内部統制

2016年8月15日 (月)

連結決算実務における現状と課題③

3.連結決算業務における課題

前回の記事でも取り上げましたが、連結決算業務における人材面での主要な課題の1つに「子会社とのコミュニケーションがうまく図れないスタッフが多い」というものがありました。また、外部専門家やアウトソーシング(外注)を活用したい業務についての質問に対して、半数以上の企業が「子会社に配布するレポーティング・パッケージの作成及びメンテナンス」を挙げています。

このように、連結決算業務における大きな課題の1つとして、連結グループ各社の業績を効果的・効率的に集計するという問題があるようです。レポーティング・パッケージの問題については、パッケージ自体の作り込みが発展途上ということも考えられるが、報告データ自体が年々増加し限界に近付いているかもしれないという指摘もなされていますし、半数近い企業がレポーティングパッケージの収集過程によるトラブル(提出遅れや作成ミス)によって、予定外の休日出勤や残業が増加したと回答しています。

また、レポーティング・パッケージを扱う(作成する)子会社側の担当者のスキルについても質問したところ、6割の企業が不十分であると回答しています。報告の中では親会社側の負担が指摘されていますが、子会社側でも十分なマンパワーが与えられておらず、レポーティング・パッケージを用意することの負担があるのではないかと想像されます。

子会社のレポーティング(報告)内容に不安を感じている地域はどこか?という質問については、ASEAN諸国(37%)と中国(33%)が抜けており、これらの国々への事業展開が急速に進んだことに対して、管理面が十分に追いついていない姿が浮き彫りになっています。

報告は、より「自動化」を進めた連結決算体制を構築していくことの重要性を指摘して結論としていますが、これにはシステム的な作り込みが必要となるため、時間と資金の投入が必要となります。この問題点を緩和するという点においては、外部専門家やアウトソーシングの活用も十分に進んでいるとは言えず、検討の余地があるのではないかと思われます。(おわり)

<参考>
日本CFO協会 連結決算実務における現状と課題

2016年8月 8日 (月)

連結決算実務における現状と課題②

2.連結決算担当者の人数とスキル

連結決算担当者の人員数やスキルは十分か?という質問に対する調査結果は、以下のような状況となっています。

人員数
 多い…4%
 ちょうどよい…52%
 足りない…44%

スキル 
 十分である…14%
 ちょうどよい…39%
 不十分である…46%

前回の記事で、約3分の2の企業が、連結決算の内容について不安がないとは言えないという回答していたことを取り上げましたが、それを裏付けるように約半分の企業が連結決算担当者の人数やスキルに不安を抱えているということが分かります。

では、どのような点に課題があると考えられているのでしょうか。とりわけ回答率が高かったのは以下の3点です。

①スペシャリスト育成に向けた長期的な在任が実現できない。
②人事ローテーションに伴い業務やスキルが定着しない。
③子会社とのコミュニケーションがうまく図れないスタッフが多い。

①と②は似たような内容かと思うのですが、要は十分なスキルを持った人材を連結決算業務に定着させることの困難性を示しています。これについては、

・日本企業のいわゆるゼネラリストを育成するという人事方針によって、1つの業務に長く人材を定着させることが難しい。

・連結決算業務という特殊な業務(スキル)への希望者が少ない。

というような要因が指摘されています。人材の確保が難しいだけに業務を標準化して、「誰がやっても一定の成果が出るように」という話はよく聞くところですが、経理業務は他の業務に比べて専門性が高く属人化しやすいという問題を抱えているように思われます。

そのためか、課題解決に向けた取組についても、OJTによる指導、自己学習(自己啓発)、監査法人や連結システム会社が開催するセミナーへの参加といった教育研修的な取組が中心となっているようです。

では、外部専門家やアウトソーシング(外注)の活用については、どうでしょうか? 調査の結果では、35%の企業が外部専門家を活用し、13%企業がアウトソーシングを活用していると回答しています。仕事が属人化する傾向が強い中で、外部への委託については難しい面もあるかと思われますが、必要なリソースを確保するという点では有効な手段の1つではないかと考えられます。(つづく)

