日本の会計基準(J-GAAP)

2018年9月18日 (火)

ASBJ 連結財務諸表における在外子会社等の会計処理に関する取扱いを改正

9月14日、企業会計基準委員会は「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号)を改正しました。

IFRS第9号「金融商品」では、資本性金融商品(株式等)の公正価値の変動を原則として当期の損益に含めることとしていますが、その他の包括利益に表示することも認めています。(ただし、この場合は売却損益や減損損失(評価損)も計上されません。)

今回の改正で、在外子会社がその他の包括利益での表示を選択している場合は、連結決算手続上、売却損益相当額や減損損失相当額を当期の損益として修正することが求められました。

この取扱いは、IFRSのエンドースメント手続(修正国際基準の取扱い)を参考にしたものとなっています。

なお、関連会社についても、「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号)が改正されており、同様の取扱いとなります。

改正後の実務対応報告は、原則として2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用となります。

2018年6月 2日 (土)

収益認識に関する会計基準等の概要⑤

 企業会計基準委員会は、収益認識に関する会計基準等を公表し、平成33年4月1日以降開始する事業年度(平成34年3月期)から適用されることとなりました。

 これまで、収益認識に関する会計基準等の基本的な流れと特定の状況・取引おける取扱いの概要をご説明してきましたが、皆さんもお気付きの通り、新しい会計基準等が導入されることに伴って、これまで行われてきた実務が適用できなくなり実務上の負担が大きくなるのではないかという懸念が早くから示されていました。

 そこで、これまで行われてきた実務に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、個別項目に対する代替的な取扱いが定められることとなりました。今回はその主な内容についてご説明したいと思います。

1.履行義務の識別に関する代替的な取扱い

 顧客に約束した財・サービスが、顧客との契約の観点で重要性が乏しいと認められる場合には、それが履行義務かどうかの評価を省略することができるとされています。

 また、顧客が商品等に対する支配を獲得した後に行う出荷・配送活動については、履行義務として識別しない(商品等を移転する約束を履行するための活動とする)ことができるとされていています。

2.期間がごく短い工事契約及び受注製作のソフトウェアに関する取扱い

 一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができるとされています。

3.出荷基準等の取扱い

 商品等の国内の販売において、出荷時からその商品等の支配が顧客に移転されるまでの期間が通常の期間である場合には、出荷時からその商品等の支配が顧客移転されるまでの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができるとされています。

 出荷時からその商品等の支配が顧客に移転されるまでの期間が通常の期間である場合とは、「その期間が国内における出荷・配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合」とされています。

4.原価回収基準の取扱い

 一定の期間にわたり収益を認識する場合で、その進捗度を合理的に見積もれない場合は、合理的に見積ることが可能となるまで、原価回収基準(発生原価=収益として収益認識を行う)ことが求められています。

 しかし、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合には、収益を認識せず、進捗度を合理的に見積ることができる時点から収益を認識することも認められています。

5.重要性が乏しい財・サービスに対する残余アプローチの使用

 取引価格を識別された履行義務に配分するにあたっては、各履行義務の基礎となる財・サービスの独立販売価格を基礎として配分することが求められています。

 しかし、履行義務の基礎となる財・サービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、その財・サービスが他の財・サービスに付随的なものであり、重要性が乏しいと認められる場合には、その財・サービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチ(取引価格から観察可能な財・サービスの独立販売価格を控除して見積もる方法)を使用することが認められています。

6.契約の結合に関する取扱い

 会計基準では、同一の顧客と同時(ほぼ同時の場合も含む)に締結した複数の契約が、以下のいずれかに該当する場合は、当該複数の契約を単一の契約とみなして会計処理を行うことが求められています。(契約の結合といいます。)

○同一の商業的目的を有するものとして交渉された場合

○1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格や履行に影響を受ける場合

○約束した財・サービスが単一の履行義務であると判断される場合

 しかし、以下の2つの条件を満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に移転する財・サービスの内容を履行義務とみなし、個々の契約において定められている財・サービスの金額に従って収益を認識することが認められています。

