービスを提供する場合もあれば、その提供のための準備としての活動の場合もある上、両者が明確に区分できないケースも考えられるため、収益認識すべき時期の判断が困難とする可能性があります。(つづく)

2016年5月 9日 (月)

ASBJ 収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集⑦

IFRS第15号における収益認識の最後のステップとなる「履行義務の充足時における収益認識」については、4つの論点が認識されています。

具体的な論点に触れる前に、まずはIFRS第15号の履行義務の充足に関する考え方を整理しておきたいと思います。IFRS第15号では、以下のいずれかに該当する場合には、企業は財・サービスを一定の期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり収益認識を行うことが要求されています。

A.顧客が、企業の履行によって提供される便益を、企業の履行と同時に受け取って消費する。

B.企業の履行が、財・サービスを創出するか増価させ、顧客がその創出または増価につれてそれを支配する。

C.企業の履行が、他に転用できる財・サービスを創出せず、かつ、企業が現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利を有している。

履行義務が一定の期間にわたり充足されないものではない(上の条件を満たさない)場合には、その履行義務は一時点で充足され収益が一時点で認識されることとなります。

【論点9】一定の期間にわたり充足される履行義務

<検討された事例>
①企業が特定顧客向けの特別仕様ソフトウェアの開発を受託するケース
このケースでは、一定期間にわたり収益認識を行う要件のCに該当するかどうかを検討する必要があります。すなわち、他への転用可能性と既に完了した作業(履行)に対する代金を受け取る権利が発生しているかどうかを契約内容等から検討する必要があります。

②企業が顧客の土地の上にオフィスビルの建設する契約を締結するケース
このケースでは、一定期間にわたり収益認識を行う要件のBに該当するかどうかを検討する必要があります。すなわち、企業が建設契約を履行するにつれて、オフィスビルに係る仕掛品が顧客の土地の上に創出・増価されることになります。この場合、当該仕掛品について、顧客の意思で利用を指図可能である(顧客が支配している)と判断すれば、この建設契約に係る収益は、一定期間にわたり収益認識を行うこととなります。

<認識された適用上の課題>
契約期間が長期ではない工事契約を多数扱っている場合や、工事契約について個別に予算や原価を管理していない場合には、一定期間の収益認識を行う場合において、管理プロセスの見直しやシステム改修が必要となる可能性があります。また、工期が短い契約の場合には、金額的・質的重要性を勘案した上で会計処理を検討する必要もあると考えられます。

一定期間にわたり収益認識を行う要件のBの要件を満たさないケースについては、Cの要件を満たすかどうかの検討が必要となりますが、資産の転用可能性や現在までに完了した履行に対する支払いを受ける権利を有しているかどうかの判断が困難なケースが存在する可能性があり、実務負担が大きくなる可能性もあります。

【論点10】一時点で充足される履行義務

履行義務が一時点で充足されるケースにおいては、「いつ」履行義務が充足されたのかを決定することが重要となります。IFRS第15号では、次の指標を参考にして決定するものとされています。

・企業が支払を受ける現在の権利を有している
・顧客が(財・サービスの)法的所有権を有している
・企業が(財・サービスの)物理的占有を移転した
・顧客が(財・サービスの)所有に伴う重大なリスクと経済価値を有している
・顧客が検収した

<検討された事例>
①物品の販売契約
売手が物品を出荷し納入した後、買手は速やかに自己の定める基準に基づき物品の検査を行い、その検査の終了をもって所有権が買手に移転する契約を結んでいるケースを考えます。
このケースでは、検査の終了をもって所有権が買手に移転するとされているため、買手が検収した時点を収益認識時点とすることが一義的には考えられますが、企業が契約で合意された仕様に従って顧客に物品の支配が移転したと客観的に判断できる場合(言い換えれば、買手のもとに届いた時点で間違いなく検収を受けられると判断できる場合)には、物品が買手の指定にする場所に到着した時点(着荷基準)で収益認識することも考えられるとされています。

②仕向地持込渡条件の製品輸出取引
輸入者の指定場所(倉庫、工場等)まで貨物を持ち込み、買主に引き渡した時点で売主の費用負担が買主に移転する貿易条件のことを「仕向地持込渡条件」といいます。
この条件で輸出取引を行った場合には、指定場所に持ち込んだ時点を収益認識時点することが一義的には考えられますが、所有権及びリスク・経済価値の移転の状況を検討した上で収益認識時点を決定する必要があるとされています。

<認識された適用上の課題>
IFRS第15号に従って収益認識時点を判断した結果、日本基準における実務と認識時点が異なる結果となる場合が考えられ、その場合には、経理処理プロセスの見直し、システムの改修、関連部署との折衝、物流プロセスの見直し等の検討が必要となる可能性があります。

財務諸表を作成するという観点では、一定の期間(四半期・年度)の中で収益認識時期が適切であれば問題はないため、IFRSと日本基準で期をまたぐ結果となる取引のみを調整するという考え方もあろうかと思われます。この場合にも、差異の金額的・質的重要性や発生事由を勘案して判断することが考えられるとされています。(つづく)

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