<参考>
日本CFO協会 連結決算実務における現状と課題

2016年8月 1日 (月)

連結決算実務における現状と課題①

一般社団法人日本CFO協会が「連結決算実務における現状と課題」に関する調査結果を公表しています。この調査は、上場企業等の財務部門の幹部を対象に行われ、約300社から回答が寄せられたとのことです。

連結決算体制の整備については、開示制度が連結中心になった頃や内部統制報告制度の導入が決まった頃にはトピックスだったような気がしますが、今となっては少し古いテーマのようにも感じました。今、このような調査をすることにどのような意義があるのだろうと思いながら、読んでみることにしました。

1.連結決算のスピードと信頼性

まず、連結決算(決算発表までの)スピードとその信頼性についての質問です。

連結決算発表までの期間について
 ①決算日から30日以内…27%
 ②決算日から31日から45日…58%
 ③決算日から46日以上…15%

東京証券取引所が「45日以内の開示」という一定の方針を示していることを考えると、決算発表に46日以上を要している企業がまだ15%もあるというのは意外でした。
また、より一層の早期化のニーズを感じている企業が①の企業の3割近く、②の企業の6割近くに達している一方で、③の企業の5割近くが早期化の必要はないと回答しているのも特徴的だと感じました。

これまでに公表した決算情報の正確性に
 ①不安はない…35%
 ②不安がある…30%
 ③どちらともいえない…35%

この数字について、皆さんはどうお感じになられたでしょうか? 投資家の皆さんからすると憤慨されそうな数字ですが、個人的には「正直な感想かなあ」と思いました。決算発表までの時間的制約に加え、海外も含め企業グループが拡大していることに伴って、連結決算の精度を保つというのは非常に難しくなってきていると感じるからです。
また、30日以内に決算発表を行っている企業では、①が44%、②が21%となっていたのに対し、46日以上を要して決算発表を行っている企業では、①が17%、②が44%と回答しているのも特徴的だと感じました。

決算発表に時間を要している企業ほど、実務上何らかの課題を抱えていて、それを解決する(本当に解決できているかどうかはともかく)のに時間を要しているといった構図が見えてくるような気がします。

また、企業ごとの連結決算(決算発表)に対する取組姿勢のようなものもこの数字に表れているような気がします。単純に決算発表を早めましょうということではなく、その企業がどういう姿勢で連結決算や決算発表に取り組んでいるのかということの1つの表れが、この決算発表までに要する日数ではないかと感じるのです。(つづく)

2015年10月 5日 (月)

開示規制違反による課徴金事例集

証券取引等監視委員会は、8月28日「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規則違反編~」を公表しています。

これは、同委員会の開示検査の結果確認された不適正な会計処理等の概要を取りまとめ、適切な開示に向けた市場関係者の自主的な取組を促すことが目的とされています。

その中で、違反の手法には一定の傾向(パターン)が観察されており、最近の件では以下の事案が把握されているようです。(事例集P.9~10参照)

①代表者等の会社幹部が自ら主導するなどして不適正な会計処理が行われていたケース

 創業者等の影響力が強い役員等が不適正な会計処理を行った結果、他の取締役や監査役からの牽制が十分機能していない問題や代表者自身のコンプライアンス意識が欠如しているという問題が指摘されています。
 具体的な事象としては、業績等をよく見せるための不適正な会計処理に加えて、個人的な債務返済等のために会社の資金を流出させていたケースもあるようです。

②海外子会社等において不適正な会計処理が行われ連結財務諸表に影響が及ぶケース

 企業の海外進出が拡大し、海外子会社等の財務情報に対して適切なモニタリングが行えているかという企業集団全体としての内部統制のあり方が問われていると指摘されています。
 具体的な事象としては、社内の会計基準が整備されていなかった結果、不適正な会計処理が行われていたケースや厳しい目標を達成するために不適正な会計処理が行われていたケースがあったようです。