○顧客との個々の契約が当事者間で合理された取引の実態を反映する実質的な取引の単位であると認められること

○顧客との個々の契約における財・サービスの金額が合理的に定められており、その金額が独立販売価格と著しく異ならないと認められること


7.有償支給取引に関する取扱い

 いわゆる有償支給取引の会計処理について、その取扱いが以下の通り示されています。

○企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合
 支給品の消滅は認識するが、収益は認識しない。(在庫を減少させ、未収入金等の債権を計上することになると考えられます。)

○企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合
 支給品の消滅も収益も認識しない。ただし、個別財務諸表においては、支給品の消滅のみ認識することができる。

2018年5月28日 (月)

収益認識に関する会計基準等の概要④

8.委託販売契約

商品等を最終顧客に販売するために、他の当事者(販売業者等)に引き渡す場合、当該他の当事者が商品等の支配を獲得しているかどうかを判定する必要があります。支配を獲得していないと判断される場合(委託販売契約の場合)には、当該他の当事者に商品等を引き渡した時点では収益を認識しないこととされています。

その契約が委託販売契約であることを示す指標として、以下の3点が例示されています。

・販売業者等が最終顧客に販売するまで、または、一定の期間、企業が商品等を支配している。

・企業がその商品等の返還を要求することができること、または、第三者にその商品等を販売することができること

・販売業者等が商品等の対価を支払う無条件の義務を有していないこと


9.請求済未出荷契約


企業が商品等について顧客に対価を請求しているが、その商品等の物理的占有を保持する契約のことを請求済未出荷契約といいます。これまでの実務では、「預り売上」と呼ばれていた取引のことですね。

このような取引において、企業がいつ履行義務を充足したか(=収益をいつ認識するか)を判断するにあたっては、顧客がいつ商品等の支配を獲得したかを判断する必要があり、実務指針では以下の4つの要件を満たした時点とされています。

・請求済未出荷契約を締結する合理的な理由が存在する。

・その商品等が顧客に属するものとして区分して識別されている。

・その商品等を顧客に移転する物理的な準備が整っている。

・その商品等を使用する能力、または、他の顧客に振り向ける能力を企業が有していない。


10.顧客による検収


収益認識に関する会計基準が導入されることによって、実務担当の皆さんが一番気にされているテーマではないでしょうか。実務指針では、以下のような議論の整理が行われています。

顧客による財・サービスの検収は、顧客が財・サービスの支配を獲得したことを示す可能性があり、顧客の検収前に収益が認識される場合には、他の残存履行義務があるかどうかを判定する必要がある。

契約において合意された仕様に従っていることにより、財・サービスに対する支配が顧客に移転されたことが客観的に判断できる場合には、顧客の検収は形式的なものであり、支配の時点に関する判断に影響を与えない。

逆に、顧客に移転する財・サービスが契約において合意された仕様に従っていると客観的に判断できない場合には、顧客の検収が完了するまで、顧客はその財・サービスに対する支配を獲得しない。

商品等を試用目的で顧客に引き渡し、試用期間が終了するまで顧客が対価の支払を約束していない場合は、顧客がその商品等を検収するか、試用期間が終了するまでは、その商品等に対する支配は顧客に移転しない。

すべての取引において検収が収益認識に必須の要件とはされていないことが分かりますが、「財・サービスが契約において合意された仕様に従っていることが客観的に判断」できるかどうかという点の議論の整理が難しそうな気がします。

11.返品権付きの販売


返品権付きの販売とは、顧客に商品等の支配を移転するとともに、その商品等を返品して次のいずれかを受け取る権利を顧客に付与することを指します。

・顧客が支払った全部または一部の対価の返金

・顧客が企業に対して負う(予定のものも含む)金額に適用できる値引

・別の商品等への交換

返品権付きで商品等を販売した場合には、以下の会計処理を行う必要があります。

①企業が権利を得ると見込まれる対価の額(返品されると見込まれる対価の額を除く)で収益を認識する。

②返品されると見込まれる商品等については収益を認識せず、その対価の額で返金負債を認識する。

③返金負債の決済時に顧客から商品等を回収する権利を資産として認識する。

販売後、決算日ごとに②の返金負債及び③の資産の金額は見直す必要があります。

また、顧客が欠陥のある商品等を正常品と交換するために返品することができる契約については、「財またはサービスに対する保証」の取扱いに従って、会計処理を行う必要があります。



2018年5月 1日 (火)

収益認識に関する会計基準等の概要③

5.返金不要な契約における取引開始日の顧客からの支払

契約における取引開始日(またはその前後)に、顧客から返金が不要な支払を受けることがあります。この場合、①その支払が約束した財・サービスの移転を生じさせるものか、②将来の財・サービスの移転に対するものかを判断する必要があります。

①の場合には、その財・サービスの移転を独立した履行義務として処理するかどうかの判断が必要となります。

②の場合には、将来その財・サービスを移転(提供)する時に収益を認識することになります。ただし、その支払によって契約更新オプションを顧客に付与する場合で、そのオプションが重要な権利を顧客に提供する場合には、この支払について、契約更新される期間を考慮して収益を認識することとされています。

6.ライセンスの供与

ライセンスの供与については、他の財・サービスを移転する約束と別個のものかどうかを検討する必要があります。別個のものでない場合には、それらを1つの履行義務として処理する必要があります。

別個のものである(独立した履行義務である)場合には、その約束の性質が次のいずれに該当するものかを判定します。

①ライセンス期間にわたり企業の知的財産にアクセスする権利を提供する

②ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利を提供する

①の場合は、一定の期間(ライセンス期間)にわたり充足する履行義務として処理され、②の場合は、一時点(顧客がライセンスを使用してその便益を享受てきるようになった時点)で収益を認識することとなります。

①と②の判断基準については、次の3つの要件のすべてに該当する場合は、①に該当するものとされています。

・ライセンスにより、顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められているか顧客により合理的に期待されている。

・顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的な影響を受ける。

・顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、財・サービスが顧客に移転しない。

また、知的財産に著しく影響を与える企業の活動として、次の2つが示されています。

・知的財産の形態(デザインやコンテンツ)または機能性を著しく変化させると見込まれること

・顧客が知的財産からの便益を享受する能力が、その活動により得られるかその活動に依存していること(例として、ブランドからの便益は企業がその知的財産の価値を補強・維持するための活動を行うことにより得られるか、その活動に依存している場合が多いとされています。)

さらに、知的財産のライセンス供与に対して売上高や使用量に基づくロイヤルティが、その知的財産のライセンスのみに関連しているか支配的な項目である場合には、次のいずれか遅い方で収益を認識することとされています。

・知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時または顧客が知的財産のライセンスを使用する時

・売上高や使用量に基づくロイヤリティの一部または全部が配分されている履行義務が充足(部分的な場合を含む)される時

7.買戻契約

(1)企業が商品等を買い戻す義務(先渡取引)または企業が商品等を買い戻す権利(コール・オプション)

このような場合、契約上の約束や企業の意思で商品等を企業が買い戻すことができるため、顧客はその商品等に対する支配を獲得していないと考えられます。そこで、以下のように取り扱うこととされています。

 買戻価格が当初の販売価格より低い場合…その契約をリース取引として処理する

 買戻価格が当初の販売価格より高い場合…その契約を金融取引として処理する

金融取引として処理するとは、商品等を企業が引き続き認識し、顧客から受け取った対価については金融負債(借入金等)として認識します。当初の販売価格と買戻価格との差の部分は金利(または加工・保管コスト)として認識します。

(2)企業が顧客の要求により商品等を買い戻す義務(プット・オプション)

当初の販売価格よりも低い価格で買い戻す義務がある場合には、取引開始日において、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判断することとされています。

 重要な経済的インセンティブを有していると判断される場合…その契約をリース取引として処理する

 重要な経済的インセンティブを有していないと判断される場合…返品権付の販売として処理する

当初の販売価格よりも高い価格で買い戻す義務がある場合で、その買戻価格が予想される時価よりも高い場合は、金融取引として処理することとされています。

一方、その買戻価格が予想される時価よりも低い場合で、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していないと判断される場合は、返品権付の販売として処理することとされています。

<次回につづく>


2018年4月23日 (月)

収益認識に関する会計基準等の概要②

企業会計基準委員会は、収益認識に関する会計基準等を公表し、平成33年4月1日以降開始する事業年度(平成34年3月期)から適用されることとなりました。前回は、この基準の大きな流れとなる5つのステップでの収益認識について触れましたが、今回と次回にわたって、適用指針の中で明示されている特定の状況・取引における取扱いについてまとめてみたいと思います。