③資産の評価が適切に行われていないケース

 資産評価の重要性に対する認識の甘さや取締役会等の機能不全という問題が見受けられると指摘されています。

 特に、②の海外子会社のモニタリングについては私も問題意識があることから、このブログで何度も触れているところです。問題が生じてから動き出すのではなく、問題を認識していない状況でも、本当に適切なモニタリングが実施できているかを考えておく必要があると考えます。

内部統制の世界では、「便りがないのは良い便り」とは限らないのです。

2015年7月 7日 (火)

海外出張に行ってきました

先週、香港・バンコクに海外出張に行ってきました。

今回の出張では、現地の会計事務所や経営コンサルタントの方々をご訪問させて頂き、既に現地に進出されている企業様や今後現地に進出する計画のある企業様のサポートをお願いする体制を作ることを主な目的としていました。お会いした方々は、皆さん誠実に真剣に業務に取り組まれていると感じることができ、安心するとともに、我々もより一層頑張っていかねばいけないなと感じました。

私は、日本企業の皆様が海外進出をされる際に、信頼性が高く、日本語でコミュニケーションが取れる専門家の存在は非常に重要だと考えています。

以前、私のブログでも取り上げましたが、企業の粉飾決算の問題が生じる時、海外子会社がその舞台になることが少なくありません。(海外子会社の財務情報のモニタリングをご覧ください。) その原因は様々ですが、私は以下のように考えています。

日本では、「便りの無いのは良い便り」とも言われ、「何も報告がない=何も問題がない」と考えがちですが、海外子会社管理はそれでいいのでしょうか。何も報告がない間に、問題がどんどん深刻になっていたということはないでしょうか。そこで、何も問題がないことを「確かめる(モニタリングともいいますね)」ことが非常に重要になってくると考えています。

しかし、日本の親会社から海外子会社に問題が起きていないことを確かめる作業は非常に労力がかかります。そこで、現地の専門家を活用してモニタリングの仕組みを構築することを検討されてはいかがでしょうか。

信頼性が高く、しかも、日本語でコミュニ-ケーションが取れる専門家の方は、ローカルの専門家の方に比べると、コストが高くなるという話をよくお聞きします。しかし、十分なモニタリングの仕組みを構築するために必要なコストと考えるべきではないかと思います。

あすかアソシエイツ(あすかコンサルティング㈱/あすか税理士法人) では、このような現地の専門家をご紹介できるようネットワークの構築を進めています。ご興味を持たれた方は、是非一度お問い合わせくださいませ。

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2015年3月17日 (火)

内部不正への効果的な対応とは?

最近デジタル・フォレンジックという言葉に関心があり、先日それに関係するセミナーに参加してきました。

(参考)デジタル・フォレンジックとは?

インシデントレスポンスや法的紛争・訴訟に際し、電磁的記録の証拠保全及び調査・分析を行うとともに、電磁的記録の改ざん・毀損等についての分析・情報収集等を行う一連の科学的調査手法・技術

※インシデントレスポンス…コンピュータやネットワーク等の資源及び環境の不正使用、サービス妨害行為、データの破壊、意図しない情報の開示等、並びにそれらへ至るための行為(事象)等への対応等

(NPO法人デジタル・フォレンジック研究会のホームページより)

この定義からも分かるように、デジタル・フォレンジックの技術は、単に情報セキュリティ上の問題のみならず、不正会計等の企業不祥事においても活用されているそうです。

そのセミナーの中で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2012年に公表した「組織内部者の不正行為によるインシデント調査」という調査報告が取り上げられていたのですが、大変興味深かったので、取り上げてみたいと思います。 ※インシデント…情報セキュリティ上の事件・事故のこと

この調査報告は、組織内部者の不正行為によるインシデントは件数こそ少ないものの、一度発生すると被害の大きさ(被害額)が非常に大きくなる傾向があり、経営にとって看過できない問題であるとの認識の下に、内部不正の誘発要因や抑止・防止が期待できる対策に関して一般企業の社員と経営者・管理者に対するアンケートをもとにして取りまとめられたものです。