1.財・サービスに対する保証

約束した財・サービスに対する保証が合意された仕様に従っているという保証のみである場合には、(製品保証)引当金として処理することとされています。

一方で、合意された仕様に従っている保証に加えて顧客にサービスを提供する保証(保証サービス)を含む場合、この保証サービスは履行義務に該当するものとされています。

また、合意された仕様に従っている保証と保証サービスを区分して合理的に処理できない場合は、両者を単一の履行義務として取り扱うこととされています。

2.本人と代理人の区分

本人か代理人かの問題は、認識する収益(売上高)の金額に関わる問題であるため、売上高を重視する企業(業種)においては、非常に重要な問題となる可能性があります。

顧客との約束が財・サービスを企業自らが提供する履行義務であると判断される(企業が本人に該当する)場合には、企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識します。

一方、顧客との約束が財・サービスを他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断される(企業が代理人に該当する)場合には、企業が権利を得ると見込む報酬(手数料)の金額を収益として認識します。

実務指針第42項によると、企業が本人であるのか代理人であるのかの判断は以下の手順で行うこととされています。

①顧客に提供する財・サービスを識別する(顧客に提供する財・サービスが、他の当事者が提供する財・サービスに対する権利である可能性があるため)

②財・サービスが顧客に提供される前に、当該財・サービスを企業が支配しているかどうかを判断する

3.追加の財・サービスを取得するオプションの付与

既存の契約に加えて追加の財・サービスを取得するオプションを顧客に付与する場合、当該オプションが既存の契約を締結しなければ受け取ることができないような重要な権利を顧客に提供する場合にのみ、当該オプションから履行義務が生じることとされています。

この重要な権利を提供する場合の例示として、「顧客が属する地域や市場における通常の値引きの範囲を超える値引きを顧客に提供する場合」が挙げられています。

重要な権利を提供する(履行義務が生じる)場合は、通常受けられる値引の金額や当該オプションが行使される可能性を考慮して、独立販売価格を見積り、取引価格を配分する必要があります。そして、将来財・サービスが移転する時点あるいは当該オプションが消滅する時点で収益を認識することとなります。

4.顧客により行使されない権利(非行使部分)

将来財・サービスを移転する履行義務について、移転前に顧客から支払を受けた場合には、その金額で「契約負債」を認識することとなります。

しかし、前払を行った顧客のすべてが権利を行使する訳ではないため、権利行使されない部分は「契約負債」として残り続けることとなります。この残った「契約負債」の取扱いをどうするかという論点です。

企業が将来において権利を得ると見込む場合(非行使部分の金額を合理的に見込める場合?)には、顧客の権利行使のパターンと比例的に非行使部分を収益認識することになります。

一方、企業が将来において権利を得ると見込まない場合(非行使部分の金額を合理的に見込めない場合?)には、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時点で収益を認識することとなります。

<次回につづく>

2018年4月16日 (月)

収益認識に関する会計基準等の概要①

前回のブログでも取り上げた通り、企業会計基準委員会は、収益認識に関する会計基準等を公表し、平成33年4月1日以降開始する事業年度(平成34年3月期)から適用されることとなりました。今回から暫くの間、この会計基準等の概要について、まとめてみたいと思います。

1.会計処理の考え方

前回のブログのおさらいですが、この会計基準は先に公表されているIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の考え方を基礎としています。

基本となる原則
約束した財・サービスの顧客への移転を、当該財・サービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行う。

基本となる原則に従って収益を認識するための5つのステップ
 ① 顧客との契約を識別する。
 ② 契約における履行義務を識別する。
 ③ 取引価格を算定する。
 ④ 契約における履行義務に取引価格を配分する。
 ⑤  履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて収益を認識する。

今回は、この5つのステップの中身について、触れてみたいと思います。

2.契約の識別

この会計基準等を適用するにあたっては、次の要件をすべて満たす顧客との契約を識別する必要があります。

① 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること
② 移転される財・サービスに関する各当事者の権利を識別できること
③ 移転される財・サービスの支払条件を識別できること
④ 契約に経済的実質があること
⑤ 顧客に移転する財・サービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと

①に記載の通り、契約の形態については必ずしも書面で残されている必要はない(口頭や取引慣行も認められている)のですが、会計上の判断過程を明確にしたり、会計監査への対応を考えた時に、今後文書化の必要性がないかどうかを検討しておくことが考えられます。

3.履行義務の識別

契約にける取引開始日に、顧客との契約において約束した財・サービスを評価し、それを顧客に移転する約束を履行義務として識別します。

ここで、複数の財・サービスを顧客に移転する契約となっている場合に、それらを別個の履行義務として取り扱うのか、1つの履行義務として取り扱うのかが論点になります。

会計基準第34項では、「どのような場合に別個の財・サービスと考えるべきなのか?」という点について、以下の2つの判断基準を示しています。

○顧客が、財・サービスからの便益を、それ単独または容易に利用可能な他の資源と一緒にして得ることができるかどうか?

○ある財・サービスを移転するという約束が、同じ契約の中の他の約束と別個に識別できるかどうか?

4.取引価格の算定

取引価格とは、「財・サービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額」ですが、取引価格を算定する際には次の影響を考慮する必要があるとされています。

○変動対価
○契約における重要な金融要素
○現金以外の対価
○顧客に支払われる対価

この中でも「変動対価」については、返品・値引・割戻(リベート)等の要素が含まれるため、多くの企業が影響を受けることが予想されます。

5.履行義務への取引価格の配分

収益の認識は履行義務を基礎として行われるため、算定された取引価格を契約の中で識別された履行義務に配分する必要があります。この配分は、財・サービスの独立販売価格(その財・サービスを単独で企業が顧客に販売する場合の価格)の比率に基づいて行う必要があります。

6.履行義務の充足による収益の認識

収益の認識は、履行義務を充足した時(約束を果たした時)に行われますが、この履行義務の充足は、一時点で充足するケースと一定の期間にわたり充足するケースがあるとされています。

以下のいずれかの要件を満たす場合には、その履行義務は一定の期間にわたり充足される(収益が認識される)こととされています。

○企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受する場合

○企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じるか、資産の価値が増加し、それにつれて、顧客が当該資産を支配する場合

○次の要件のいずれも満たす場合
 ・企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じる。
 ・企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有している。

これが、収益認識に関する会計基準等の基本的な流れになります。次回は、特定の状況・取引における取扱いが明示されているものをご紹介したいと思います。


2018年4月 9日 (月)

ASBJ 収益認識に関する会計基準等を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、3月30日、「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」を公表しました。

ご承知の方も多いと思いますが、国際会計基準委員会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同で収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」は2018年1月1日以降開始する事業年度から適用されます。
これを受け、ASBJにおいて日本の収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討が行われ、今回の公表に至っています。

1.開発にあたっての基本的な方針

収益認識に関する会計基準の開発にあたっては、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点としつつ、日本の実務に配慮すべき項目がある場合には、IFRS等との比較可能性を損なわない範囲で代替的な取扱いを追加することとしています。
また、連結財務諸表と個別財務諸表においては、同一の会計処理を定める(連単分離はしない)こととしています。

2.会計処理の考え方

IFRS第15号の概要については、このブログでも触れさせて頂いていますので参照して頂ければと思いますが、今回公表された公開草案も同じ考え方を基礎としています。

基本となる原則
約束した財・サービスの顧客への移転を、当該財・サービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行う。

基本となる原則に従って収益を認識するための5つのステップ
 ① 顧客との契約を識別する。
 ② 契約における履行義務を識別する。
 ③ 取引価格を算定する。
 ④ 契約における履行義務に取引価格を配分する。
 ⑤  履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて収益を認識する。

3.特定の状況または取引における取扱い

以下の11項目については、適用指針の中で、より具体的な取扱いが示されています。

① 財・サービスに対する保証
② 本人と代理人の区分
③ 追加の財・サービスを取得するオプションの付与
④ 顧客により行使されない権利(非行使部分)