(1) 内部不正への気持ちを高める要因

「不当だと思う解雇通告を受けた」「組織・上司に不満がある」「社内の人事評価に不満がある」が上位にランキングされています。
インシデントを未然に防止するためには、一般的に情報セキュリティ体制の強化が取り上げられるケースが多いと思われますが、社内不正によるインシデントを未然に防止するためには、いわゆる人事的な側面にも注目する必要があるという結果が出ています。

(2) 内部不正によるインシデントに効果があると思われる対策

経営者・管理者の回答では、「重要情報は特定の職員のみアクセスできるようになっている」「情報システムの管理者以外に情報システムへのアクセス管理が操作できないようになっている」というようなアクセス制御に関連した対策が上位にランキングされました。

一方で、社員の回答では、「社内システムの操作の証拠が残る」「顧客情報などの重要な情報にアクセスした人が監視される」が上位にランキングされており、経営者・管理者の認識との間に大きなずれがある点は大変興味深いと思われます。

いずれの施策も情報セキュリティを高める効果は期待できるものですが、アクセス制御の強化は社員にとって効果的な抑止力にはなっていないという現状があり、社員に不正の証拠が調査・分析できる体制になっている(自分の足跡が記録されている)ということを周知させることが重要になってきているということが伺えます。

この調査は情報インシデントを対象にしたものですが、不正会計のような一般的な社内不祥事に対しても当てはまるのではないかと考えます。さらには、非常時におけるデジタル・フォレンジックの活用のみならず、内部監査等を通じた日常的なモニタリング(監視)があれば、その効果は一層高まるものと考えられます。

いずれにしても、今後電子データの調査・分析技術の重要性がますます高まっていくと感じたセミナーでした。

2015年1月26日 (月)

海外子会社の財務情報のモニタリング

(経営財務 3195号 2015年1月12日より)

証券取引等監視委員会が、昨年8月に公表した「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」を通して、内部統制整備のポイントを考えてみたいと思います。

金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~

この中で、開示違反の手法の傾向として、以下の3点が指摘されています。(事例集のP.9~P.10参照)

①不適切な会計処理の隠ぺいを図るため、海外子会社や海外ファンドが利用されるケース

②海外子会社等において不適切な会計処理が行われ、連結財務諸表に影響が及ぶケース

③経営者や取締役等の会社幹部が主導して不適正な会計処理が行われるケース

この中で、特に強調したいのは②のケースです。昨今では、上場会社等のみならず、中堅・小規模企業においても海外子会社を持たれるケースが増えてきているように思われますが、同様の危険性(リスク)に留意する必要があると思われます。

海外子会社は会計監査を受けているケースが多く、監査報告書の入手をもって海外子会社の会計処理は適切に行われており、正確な業績報告が本社にも届いていると判断するケースが多いように思います。

にもかかわらず、不適切な会計処理が発見される事例が散見されるということはどういうことなのか? これは、全面的に会計監査に頼ることは危険であるということを意味すると考えられます。

私も、これまでにアジアを中心に約10か国に出張して、各国の会計士にインタビューをさせて頂いた経験がありますが、「色々なレベルの会計士がいる」というのが率直な感想です。特に、中小の事務所では、会計監査をいわゆる税法基準でやっているのではないか?と疑われるケースもあり、このような場合には問題の発見も遅くなる傾向があるように思います。

では、このような問題にどのように対処するか?ということですが、事例集でも指摘されているように、海外子会社等の財務情報に対して、現地固有の統制環境やリスクの評価も踏まえた適切なモニタリング(監視)を行う体制を作るということがポイントになるのではないかと考えます。

報告された情報に対する適時のフィードバックはもちろんですが、内部監査体制を作って、会計監査とは別の視点から財務情報をチェックするということも考えられます。中小規模の会社様では、そこまでの人員を割くことは困難な場合もあるかと思いますが、その場合は外部の専門家を活用する(応援を依頼する)ことも有効と考えます。

外部の専門家の活用はお金がかかる(高い)と思われる方が多いように思いますが、「転ばぬ先の杖」と考えられてはいかがでしょうか。あすかコンサルティング株式会社 では、海外子会社の内部監査の受託・支援のサービスも提供させて頂いております。ご興味のある方は是非お問い合わせください。