 ※①から④までの詳細はこちら

⑤ 返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
⑥ ライセンスの供与
⑦ 買戻契約

 ※⑤から⑦までの詳細はこちら

⑧ 委託販売契約
⑨ 請求済未出荷契約
⑩ 顧客による検収
⑪ 返品権付きの販売

 ※⑧から⑪までの詳細はこちら

4.重要性等に関する代替的な取扱い

「1.開発にあたっての基本的な方針」のところで述べたように、日本の実務に配慮すべき項目がある場合には、IFRS等との比較可能性を損なわない範囲で代替的な取扱いが追加されており、適用指針の中で示されています。(詳細はこちら

また、これまで日本基準で定められていたか実務の取扱いとして行われていた以下の会計処理は、今後認められなくなります。

・顧客に付与するポイントについての引当金処理
・返品調整引当金の計上
・割賦販売における割賦基準に基づく収益計上

5.表示及び開示

企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債または債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとされていますが、早期適用時の経過措置として、契約資産と債権を区分表示せず、それぞれの残高を注記しないことができる取扱いが設けられています。

また、収益の表示科目についても、現在一般的に用いられている「売上高」という科目については、仮にその名称を変更する場合に影響が広範に及ぶと考えられることから、この会計基準等が適用される時点(「6.適用時期」を参照)までに検討することとされており、早期適用する場合は、「売上高」の科目を継続して使用することができるとされています。

注記事項については、「企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)」を注記することとされていますが、一方で、IFRS第15号に定められている注記事項については有用性とコストの評価を十分に行うことができないため、必要最低限の定めを除き、注記事項は定めないこととされています。ただし、会計基準等が適用される時点までに注記事項の定めを検討することとされています。

6.適用時期

強制適用の時期は平成33年4月1日以降開始する事業(連結会計)年度とし、平成30年4月1日以後開始する事業(連結会計)年度及び平成30年12月31日から平成31年3月30日に終了する事業(連結会計)年度の期末から早期適用が認められています。

早期適用の時期については、冒頭述べた通り、IFRSや米国基準の適用時期に配慮したものと考えられます。

収益認識に関する会計処理は日常的な取引に対して行われるものであり、会計基準の適用により従来と収益を認識する時期または金額が大きく異なる場合、企業の経営管理及び業務プロセス(システム対応含む)を変更する必要性が生じる可能性もあるため、新しい(改正された)会計基準に対する通常の準備期間よりも長い準備期間が想定されています。企業の経理担当者の皆様におかれては、新しい収益認識基準の影響度(インパクト)をできるだけ早期に分析し、必要な対応策を検討する必要があるものと考えられます。

2018年2月19日 (月)

ASBJ 「税効果会計に係る会計基準」の一部改正等を公表

2月16日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号)とそれに関連する以下の適用指針の改正を公表しました。

・税効果会計に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第28号)

・繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)

・中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針(企業会計基準適用指針第29号)

1.主な改正の内容

(1) 個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い

 現行の取扱いでは、個別財務諸表における子会社株式及び関連会社株式に係る一時差異について、一律に繰延税金負債を計上することとされています。
 今回の改正では、連結財務諸表における子会社及び関連会社に係る将来加算一時差異の取扱いに合わせ、以下の2つの要件を満たした場合を除いて、繰延税金負債を計上することとされました。

① 親会社(投資会社)がその投資の売却等を会社自身で決めることができる。
② 予測可能な将来の期間に、その売却を行う意思がない。

(2) 分類1に該当する企業における子会社株式評価損に係る繰延税金資産の回収可能性の取扱い

 現行の取扱いでは、分類1に該当する企業においては、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとされています。
 しかし、完全支配関係がある国内子会社の株式評価損について、当該子会社を清算した場合には法人税法上損金算入が認められない(すなわち永久差異となる)ため、将来において税務上の損金に算入される蓋然性が低いときには、繰延税金資産の回収可能性はないと判断することも考えられることが明確にされました。

(3) 繰延税金資産・負債の表示

 現行の取扱いでは、繰延税金資産・負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて流動または固定区分に表示しなければならないとされています。
 今回の改正では、国際会計基準と同様にすべて固定区分に表示することとされています。

(4) 注記事項の追加

 財務諸表の利用者が税効果会計に関連する注記事項を利用する目的、その利用内容、実際に利用している情報を検討した上で、現状において不足していると識別された以下の情報について注記事項を追加することとされました。