2014年10月20日 (月)

平成26年金融商品取引法の改正(その2)

前回に引き続き、今年の5月30日に公布された金融商品取引法の改正内容について、まとめてみたいと思います。

流通市場における虚偽記載等に係る賠償責任の見直し
従来は、有価証券報告書等の開示書類に虚偽記載があった場合、その虚偽記載により生じた損害を賠償する責任が、以下の通り定められていました。

 提出者(会社)…発行市場・流通市場ともに無過失責任

 提出者の役員…発行市場・流通市場ともに立証責任の転換された過失責任

 提出会社の監査法人…監査証明について故意または過失がなかったことを立証できれば免責

(1) 流通市場における提出者(会社)の無過失責任の見直し
民法上の一般不法行為責任は、加害者の「故意または過失」について、被害者が立証しなければならないこととされています。(過失責任の原則)
それにも関わらず、金融商品取引法において提出者の虚偽開示書類の責任を例外的に無過失責任としていたのは、民事訴訟による責任追及を容易にすることによって、違法行為の抑止を図り、証券市場の公正性・透明性を向上させることにあったと考えられていました。
しかし、近年虚偽開示書類に対する課徴金制度の導入等により、提出者に無過失責任を課すことの意義が相対的に低下してきていることやそもそも流通市場において提出者に無過失責任を負わせるのは不合理であるという指摘がありました。
これらを踏まえ、改正後は流通市場における投資者は「虚偽記載等について故意または過失がなかったことを証明したとき」は賠償責任は負わされないこととなりました。

(2) 流通市場における損害賠償責任の請求権者の拡大
従来は、虚偽開示書類が公衆縦覧に供されている間に、当該虚偽書類の提出者が発行する有価証券を取得した投資者だけが提出者等に損害賠償を請求できることとされていました。
この点につき、いわゆる逆粉飾が行われ、その情報に基づいて保有している有価証券を処分した投資者も損害を被る可能性があるとの指摘がなされていました。
このことを踏まえ、損害賠償の請求権者に虚偽記載種類の提出者が発行する有価証券を処分した投資者も含まれることとなりました。


3.新規上場企業の負担軽減(内部統制監査の免除)
新規・成長企業の新規上場を促進するという観点から、内部統制報告制度に対する負担軽減が検討されました。
その結果、新規上場企業が上場後3年後以内に提出する内部統制報告書については、内部統制監査を受ける必要がなくなりました

【改正のポイント】
内部統制報告書の提出が免除される訳ではなく、監査が免除されるだけであるという点に留意が必要です。

公認会計士法上の大会社(資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上)に該当する企業は免除対象にはなりません

再上場企業についても免除対象にはなりません

任意で内部統制監査を受け、内部統制報告書に添付することは妨げられていません。

(以上、おわり)

2012年6月22日 (金)

JICPA 内部統制監査に関する実務上の取扱いを改正

日本公認会計士協会(JICPA)は、6月15日「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(監査・保証実務委員会報告第82号)を改正し公表しました。(原文はこちらからダウンロード可能です) 今日は、その主な改正内容についてまとめてみます。

1.監査人が一体監査を実施する上での監査役等とのコミュニケーションにおける留意事項(第44-2項)

監査役とのコミュニケーションが要求される事項として、以下の点が挙げられています。

 ○内部統制監査に関連する監査人の責任

 ○計画した監査の範囲とその実施時期の概要

 ○監査上の重要な発見事項

 ○監査人の独立性

コミュニケーション・プロセスについて、監査人は以下の点に留意すべきであるとされています。

 ○想定されるコミュニケーションの手段、実施時期及び内容について、監査役等とコミュニケーションを行うこと

 ○口頭でのコミュニケーションが適切ではないと考える場合、監査上の重要な発見事項について、書面によりコミュニケーションを行うこと

また、会社の統制環境やモニタリング等の重要な一部を担う監査役等から有効な双方向のコミュニケーションを通じて、監査に関連する必要な情報を入手することが重要であるとされています。 
 