① 評価性引当額の内訳に関する情報
・数値情報…発生原因別の注記に税務上の繰越欠損金が記載されており、その金額が重要な場合、発生原因別の注記に記載されている評価性引当額を税務上の繰延欠損金に係る金額と将来減算一時差異等の合計に係る金額とに区分して記載する。
・定性的な情報…評価性引当額(評価額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載する。

② 税務上の繰越欠損金に関する情報
・繰越期限別の数値情報…発生原因別の注記に税務上の繰越欠損金が記載されており、その金額が重要な場合、繰越期限別に以下の金額を記載する。
  税務上の繰越欠損金×税率(発生原因別の注記に記載される額)
  評価性引当額
  繰延税金資産
・定性的な情報…税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載する。

 なお、連結財務諸表を作成している場合には、上記の追加された注記事項のうち、評価性引当額の内訳に関する数値情報のみ個別財務諸表においても記載が求められます。

2.適用時期及び適用初年度に関する取扱い

(1) 適用時期

 すべての取扱いは、平成30年4月1日以後開始する事業年度(連結会計年度)の期首から適用することとされています。
 ただし、「繰延税金資産・負債の表示」及び「注記事項の追加」については、平成30年3月31日以後最初に終了する事業年度(連結会計年度)の期末から適用することが可能です。

(2) 適用初年度に関する取扱い

 「個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い」及び「分類1に該当する企業における子会社株式評価損に係る繰延税金資産の回収可能性の取扱い」の適用があった場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う必要があり、新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用することとされています。

 一方、「繰延税金資産・負債の表示」及び「注記事項の追加」については、表示方法の変更として取り扱い、比較情報となる過去の財務諸表については新たな表示方法に組み替える必要があります。ただし、「注記事項の追加」については、実務上の負担に配慮し、適用初年度の比較情報には記載しないことも認められています。

 この改正によって、従前、日本会計士協会から公表されていた税効果会計に関する実務指針及びQ&Aは改廃の検討がなされる予定となっています。

2018年1月19日 (金)

ASBJ 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱いを公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、1月12日、実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」を公表しました。

1.公表の背景

最近、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する際に、一定の額の金銭を企業に払い込むタイプのものが見受けられるようになりました。
このようなケースは、ストック・オプション会計基準(企業会計基準第8号)の公表時には想定されておらず、ストック・オプションに該当するのか、複合金融商品に該当するのかが明確でなかったため、今回実務対応報告が公表されることとなりました。

2.対象となる範囲

この実務対応報告の対象となる取引は、以下のような新株予約権が想定されています。

a.企業が従業員等を引受先として新株予約権の募集要項を決議し、新株予約権には市場価格がない。

b.権利確定条件として、勤務条件及び業績条件が付されているか、勤務条件は付されていないが業績条件が付されている。

c.引き受ける従業員等は、申込期日までに申し込む。

d.企業は、申込者の中から新株予約権を割り当てる者及び数を決定し、割当を受けた従業員等は、割当日に新株予約権者となる。

e.新株予約権者となった従業員等は、払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込む。

f.権利確定条件が満たされた場合は権利行使可能となり、満たされなかった場合は失効する。

g.新株予約権者となった従業員等は、権利が確定した新株予約権を行使する場合、行使価格に基づく金額を企業に払い込む。

h.企業は、新株予約権が行使された場合、行使した従業員等に対して新株を発行するか自己株式を処分する。

i.新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了した場合、新株予約権は失効する。

3.会計処理

権利確定条件付き有償新株予約権は、従業員等が金銭を企業に払い込むことから、資金調達や投資の機会の提供という性格を有すると考えられる一方で、その他の点については、ストック・オプション会計基準が想定する報酬としての性格を併せ持つものと考えられます。
そこで、前述のような権利確定条件付き有償新株予約権は基本的にストック・オプションに該当するとした一方で、従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として用いられていないことを立証できる場合には、ストック・オプションに該当しないものとし、この場合には、複合金融商品適用指針(企業会計基準適用指針第17号)に従うこととされています。
ストック・オプションに該当する権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理は以下の通りとなります。

(1)権利確定日以前の会計処理

①当該新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額(対象となる範囲のe参照)を、純資産の部に新株予約権として計上する。

②当該新株予約権の付与に伴い企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、純資産の部に新株予約権として計上する。