2.内部統制監査における「重要な事業拠点」と財務諸表監査における「個別の財務的重要性を有する重要な構成単位」の関係(第89-2項)

両者は選定主体や選定方法が異なるため、必ずしも一致するものではありませんが、重要な虚偽表示リスクを潜在的に有しているという点では共通点があると考えられています。

このため、監査人は一体監査の観点から両者の関係に留意する必要があるということが明記されています。

3.内部統制監査における「全社的な内部統制」と財務諸表監査における「グループ内部統制」の関係(第116項)

内部統制監査における全社的な内部統制及び全社的な観点で評価することが適切と考えられる決算・財務報告プロセスのうち、企業集団全体に適用される内部統制があれば、それは財務諸表監査におけるグループ内部統制に該当する関係にあると考えられます。

4.監査人が一体監査を実施する上で、経営者確認書に記載することを要請しなければならない事項(第281項)

監査人が一体監査を実施するにあたっては、財務諸表監査に関する確認事項に加え、次の事項について記載した経営者確認書を提出するよう要請することが求められています。

 ○内部統制報告書の作成に関する事項

 ○内部統制報告書に重要な影響を及ぼす事項

 ○財務報告の内部統制の有効性に係る事項

 ○監査人に提供される情報の網羅性

具体的な確認書の文案については、委員会報告の中で文例が示されていますので、ご確認ください。

5.監査人が経営者確認書において確認を要請した事項について、経営者から確認を得られない場合の取扱い(第282項~第283項)

監査人が確認を要請した事項について、経営者から確認を得られない場合は、以下の事項を実施する必要があるとされています。

 ○経営者と当該事項について協議すること

 ○経営者の誠実性を再評価し、口頭または書面による陳述の信頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を評価すること

 ○内部統制監査の監査意見への影響を判断することを含め、適切な措置を講じること

特に、以下のケースでは監査意見の表明をしてはならないとされています。

 ○経営者の誠実性について深刻な疑義があり、内部統制監査の前提となる経営者の責任に関する確認事項に信頼性がないと判断した場合

 ○内部統制監査の前提となる経営者の責任に関する確認事項について経営者から確認が得られない場合

改正後の委員会報告は、平成24年4月1日以降開始する事業年度の内部統制監査から適用となります。
  

2011年6月30日 (木)

内部統制基準の改訂

去る3月30日、企業会計審議会は内部統制基準(実施基準)の改訂を公表しました。既にご承知の方も多いかと思いますが、今回の改訂は、内部統制基準の簡素化・明確化を図り、内部統制監査への負担軽減を狙ったものと考えられます。

今回の改訂の柱は、以下の4点です。

① 企業の創意工夫を活かした監査人の対応の確保

② 内部統制の効率的な運用方法を確立するための見直し

③ 「重要な欠陥」の用語の見直し

④ 効率的な内部統制報告実務に向けての事例の作成

①については、監査人側が企業の内部統制の整備・運用に対して画一的な対応が行われているとの批判に対応するものとされています。理論上、虚偽の財務報告を行ってしまうかもしれないリスクを評価した上で、そのリスクに適切に対応するための内部統制の整備・運用が求められるため、画一的な対応が要求するのはいかがなものか?ということになるのでしょうが、実務上、虚偽の財務報告を行ってしまうリスクの評価が難しいがために画一的な対応にならざるを得ないという面があるのではないかと思われます。リスク評価を充実されることは、企業の創意工夫を活かすための前提として、監査人・企業の双方に努力が求められる分野ではないかと思います。

②については、評価範囲の明確化及び評価方法の簡素化等がテーマとして挙げられており、企業の皆さんが内部統制の評価を行う上での負担軽減が図られています。

また、これに合わせて、金融庁からは「内部統制報告制度に関するQ&A」の改訂や「内部統制報告制に関する事例集」の公表が行われており、実務上の負担軽減に役立つものと考えられます。詳しくは、以下のwebサイトをご覧ください。

http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20110331-11.html

http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20110331-10.html

個人的に、この内部統制報告制度について思うところはあるのですが、話が長くなってしまうので、また、機会を改めてこのブログで触れてみたいと思っています。