※各会計期間に費用として計上する額は、当該新株予約権の公正な評価額-払込金額(①参照)を、対象勤務期間を基礎とする方法等の合理的な方法に基づき計算する。

※当該新株予約権の公正な評価額=新株予約権の公正な評価単価×新株予約権の数

③新株予約権の公正な評価単価は、付与日において算定することとし、条件変更の場合を除いて見直しは行わない。また、算定技法については、ストック・オプション会計基準に従うが、失効の見込みについては当該新株予約権数に反映させる(④参照)ため、評価額の算定上は考慮しない。

④新株予約権の数=付与された新株予約権の数-権利不確定による失効の見積数 によって算出する。

※権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合は、新株予約権の数を見直すこととなり、見直しを行った結果、企業が従業員等から取得するサービスに対する費用の計上額が(過年度分も含めて)変動するが、この変動額は見直しを行った期の損益として計上する。

※権利確定日には、権利の確定した新株予約権数に修正し、企業が従業員等から取得するサービスに対する費用の計上額が(過年度分も含めて)変動するが、この変動額は権利確定日の属する期の損益とする。

⑤新株予約権として計上した払込金額(①参照)のうち、権利不確定により失効(対象となる範囲のb及びf参照)した部分に対応する金額は利益として計上する。

(2)権利確定日以後の会計処理

①新株予約権として計上した額のうち、権利行使に対応する部分は資本に振り替える。

②権利不行使による失効(対象となる範囲のi参照)した部分に対応する部分は、失効が確定した期に利益として計上する。

(3)権利確定日の決定方法

①権利確定条件として勤務条件及び業績条件が付されている場合

 いずれかの条件を満たした時に権利確定する場合は、その条件を満たした日を権利確定日とする。

 両方の条件を満たした時に権利確定する場合は、両方の条件を満たした日を権利確定日とする。

②権利確定条件として勤務条件は付されていないが、業績条件のみが付されている場合

 業績が達成する(または達成しない)ことが確定する日を権利確定日とする。

4.開示

注記については、ストック・オプション会計基準第16項及び第24項から第35項に従って行うこととされています。

5.適用時期

①平成30年4月1日以後適用となりますが、実務対応報告公表日以後は適用することも認められています。また、実務対応報告公表日以前に発行された権利確定条件付き新株予約権についても遡及適用することを原則としています。

②なお、遡及適用を行うにあたって、実務対応報告公表日より前に新株予約権が権利行使され新株発行されている場合は、この実務対応報告の適用により新株予約権として計上される額のうち、権利行使に対応する部分を払込資本として計上することになります。

この点、本来は会社法の規定に従って科目(資本金、資本準備金、その他の資本剰余金)を決定することになりますが、この実務対応報告を適用しても新株予約権の行使があった場合の「資本金等増加限度額」(会社計算規則第13条①)を修正するものではないことから、その他資本剰余金として計上することとされています。

③さらに、実務対応報告公表日より前に新株予約権を付与している場合でも、実務上の困難さを考慮して、一定の注記を行うことを条件に従来採用していた会計処理を継続することも認められています。

④この実務対応報告の適用初年度において、従来の会計処理と異なることなる場合や、③を適用して従来適用していた会計処理を継続する場合は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われます。

2017年10月31日 (火)

ASBJ 「修正国際基準」の改正案を公表

10月31日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「修正国際基準」といいます。)の改正案を公表しています。

今回の改正案では、2016年9月30日までに国際会計基準審議会(IASB)より公表された会計基準等のうち、2017年12月31日までに発行するものを対象にエンドースメント手続を実施した結果が反映されており、特に、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」がエンドースメント手続の対象となっています。

エンドースメント手続を実施した結果、IFRS第15号の以下の内容については、削除または修正を行うかどうかの検討が行われたようです。

○ 支配の移転の考え方の工事契約への適用
○ 開示(注記事項)
○ その他の項目:原価回収基準、棚卸資産以外(固定資産等)の売却の会計処理

ただ、いずれの項目についても、IFRS第15号の内容を削除または修正しないことと結論付けられており、「修正国際基準」を適用する場合においても、IFRS第15号の内容はそのまま受け入れる(適用する)ことが求められる方向性のようです。

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